『 第一は、国家が危機的な状況にあるという事実を認めること。第二は、自ら行動する責任を受け入れること。第三は、他国の成功例を見習うこと。第四は、他国からの援助を受けること。そして最も重要な第五のポイントは、このパンデミックを将来の危機に対処するためのモデルとすること。 』
ジャレド・ダイアモンド(1937~ / アメリカの人類生態学者 カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)
格言は、朝日新聞社編『コロナ後の世界を語る:現代の知性たちの視線』(朝日新聞社 2020年8月)『ジャレド・ダイアモンド インタビュー:コロナを克服する国家の条件とは?日本の対応とは?』より。「新型コロナ危機にあたって重要なポイントは何ですか?」の質問に答えたもの。
(初出:朝日新聞デジタル連載 2020年5月8日配信記事・インタビューア 太田啓之)
曰く――――。
第一は、国家が危機的な状況にあるという事実、それ自体を認めること。危機の認識がなければ、解決へと向かうことはできません。中国は新型コロナが蔓延し始めた当初、危機自体を認めなかったためにパンデミックを防げなかった。米国でもミシシッピ州やテキサス州、フロリダ州知事、そしてトランプ大統領はパンデミックを否定し、それが裏目に出ました。
第二は、自ら行動する責任を受け入れること。もし政府や人々が祈るだけで行動しなければ、問題は解決できません。中国は自らの責任を受け入れ、厳しい対策に踏み切るまでに一ヶ月を要しました。トランプ大統領は米国がなすべきことをする責任をいまだに認めず、中国批判に多くの時間を費やしています。
第三は、他国の成功例を見習うこと。第四は、他国からの援助を受けること。そして最も重要な第五のポイントは、このパンデミックを将来の危機に対処するためのモデルとすることです。
ジャレド・ダイアモンド(Jared Mason Diamond)は、アメリカ合衆国の生物学者・地理学者・文化人類学者・鳥類学者で、ポピュラーサイエンス(通俗科学)の分野の国際的ベストセラー作家として知られる人物。
人類の進化と現代社会との関連性を検証した1991年の著書『The Third Chimpanzee(邦題:若い読者のための第三のチンパンジー:人間という動物の進化と未来)』で注目され、この本でローヌ=プーランク科学書賞とロサンゼルス・タイムズ図書賞を受賞。その後、文明の進歩と環境の格差の関係について述べた1997年刊行『Guns, Germs, and Steel(邦題:銃・病原菌・鉄)』がピュリッツァー賞を受賞し、世界的ベストセラーとなった。主な著書に『銃・病原菌・鉄』(草思社 2013年)、『文明崩壊』(草思社 2013年)、『昨日までの世界―文明の源流と人類の未来』(日経BP 2013年)、『危機と人類』(日経BP 2019年)など。
1937年9月10日、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンでベッサラビア出身のユダヤ系移民の両親のもとに生まれる。父親は医者で、母親は教師(言語学者・ピアニスト)だった。
ボストンのロックスベリーラテン校を経て、1958年にハーバード大学で生化学学士号、1961年にケンブリッジ大学トリニティ・カレッジで生理学の博士号を取得。その後、生理学者として分子生理学の研究を続け、平行して進化生物学・生物地理学の研究とニューギニアなどでフィールドワークを行なった。1968年にはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部の生理学教授に就任。50歳代でUCLAの地理学教授に就任し現職。アメリカ芸術科学アカデミー会員。全米科学アカデミー会員。
主な受賞歴に、米国消化器病学会特別功労賞(1975年)、コスモス国際賞(1998年)、タイラー環境賞(2001年)、ディクソン賞科学部門(2006年)など。
Jared Diamond speaking at University College London, 2013. via Wikipedia
■「感染症」「パンデミック」に関連する防災格言内の記事
