防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

石原修(1885~1947 / 衛生学者・日本の産業医学の先駆者)のスペイン風邪後の寄稿「伝染性病防止に関する考え方(1920年)」からの名言 [今週の防災格言686]

time 2021/02/15

石原修(1885~1947 / 衛生学者・日本の産業医学の先駆者)のスペイン風邪後の寄稿「伝染性病防止に関する考え方(1920年)」からの名言 [今週の防災格言686]

『 病気を起す起さないかの分れ道は人間の生の力と病原体の生の力との第一線における真剣の格闘である。 』

 

石原 修(1885~1947 / 衛生学者・医学博士 日本産業医学の先駆者 大阪帝国大学教授)

 

曰く――――。

病気を起す起さないかの分れ道は人間の生の力と病原体の生の力との第一線における真剣の格闘である。人間の生の力勝てば病原体を全滅させ疾病を起さず病原体の生の力勝てば第一線破れ病原体は人間の身体中に拠城を得て此所に第二の格闘が開始さるゝのであります。此の戦闘期間が疾病である。此の格闘に於て人間の生の力勝たば人間は生を保ち得るので破るゝに於ては人間は生を失ふ乃死するのである。此の場合には病原体は新しき植民地たる人間を得るに非ざれば病原体も遂に自から滅亡するに至るのである。此の点に鑑みて人間各個の身体を強壮にして置く必要が極めて多いのである。
伝染性病の流行を防がんとするには病毒潜入防止と心身の強壮保持との二者が相互に扶助するに非らざれば到底効果を挙げ難いのである。車の両輪の如きもので仮に一輪欠けたりとせば運転絶対不能に非らざれど運行非常に困難なるは明であるが伝染病防止の場合も全く是と同一であると考えるが本当である。

格言は『伝染性病防止に関する考え方』(1920年)より。
(出典:工業教育会編著「防災と防疫」(工業教育会出版部 大正9年)載録)

 

明治から昭和期の衛生学者である石原修(いしはら おさむ)は、工場労働者らの労働衛生環境が社会問題となった日本の産業革命の時代に、公衆衛生面からの労働問題や母子保健の向上を提唱し、後の「工場法」「労働基準法」の成立に大きく寄与した人物で、日本の産業医学・労働衛生の先駆者として知られる。
全国各地の工場や農村の10万人を超える労働者の疾病調査を行い、特に紡績女工の悲惨な労働環境と結核罹患の問題を訴えた。

1885年(明治18年)10月18日、兵庫県河辺郡伊丹町に生まれる。衛生学を志し、京都帝国大学福岡医科大学(現・九州大学)を1908年(明治41年)卒業。翌1909年(明治42年)、上京して東京帝国大学医科大学の衛生細菌学教室に入り、横手千代之助(1871~1941)助教授に師事し、学校や農村、工場の労働衛生を学んだ。同年7月に内務省(後に農商務省)の「工場衛生調査」嘱託医となり調査を統括した。翌1910年(明治43年)に工場衛生調査結果を報告し、これにより「工場法」が1911年(明治44年)に制定される。1913年(大正2年)学位論文「女工と結核」「衛生学上より見たる女工之現況」を発表。この論文を端緒に工場法の実施の推進が促され、工場法は1916年(大正5年)に施行されることになった。
1911年(明治44年)東京市技師、1916年(大正5年)初代鉱務監督官兼鉱業監督官、工場監督官に就任。1921年(大正10年)欧米出張しILO(国際労働機関)会議に政府委員として列席。1922年(大正11年)内務省社会局監督官を歴任。1926年(大正15年)「産業医学会」を設立させ、1926年(大正15年)から1935年(昭和10年)まで大阪医科大学と大阪帝国大学(衛生学)教授を務めた。1937年(昭和12年)内務省社会局嘱託の命を受け健康相談所事務取扱(顧問)。戦後の1946年(昭和21年)年金保険厚生団事業部長となり、同年、日本産業衛生協会労働基準検討小委員会に参加し「労働基準法」の制定に関与。同法が公布された数か月後の1947年(昭和22年)6月29日死去。61歳。
実兄に生物学者・石原誠(1879~1938 / 九州大学教授)がいる。

