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宝永地震(1707年の南海トラフ巨大地震)の津波の石碑『宝永津波碑(徳島県海部郡海陽町鞆浦)』に遺された名言と由来 [今週の防災格言518]

time 2017/11/27

宝永地震(1707年の南海トラフ巨大地震)の津波の石碑『宝永津波碑(徳島県海部郡海陽町鞆浦)』に遺された名言と由来 [今週の防災格言518]

『 後に大震に遭う者、あらかじめ海潮の変を慮りて避ければ則ち可なり 』

 

徳島県海部郡海陽町鞆浦の「宝永津波碑(宝永4(1707)年)」より

 

原文:” 後之遭大震者予慮海潮之変而避焉則可 “

意訳《 後の世で大地震に遭う人たちが予め知っておくことは、海の潮が変化したらすぐに避難するべきである。そうすれば被害から逃れることは可能である。 》

全文は以下の通り―――。

“鞆浦大岩慶長碑:
南無阿弥陀仏 / 敬白右意趣者人王百拾代 / 御宇慶長九甲辰季拾二月 / 十六日未亥刻於常月白風 / 寒疑行歩時分大海三度鳴 / 人々巨驚拱手処逆浪頻起 / 其高十丈来七度名大塩也 / 剰男女沈千尋底百余人 / 為後代言傳奉興之各ゝ/ 平等利益者必也”

《 南無阿弥陀仏。敬白、右意趣は、人王百十代の御宇(110代天皇の御代 ※実際は107代)、慶長九甲辰季十二月十六日未亥の刻(1605年2月3日午後10時ごろ)、月常より白く風寒く行歩凍る時分(歩くと身が凍るような時間)、大海三度鳴る(海が三度鳴り響き)、人々巨驚(人々は大いに驚き)、拱手する処(手をこまねいていると)逆浪頻りに(逆巻く津波が)起り其高十丈(その高さ30メートルほど)、来る事七度(7度襲来し)、大塩と名づく也(これを大潮=大津波と呼んだ)、剰(あまつさ)え男女千尋の底に沈むもの百余人、後代に言い伝える為、之を興し奉る各々平等利益は必ず也(必ずや皆の平等の利益となるものなり) 》

“鞆浦大岩宝永碑:
宝永四年丁亥冬十 / 月四日未時地大震所海潮 / 湧出丈余蕩々襄陵反覆三次 / 而止然我浦無一人之死者可謂 / 幸矣後之遭大震者予慮海 / 潮之変而避焉則可”

《 宝永四年丁亥冬十月四日未の時(1707年10月28日午後2時ころ)、地、大いに震ふ所、海潮(津波)の湧出すること丈余(3メートルほど)、蕩々襄陵(とうとうじょうりょう=津波が広範囲で陸(おか)にのぼり)、反覆三次にして止む(津波は3度繰り返して止んだ)、然(しか)れども我が浦(わがうら)一人の死者なきは幸というべし、後に大震に遭う者、予(あらかじ)め海潮の変を慮りて避ければ則ち可なり 》

 

徳島県の海陽町鞆浦(ともうら)漁港近くの路傍(旧鞆奥町字北町)の大岩(通称:鞆の大岩)に、大昔の震災(大津波)の様子が記された古碑が二つ残されている。
一つは「慶長南海地震(1605年2月3日)」の大津波の碑文で、現在四国で確認されている最古の地震記録の碑である。
この災害では、午後10時頃、鞆浦に30メートルもの大津波が7度襲来し、男女100人余りが海の底へと沈んでいった、とある。
もう一方は、100年後に同じ鞆浦を襲った「宝永地震(1707年10月28日)」の碑で、約3メートルの津波が3度襲ったが幸い犠牲者はなかった、と刻まれており、貴重な教訓を後世に伝えている。

宝永津波碑(宝永4(1707)年 / 徳島県海部郡海陽町鞆浦
画像:安心とくしま「南海地震を知る~徳島県の地震・津波碑~ 第34回」より




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著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

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