ウイリアム・ハスラー(1868~1931 / 医学者 サンフランシスコ市保健委員会委員長)(2020.06.22 防災格言)
ラリー・ブリリアント(1944~ / アメリカ合衆国の免疫学者・医者・慈善活動家)(2020.05.25 防災格言)
アルフレッド・W・クロスビー(アメリカの歴史学者)(2014.07.28 防災格言)
ウォルター・B・キャノン(1871~1945 / アメリカの生理学者・医学博士 ハーバード大学医学部教授)(2020.03.30 防災格言)
クリストファー・J・L・マレー(1962~ / アメリカの公衆衛生学者・医師・経済学者 ワシントン大学教授)(2020.12.28 防災格言)
フランシス・ラッセル(1910~1989 / アメリカの伝記作家・歴史家・郷土史家)(2020.04.06 防災格言)
尾身 茂(医師 名誉WHO西太平洋地域事務局長 自治医科大学名誉教授)(2020.03.02 防災格言)
テドロス・アダノム(第8代WHO事務局長)(2020.03.16 防災格言)
マーガレット・チャン(第7代WHO事務局長)(2009.05.01 編集長コラム)
CDC(米国疾病予防管理センター)感染対策ガイドライン(2013.12.30 防災格言)
厚生労働省 2007(平成19)年 インフルエンザ総合対策標語(2009.10.26 防災格言)
ジュリー・ガーバーディング(アメリカ疾病対策センター(CDC)長官)(2009.04.27 防災格言)
ジュリー・ホール(アメリカの医者 WHO中国伝染病担当)(2009.02.02 防災格言)
李 文亮(1986~2020 / 中国・武漢市中心医院の眼科医 新型肺炎で最初に警告を発した医師)(2020.02.17 防災格言)
与謝野晶子(1878~1942 / 歌人 浪漫主義女流作家の第一人者)(2020.03.23 防災格言)
柳瀬実次郎(小児科医 大阪回生病院長 大阪こども研究会発起人)(2014.09.08 防災格言)
下村海南(下村宏)[2](官僚政治家・歌人 拓殖大学学長(第6代))(2020.04.13 防災格言)
竹田美文(医学者 国立感染症研究所長)(2009.05.04 防災格言)
岡部信彦(小児科医 国立感染症研究所感染症情報センター長)(2009.02.23 防災格言)
西村秀一(1955~ / ウイルス学者・医師 仙台医療センターウイルスセンター長)(2020.06.01 防災格言)
ガレノス(AD129頃~AD216頃 / 古代ローマ帝国の医者・哲学者)(2020.02.24 防災格言)
ボッカチオ「デカメロン」より(2010.11.15 防災格言)
バルダッサーレ・ボナイウティ(1336~1385 / フィレンツェの歴史家)(2020.02.10 防災格言)
田尻稲次郎[1](法学者・東京市長・専修大学創立者)(2008.12.22 防災格言)
田尻稲次郎[2](法学者・東京市長・専修大学創立者)(2008.12.29 防災格言)
遠藤周作[2](作家・随筆家 文化勲章受章)(2018.11.19 防災格言)
松下禎二[1](1875~1932 / 医学者 京大教授 政治家・衆議院議員)(2020.08.17 防災格言)
松下禎二[2](1875~1932 / 医学者 京大教授 政治家・衆議院議員)(2020.10.26 防災格言)
額田 晋(1886~1964 / 医師・医学者 東邦大学と額田医学生物学研究所の創立者)(2020.11.09 防災格言)
■「ノンフィクション作家」に関連する防災格言内の主な記事
柳田邦男[1](2010.10.04 防災格言)
柳田邦男[2](2019.03.18 防災格言)
高山文彦(2013.12.16 防災格言)
作家 開高健(2011.11.14 防災格言)
ノンフィクション作家・東京都知事 猪瀬直樹(2017.06.19 防災格言)
■「アメリカ人」に関連する防災格言内の主な記事
ジャレド・ダイアモンド(1937~ / アメリカの人類生態学者 カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)(2021.01.04 防災格言)
クリストファー・J・L・マレー(1962~ / アメリカの公衆衛生学者・医師・経済学者 ワシントン大学教授)(2020.12.28 防災格言)