石原修
石原修(1885~1947 / 衛生学者・医学博士)

■「石原修」「スペイン風邪」「感染症」に関連する防災格言内の記事
与謝野晶子(1878~1942 / 歌人 浪漫主義女流作家の第一人者)(2020.03.23 防災格言)
柳瀬実次郎(小児科医 大阪回生病院長 大阪こども研究会発起人)(2014.09.08 防災格言)
下村海南(下村宏)[2](官僚政治家・歌人 拓殖大学学長(第6代))(2020.04.13 防災格言)
ラリー・ブリリアント(1944~ / アメリカ合衆国の免疫学者・医者・慈善活動家)(2020.05.25 防災格言)
尾身 茂(医師 名誉WHO西太平洋地域事務局長 自治医科大学名誉教授)(2020.03.02 防災格言)
テドロス・アダノム(第8代WHO事務局長)(2020.03.16 防災格言)
マーガレット・チャン(第7代WHO事務局長)(2009.05.01 編集長コラム)
CDC(米国疾病予防管理センター)感染対策ガイドライン(2013.12.30 防災格言)
厚生労働省 2007(平成19)年 インフルエンザ総合対策標語(2009.10.26 防災格言)
ジュリー・ガーバーディング(アメリカ疾病対策センター(CDC)長官)(2009.04.27 防災格言)
ジュリー・ホール(アメリカの医者 WHO中国伝染病担当)(2009.02.02 防災格言)
李 文亮(1986~2020 / 中国・武漢市中心医院の眼科医 新型肺炎で最初に警告を発した医師)(2020.02.17 防災格言)
竹田美文(医学者 国立感染症研究所長)(2009.05.04 防災格言)
岡部信彦(小児科医 国立感染症研究所感染症情報センター長)(2009.02.23 防災格言)
西村秀一(1955~ / ウイルス学者・医師 仙台医療センターウイルスセンター長)(2020.06.01 防災格言)
ガレノス(AD129頃~AD216頃 / 古代ローマ帝国の医者・哲学者)(2020.02.24 防災格言)
ボッカチオ「デカメロン」より(2010.11.15 防災格言)
バルダッサーレ・ボナイウティ(1336~1385 / フィレンツェの歴史家)(2020.02.10 防災格言)
アルフレッド・W・クロスビー(アメリカの歴史学者)(2014.07.28 防災格言)
ウォルター・B・キャノン(1871~1945 / アメリカの生理学者・医学博士 ハーバード大学医学部教授)(2020.03.30 防災格言)
田尻稲次郎[1](法学者・東京市長・専修大学創立者)(2008.12.22 防災格言)
田尻稲次郎[2](法学者・東京市長・専修大学創立者)(2008.12.29 防災格言)
遠藤周作[2](作家・随筆家 文化勲章受章)(2018.11.19 防災格言)
ウイリアム・ハスラー(1868~1931 / 医学者 サンフランシスコ市保健委員会委員長)(2020.06.22 防災格言)
ラリー・ブリリアント(1944~ / アメリカ合衆国の免疫学者・医者・慈善活動家)(2020.05.25 防災格言)
クリストファー・J・L・マレー(1962~ / アメリカの公衆衛生学者・医師・経済学者 ワシントン大学教授)(2020.12.28 防災格言)
フランシス・ラッセル(1910~1989 / アメリカの伝記作家・歴史家・郷土史家)(2020.04.06 防災格言)
松下禎二[1](1875~1932 / 医学者 京大教授 政治家・衆議院議員)(2020.08.17 防災格言)
松下禎二[2](1875~1932 / 医学者 京大教授 政治家・衆議院議員)(2020.10.26 防災格言)
額田 晋(1886~1964 / 医師・医学者 東邦大学と額田医学生物学研究所の創立者)(2020.11.09 防災格言)
石原 修(1885~1947 / 衛生学者・医学博士 日本産業医学の先駆者 大阪帝国大学教授)(2021.02.15 防災格言)

