『 避難生活支援が十分に行われず、避難生活環境が良好でないと、被災者が健康を損ね、最悪の場合には、おびただしい数の災害関連死につながりかねない。 』
内閣府 有識者会議「防災教育・周知啓発WG(災害ボランティアチーム)」提言より(令和3年5月25日公表)
格言は「防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言」(令和3年5月25日)より。
曰く―――。
避難所においては、トイレ、寝床、食事、衛生、物理的スペース等の面で生活環境が良くない状況や、配慮が必要な高齢者、障害者、女性、子ども、外国人などが孤立し、助けを求めにくい状況、ペットの同行避難が難しい状況等も散見され、そのために被災者の尊厳が確保されない状況さえ生ずる。
また、心身の健康を保つには、役割や仕事、居場所、人との交流を持つことも大切であるが、避難所ではそうした環境が十分でないこともある。
避難者は、今後の生活再建の見通しに不安を持ちながら避難生活を送ることも多く、心身が不安定になりやすい中、避難生活支援が十分に行われず、避難生活環境が良好でないと、被災者が健康を損ね、最悪の場合には、おびただしい数の災害関連死につながりかねない。
(平成28年熊本地震では、死者273名のうち災害関連死が218名と約8割を占めています。)
【解説】
災害による被害を最小限にとどめ、迅速に回復させることを「国土強靱化」と呼びます。
近年日本では、災害が頻発し、その規模も激甚化しています。
気候変動の影響により頻発化するスーパー台風・局地豪雨などの気象災害、近い将来の発生が確実視される南海トラフの巨大地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震といった大規模地震、そして富士山噴火も―――。
これらの国家的な危機から国民の生命・財産を守り、国家・社会の重要な機能を維持するために、日本政府は、平成26年(2014年)「国土強靱化基本計画」が閣議決定されました。
平成30年(2018年)12月には「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策(通称は3か年緊急対策)」が定められ、特に緊急に実施すべき施策として、全国2000ヶ所の河川の改修・整備、地震などによるブラックアウトといった停電対策、空港の浸水対策、携帯電話基地局の対策といった全160項目にわたる緊急対策が、約7兆円の予算規模で3年間(2018~2020年度)かけて集中的に実施されました。
さらに、令和2年(2020年)12月「防災・減災、国土強靱化のための加速化5か年対策(2021~2025年)」が閣議決定され、今後5年間に約15兆円の予算をかけ「激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策」、「予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速」、「国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進」の各分野についての対策事業が重点的・集中的に講ぜられることになりました。
「防災教育・周知啓発ワーキンググループ(災害ボランティアチーム)」(座長:栗田暢之(特定非営利活動法人 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク代表理事)は、この「5か年対策」のために令和2年(2020年)12月に政府(内閣府)内に設置された有識者会議の一つで、地域ごとにスキルを備えたボランティア人材を育成し、それらの人材ネットワーク化に向けた施策を担いました。
政府は、令和3年(2021年)5月25日に『防災・減災、国土強靱化新時代』を迎えたことを宣言し、全5つの有識者会議「デジタル・防災技術WG(未来構想チーム)」「デジタル・防災技術WG(社会実装チーム)」「事前防災・複合災害WG」「防災教育・周知啓発WG(防災教育チーム)」「防災教育・周知啓発WG(災害ボランティアチーム)」が策定した提言を束ねて公表しました。
今後は、この提言内容は、政府が令和3年(2021年)6月にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」や「成長戦略実行計画」、「国土強靱化年次計画(2021年度)」に反映されることになります。
防災・減災、国土強靱化WG・チーム 防災教育・周知啓発ワーキンググループ 災害ボランティアチーム 提言
■この格言の外部リンク
内閣府「防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言」(令和3年5月25日)(2021.5.25 内閣府防災担当)
■「防災の標語」「教訓」に関連する防災格言内の記事
地震は起きる。それは「想定」ではない。「前提」だ。:三菱地所ホーム(株)のポスター広告 2015年(コピーライター:谷野栄治、三宅ひづる)より(2021.01.18 防災格言)
「おはしも(おかしも)」児童のための避難標語(2008.09.01 防災格言)
「ひなんするときは、押すな・走るな・声出すな」学研まんが「地震のひみつ」より(2015.04.27 防災格言)
政府の中央防災会議「災害時の避難に関する専門調査会報告書(2012年3月)」より(2018.02.26 防災格言)
「津波避難のたすとひく」静岡県警の津波避難啓発標語(2014.11.10 防災格言)
昭和八年三月三日 大海嘯記念碑(大槌町 昭和9年建立)(2011.11.07 防災格言)
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南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ報告書(2013年5月)(2013.06.24 防災格言)
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備えあれば憂いなし(有備無患)(中国故事)(2008.11.10 防災格言)
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ムダ足覚悟で早めの避難(1957(昭和32)年7月25日 諫早豪雨教訓)(2017.07.10 防災格言)
国土交通省東北地方整備局「災害初動期指揮心得(2013年3月)」(2015.03.09 防災格言)
高知県黒潮町「南海トラフ地震・津波の防災計画基本理念(2012年)」(2016.03.07 防災格言)
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「備えよ、常に( Be Prepared )」スカウト標語(2008.05.26 防災格言)
後藤新平(日本スカウト運動標語)(2010.4.26 防災格言)
アンリ・デュナン (国際赤十字標語)(2011.5.2 防災格言)
佐野常民「日本赤十字 救護員十訓」(2013.02.11 防災格言)
松井茂 (昭和初期の山林火災防止標語)(2008.12.01 防災格言)
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CDC(米国疾病予防管理センター)インフルエンザ感染対策標語(2013.12.30 防災格言)
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イタリア トーレ・デル・グレコ市モットー(2013.03.11 防災格言)
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内閣府 有識者会議「防災教育・周知啓発WG(災害ボランティアチーム)」提言より(2021年5月25日公表)(2021.05.31 防災格言)
よりよい備え、よりよい暮らし(Better Preparation, Better Life.)(SEISHOP防災標語)(2012.06.26 店長コラム)