フランシス・ラッセル(1910~1989 / アメリカの伝記作家・歴史家・郷土史家)(2020.04.06 防災格言)
ウォルター・B・キャノン(アメリカの生理学者 動物の恒常性(ホメオスタシス)を提唱)(2020.03.30 防災格言)
エイブラム・カーディナー(心的外傷後ストレス障害(PTSD)を定義した米国の精神科医)(2019.01.21 防災格言)
ジョン・V・ルース(駐日アメリカ合衆国大使(第28代))(2018.04.02 防災格言)
カール・マイダンス(1907~2004 / 写真家 雑誌「Life」のカメラマン)(2018.06.18 防災格言)
ウォルト・ホイットマン (アメリカの詩人 ジャーナリスト)(2007.11.19 防災格言)
マーティン・デューク (アメリカの地震工学者 カリフォルニア大学教授)(2008.7.14 防災格言)
アーノルド・グラソー (アメリカの作家 ユーモア雑誌編集者)(2009.6.8 防災格言)
アン・タイラー(アメリカの人気小説家 ピュリッツァー賞(1988年))(2018.05.28 防災格言)
バニー・カー (アメリカのプレッパー)(2015.04.06 防災格言)
ロバート・キヨサキ (米国の投資家)(2012.10.08 防災格言)
バラス・フレデリック・スキナー (米国の心理学者・行動分析学)(2016.02.29 防災格言)
ハリー・ハリス提督 (アメリカ太平洋軍司令官)(2017.11.06 防災格言)
ジェームズ・L・ウィット (元アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)長官)(2010.01.11 防災格言)
関東大震災時のアメリカ合衆国赤十字社防災標語(2008.05.19 防災格言)
マイケル・ジャクソン (アメリカの歌手 「ポップ界の王」)(2012.07.02 防災格言)
クリストファー・マッカンドレス(アメリカの旅人 享年24歳)(2014.12.15 防災格言)
ケリー・シー (アメリカの地震学者)(2015.02.02 防災格言)
アルフレッド・W・クロスビー(アメリカの歴史学者)(2014.07.28 防災格言)
マシュー・ペリー提督 (アメリカ東インド艦隊司令長官)(2013.01.07 防災格言)
常に備えあり(Semper Paratus) アメリカ合衆国沿岸警備隊モットー(2012.12.24 防災格言)
カール・S・シャウプ (GHQ米税制調査団団長 アメリカの経済学者)(2013.01.07 防災格言)
ディズニー・チャンネルのアニメ「なんだかんだワンダー」より(2018.01.29 防災格言)
チャールズ・カスト (元米原子力規制委員会地域センター長)(2017.2.6 防災格言)
アルビン・トフラー(アメリカの作家・未来学者)(2016.7.4 防災格言)
リチャード・ウィルソン(物理学者 ハーバード大学名誉教授)(2015.9.28 防災格言)
スティーブ・ジョブズ(実業家 アップル設立者)(2013.9.16 防災格言)
ロバート・キヨサキ (米国の投資家)(2012.10.08 防災格言)
マイケル・ポーラン (アメリカのジャーナリスト カリフォルニア大学教授)(2012.09.10 防災格言)
ジュリー・ガーバーディング(アメリカ疾病対策センター(CDC)長官)(2009.04.27 防災格言)
CDC(米国疾病予防管理センター)感染対策ガイドライン(2013.12.30 防災格言)
ジュリー・ホール(アメリカの医者 WHO中国伝染病担当)(2009.02.02 防災格言)
ダニエル・カール (タレント・山形弁研究家)(2008.04.21 防災格言)
ロジャー・デュラム(1962〜 / 国際政治学者 米アクイナス大学教授)(2013.07.01 防災格言)
ジョージ・W・ブッシュ(アメリカ合衆国大統領(第43代))(2018.12.10 防災格言)
篠塚正宣(地震工学者 コロンビア大学栄誉教授 プリンストン大学名誉教授)(2020.01.20 防災格言)
ウイリアム・ハスラー(1868~1931 / 医学者 サンフランシスコ市保健委員会委員長)(2020.06.22 防災格言)