■「心のケア」「メンタルヘルス」に関連する防災格言内の記事
イレーナ・シンガー(アメリカの心理療法士)(2020.04.27 防災格言)
エイブラム・カーディナー(心的外傷後ストレス障害(PTSD)を定義した米国の精神科医)(2019.01.21 防災格言)
厚労省「避難所等における不眠対策に関するリーフレット(2016年)」より(2018.10.01 防災格言)
「眠たいは大事のことぞ」(『平家物語』より)(2013.01.16 店長コラム)
本間博彰 (児童精神科医・宮城県子ども総合センター所長)(2014.10.06 防災格言)
田村康二(山梨大学医学部名誉教授)(2012.10.22 防災格言)
手塚治虫 (漫画家 医学博士)(2013.09.30 防災格言)
川崎富作 (小児科医)(2009.01.05 防災格言)
柳瀬実次郎(小児科医 大阪回生病院長 大阪こども研究会発起人)(2014.09.08 防災格言)
村岡花子(児童文学者)(2014.04.28 防災格言)
鈴木三重吉(児童文学者)(2011.02.21 防災格言)
石原純 (作家 理論物理学者 ジャーナリスト)(2012.03.19 防災格言)
南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書(2013年5月)(2013.06.24 防災格言)
国土交通省東北地方整備局「災害初動期指揮心得(2013年3月)」(2015.03.09 防災格言)
日野原重明 (医師 聖路加国際病院理事長・名誉院長)(2017.07.24 防災格言)
賀川豊彦(キリスト教社会運動家)(2014.10.20 防災格言)
ロバート・ベーデンパウエル(スカウト運動提唱者)(2008.05.26 防災格言)
アンリ・デュナン (国際赤十字社創設者)(2011.05.02 防災格言)
藤本義一(放送作家・阪神淡路震災の心のケアハウス支援者)(2011.01.17 防災格言)
高木慶子(聖トマス大学教授)(2009.06.15 防災格言)
草地賢一(牧師・国際ボランティア学会創設者)(2011.08.29 防災格言)
林春男(災害心理学者・京都大学防災研究所教授)(2008.09.15 防災格言)
安倍北夫(災害心理学者)(2016.02.08 防災格言)
河合隼雄 (心理学者・臨床心理学 京都大学名誉教授)(2012.07.30 防災格言)
丸茂湛祥 (僧侶・画家・宗教心理学者 日蓮宗本蔵寺住職)(2013.08.05 防災格言)
廣井脩 (社会学者・防災情報学・社会心理学 東京大学教授)(2009.09.28 防災格言)
バラス・フレデリック・スキナー (米国の心理学者・行動分析学)(2016.02.29 防災格言)
野上俊夫 (心理学者 京都帝国大学名誉教授)(2017.08.07 防災格言)
橋爪誠 (医師 九州大学大学院医学研究院 災害・救急医学教授)(2011.06.13 防災格言)
五木寛之(1932~ / 小説家・随筆家・作詞家・作曲家)(2020.01.13 防災格言)
中井久夫(1934~ / 精神科医 神戸大学名誉教授 文化功労者)(2020.03.09 防災格言)

