『 避難法の中で最も大切の事は、天災を予知することであります。 』(風水害避難の心得より)
三宅 秀(1848~1938 / 医学者・医学博士・貴族院議員 東京大学名誉教授)
格言は編著『災難は避けられる : 一名・災害防止展覧会説明書(1919年)』の「風水害避難の心得」より。
曰く―――
出水の際の汚水には便所の糞汁も混っているし、雨漏りの水より一層不潔ですから、余裕さえあったら色々工夫して何物も濡らさぬ用意が肝要です。
… … …
三宅 秀(みやけ ひいず)は、幕末から昭和にかけ活躍した医学者の一人。
日本最初の医学博士として東京大学医学部の基礎を築くなど、日本の近代医学教育と医療行政の発展につとめた人物。
嘉永元(1848)年、下総(千葉県)佐倉藩医を務めた三宅艮斎(みやけ こんさい / 1817〜1868)の長男として江戸本所緑町(現墨田区)に生れる。
幼い頃から江戸の蘭方医・佐藤泰然(和田泰然 / 1804〜1872)や福知山藩医・川島元成らのもとでオランダ語を学び、日本初の遣米修好使節団の通訳者・立石斧次郎(たていし おのじろう / 1843〜1917)らに英語を学んだ。
文久3(1863)年12月、江戸幕府の池田遣欧使節団に随行。フランス軍艦ル・モンジュ号で日本を出港し、上海・インド・カイロなどを経てフランス・パリへと入り、翌元治元(1864)年7月に帰国すると、横浜のアメリカ人宣教師のヘボン塾(James Curtis Hepburn / 1815〜1911)門下となり英語や医学を学んだ。
幕末は金沢へ移り、加賀藩「壮猶館(そうゆうかん)」で英語翻訳・教師に従事、明治2(1869)年には能登の藩立英学校「七尾語学所(後の致遠館)」に勤め、英国人教師パーシヴァル・オーズボンに師事しフランス語を学ぶ。
明治3(1870)年、明治新政府のお雇い外国人通訳となり上京して大学東校(東京大学の前身)で中助教、文部大助教、文部少教授を歴任。ドイツ人医学教師・ミュルレルやホフマンの通訳をしながらドイツ語や医学を学んだ。
明治7(1874)年、宮内省御用掛となり東京医学校校長心得として、日本の近代医学校設立(後の東京大学医学部)に関与。明治9(1876)年には、長與專齋(ながよせんさい / 1838〜1902)とともに渡米しフィラデルフィアで開催された万国医学会の副会長に選任された。帰国後は、東京大学医学部教授として、脚気病院設立委員、悪性伝染病予防所規則取調委員、中央衛生会議委員、日本薬局方編纂委員、帝国大学評議官、脚気病審査委員長、医学校取調委員、帝国大学衛生委員長などを歴任。
明治14(1881)年には東京大学医学部長、明治19(1886)年には医科大学教授、帝国大学医科大学長となる。明治21(1888)年、東京大学初の医学博士の学位を授与され、東京高等女学校商議委員、医術開業試験委員長、中央衛生会委員などを歴任。明治23(1890)年、42歳のとき、医科大学長を辞任し、翌明治24(1891)年4月に貴族院勅選議員となる。明治28(1895)年、功労により錦鶏間祗候(きんけいのましこう)を拝命。学校衛生会顧問、学校衛生会議長を歴任し、明治36(1903)年に東京大学初の名誉教授となった。
昭和13(1938)3月16日、東京市小石川区竹早町(現文京区小石川)の自宅で死去。91歳。
妻の藤は順天堂創始者の佐藤尚中の次女で、1男6女の子宝に恵まれる。長男の鑛一(1876〜1954)、その孫の仁ともに東京大学医学部教授となった。
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