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日沼頼夫(ウイルス学者・京都大学名誉教授・熊本大学名誉教授・塩野義製薬副社長)のエッセイ『ウイルスと人類』からの名言 [今週の防災格言631]

time 2020/01/27

日沼頼夫(ウイルス学者・京都大学名誉教授・熊本大学名誉教授・塩野義製薬副社長)のエッセイ『ウイルスと人類』からの名言 [今週の防災格言631]

『 ワクチンも薬もない状態において抗ウイルス戦略はいかにすべきか。答は情報と教育だけである。 』

日沼頼夫(1925~2015 / ウイルス学者 京都大学名誉教授 塩野義製薬副社長)

格言は初のエッセイ集『ウイルスと人類』(勉誠出版 平成14年)の序にかえてより。

曰く―――。

《 ウイルスは人類に感染して、病気を引き起こす。時には死を与える。しかしそれはウイルスにとってはちょっとしたエピソードに過ぎない。しかしウイルスによる病は人類の敵である。

人類に起こる種々様々な疾患の原因にウイルス感染が関係していることが明らかになってきた。炎症、退行性変性、腫瘍は言うに及ばず、代謝障害、自己免疫、先天異常にもその関わり合いがすでにみられている。

ウイルス原因の決定した病気に対しては、予防と治療という手段を適用するのが医学の常道である。予防はワクチンである。人類はワクチンによって大きなウイルス病を克服してきた。その例は第一が天然痘であり、地球上にこのウイルスは根絶した。第二はポリオである。先進国(日本を含めて)にすでにポリオはない。しかし同時にポリオワクチンの実施が不十分な第三世界ではまだこのポリオの流行があるということも忘れてはならない。他にも有効なウイルスワクチンは幾つも挙げられる。しかしエイズウイルスにはワクチンは未だない。また呼吸器ウイルス感染(風邪ウイルス)の予防ワクチンは全くといってよい程成功していない。難しいのである。エイズと風邪のワクチンに対しては、化学療法で対抗すべきであろう。アシクロビルという革新的なヘルペスウイルス剤が登場した。これは二十一世紀の抗ウイルスの時代を開拓する勇気を与えた。

ワクチンも薬もない状態において抗ウイルス戦略はいかにすべきか。答は情報と教育だけである。

我々人類はウイルス病に対抗するばかりでなく、すでにウイルスを積極的に利用することを行なっている。遺伝子工学の場である。遺伝子治療である。レトロウイルスやヘルペスウイルスがそのベクターとして利用される。

人類はウイルスと共生する。しかしウイルスの働きが生み出す病気に対しては対抗する。人類の英知をもって。 》

日沼頼夫(ひぬま よりお)は、大学や企業で50年以上にわたりウイルスとその感染症の研究を行ったウイルス学者。「成人T細胞白血病のウイルス病因の発見」により野口英世記念医学賞(1981年)、文化功労者(1986年)、恩賜賞・日本学士院賞(1989年)、文化勲章(2009年)など受賞多数。

1925(大正14)年1月19日、秋田県山本郡八森町(現八峰町)に生まれる。
秋田県立能代工業学校を経て、東北大学医学部、東北大学大学院を修了。大学1年生の1947(昭和22)年にウイルス学と出会い、東北大学小児科教室の佐野保(1896~1991年)教授のアドバイスにより、1951(昭和26)年に東北大学大学院(旧制)へと進学し、細菌学教室の黒屋政彦(1897~1967年)教授に師事。大学院3年目となる1953(昭和28)年よりウイルス研究を本格的に始めた。1954(昭和29)年、大学院を修了すると東北大学医学部助手となる。1958(昭和33)年から2年間、米国ペンシルバニア大学・フィラデルフィア小児病院(CHOP)ウイルス研究所研究員として留学。近代細菌学の開祖ロベルト・コッホの孫W・ヘレン教授に師事しポリオウイルスの研究を行った。
1960(昭和35)年、東北大学医学部助教授に就任。この頃、白血病により友人と大学院生が相次いで亡くなったことを契機に白血病ウイルスの研究にとりかかり、1965(昭和40)年に人癌ウイルス研究のスポンサーをみつけ渡米。バッファロー市のローズウェルパーク記念研究所客員研究員となってEBウイルス(ヘルペス群ウイルス)研究に従事。
1967(昭和42)年帰国すると間もなく東北大学歯学部微生物学教授に就任。3年後には熊本大学医学部微生物学教授となり、熊本で10年間ポリオウイルスとEBウイルスの研究を行う。
1980(昭和55)年、京都大学ウイルス研究所の予防治療研究部門の教授(のち所長)として赴任し、1981(昭和56)年10月、ヒト白血病(成人T細胞白血病(ATL))の原因が一つのウイルス(レトロウイルス)であることを発見した。
1988(昭和63)年に京都大学を退官すると、新しく設置されたシオノギ医科学研究所の所長に就任(のち塩野義製薬副社長)し研究プロジェクトトップとして抗ウイルス研究を立ち上げた。
2015(平成27)年2月4日、京都市内で死去。享年90。


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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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