■「パンデミック」「スペイン風邪」「コロナパンデミック」「感染症」に関連する防災格言内の記事
下村海南(下村宏)[2](肺結核について 官僚政治家・歌人)(2020.04.13 防災格言)
大隈重信 (佐賀藩士・早稲田大学創立者)(2010.09.27 防災格言)
渋沢栄一[1] (幕臣・日本資本主義の父)(2013.03.18 防災格言)
渋沢栄一[2](幕臣 官僚・実業家・教育者 日本資本主義の父)(2019.07.15 防災格言)
後藤新平 (政治家)(2010.4.26 防災格言)
寺田寅彦「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしい。」(2009.3.2 防災格言)
ガレノス(古代ローマ帝国の医者・哲学者)(2020.02.24 防災格言)
バルダッサーレ・ボナイウティ(フィレンツェの歴史家)(2020.02.10 防災格言)
ジョヴァンニ・ボッカチオ(フィレンツェの詩人・散文作家 「デカメロン」著者)(2010.11.15 防災格言)
村上陽一郎(科学史家 東京大学名誉教授「ペスト大流行」より)(2015.06.29 防災格言)
日沼頼夫(ウイルス学者 京都大学名誉教授 塩野義製薬副社長)(2020.01.27 防災格言)
アルフレッド・W・クロスビー(アメリカの歴史学者)(2014.07.28 防災格言)
マクファーレン・バーネット(オーストラリアの免疫学者 ノーベル生理学・医学賞)(2020.02.03 防災格言)
ポール・クルーグマン(1953~ / アメリカの経済学者・コラムニスト ノーベル経済学賞(2008年))(2021.01.11 防災格言)
川崎富作(小児科医 川崎病を発見)(2009.01.05 防災格言)
北里柴三郎(細菌学者 医学者)(2008.12.15 防災格言)
二木謙三 (内科医・細菌学者)(2016.11.14 防災格言)
竹田美文(医学者 国立感染症研究所長)(2009.05.04 防災格言)
岡部信彦(小児科医 国立感染症研究所感染症情報センター長)(2009.02.23 防災格言)
田尻稲次郎[1](法学者・東京市長・専修大学創立者)(2008.12.22 防災格言)
田尻稲次郎[2](法学者・東京市長・専修大学創立者)(2008.12.29 防災格言)
与謝野晶子(歌人 スペイン風邪についての随筆)(2020.03.23 防災格言)
尾身 茂(医師 名誉WHO西太平洋地域事務局長 自治医科大学名誉教授)(2020.03.02 防災格言)
マーガレット・チャン(第7代WHO事務局長)(2009.05.01 編集長コラム)
ジュリー・ホール(アメリカの医者 WHO中国伝染病担当)(2009.02.02 防災格言)
ジュリー・ガーバーディング(CDC長官)(2009.04.27 防災格言)
テドロス・アダノム(第8代WHO事務局長)(2020.03.16 防災格言)
李 文亮(中国・武漢市中心医院の眼科医 新型肺炎で最初に警告を発した医師)(2020.02.17 防災格言)
厚生労働省 2007(平成19)年 インフルエンザ総合対策標語(2009.10.26 防災格言)
CDC(米国疾病予防管理センター)感染対策ガイドライン(2013.12.30 防災格言)
吉益東洞(1702~1773 / 江戸時代の漢方医 日本近代医学中興の祖)(2020.05.11 防災格言)
ラリー・ブリリアント(1944~ / アメリカ合衆国の免疫学者・医者・慈善活動家)(2020.05.25 防災格言)
西村秀一(1955~ / ウイルス学者・医師 仙台医療センターウイルスセンター長)(2020.06.01 防災格言)
ウイリアム・ハスラー(1868~1931 / 医学者 サンフランシスコ市保健委員会委員長)(2020.06.22 防災格言)
フランシス・ラッセル(1910~1989 / アメリカの伝記作家・歴史家・郷土史家)(2020.04.06 防災格言)
ジャレド・ダイアモンド(1937~ / アメリカの人類生態学者 カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)(2021.01.04 防災格言)
石原 修(1885~1947 / 衛生学者・医学博士 日本産業医学の先駆者 大阪帝国大学教授)(2021.02.15 防災格言)

 

著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

[このブログのキーワード]
防災格言,格言集,名言集,格言,名言,諺,哲学,思想,人生,癒し,豆知識,防災,災害,火事,震災,地震,備蓄,防災グッズ,非常食
みんなの防災対策を教えてアンケート募集中 非常食・防災グッズ 防災のセレクトショップ SEI SHOP セイショップ

メルマガを読む

メルマガ登録バナー
メールアドレス(PC用のみ)
お名前
※メールアドレスと名前を入力し読者登録ボタンで購読

アーカイブ