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棚橋源太郎（1869～1961 / 教育家初代東京博物館長「日本博物館の父」）が大正8（1919）年に開催した「災害防止展覧会」の名言 [今週の防災格言614]

time 2019/09/30

『災害の大部分は人間の努力次第で防止する事が出来る』

棚橋源太郎（1869～1961 / 教育家初代東京博物館長「日本博物館の父」）

格言は「災難は避けられる : 一名・災害防止展覧会説明書（1919年）」叙言より。

曰く―――。

《災害を未然に防いで危害を除き、又は、其損害の程度を軽減するには、果して如何にすれば可いかと言へば、先ず、普（あまね）く世人に災害の由って来る原因事情を知らせて、之に対する防止方法を講ぜしめるの外あるまい。
一般災害の原因を調べて見ると、危害の起り易いものに対して全然予防設備を欠いて居たり、又はそれが不十分であったりする有形的機械的事由と、不注意怠慢不謹慎疲労衰弱疾病等心理的生理的事情との二つに大別する事が出来る様である。
故に災害なるものは、必ずしも人力の奈何（いかん）ともすべからざる性質のものではない。
災害の大部分は人間の努力次第で防止する事が出来るのである。
されば、本邦（※日本国の意）に特に災害の多いという事の如きも固より国土の罪ばかりではない。
其の主なる理由は、本邦人に科学思想が乏しい上に身命財産を尊重する精神が、幾らか劣って居り、且つ災害を防止除去せようという努力の足らぬ点にあらねばならぬ。
故に、本邦今日の急務は、此の種の思想を出来るだけ速やかに国民の全般に普及させ、之が施設（※災害防止展覧会の出品物等）を奨励する事である。》

棚橋源太郎（たなはしげんたろう）は、明治から昭和時代の理科教育指導者。日本の博物館の黎明期に東京博物館（現在の国立科学博物館の前身）初代館長として博物館事業の発展と普及に生涯を通じて尽力した「日本博物館の父」と呼ばれる人物。
その功績を称え公益財団法人日本博物館協会で1962（昭和37）年から「棚橋賞」が制定されている。

1869（明治2）年7月16日、岐阜県本巣郡北方町に生まれる。
小学校から秀才で知られ、1889（明治22）年、岐阜師範学校卒業。岐阜師範学校附属訓導（教員）となり、後に高等師範学校（後の東京高師）に学び、高等師範学校付属小学校訓導を経て、1895（明治28）年に高等師範学校博物科を卒業した。卒業後は、兵庫県師範学校教諭、翌1896（明治29）年に岐阜県師範学校教諭となり博物、農業、倫理科教授を講じながら首席舎監を兼任した。1903（明治36）年の学制改正（専門学校令）に伴い東京高等師範学校教授となり、1905（明治38）年、東京教育博物館館長（現国立科学博物館）に就任、後に東京博物館初代館長となって博物館事業の普及に尽力した。
1910（明治43）年には博物学研究のためにアメリカ、ドイツに留学。帰国後、国民への科学知識の普及と生活の改善を目的とした社会教育事業としての展覧会を企画し、1916（大正5）年「コレラ病予防通俗展覧会」を皮切りに、1918（大正7）年「食品衛生経済展覧会」「廃物利用展覧会」、1919（大正8）年「災害防止展覧会」「生活改善展覧会」などを次々に成功させた。これら展覧会を契機に「生活改善同盟会」を発足させ会長に伊藤博文、渋沢栄一らとともに理事を勤めた。日本赤十字社参考館（後の赤十字博物館）館長や戦後は日本博物館協会顧問、文部省学芸員国家試験委員、立教大学博物館学講師などを歴任し、生涯にわたって理科・郷土科教育に努めた。
1961（昭和36）年4月3日死去。91歳。藍綬褒章（1958年）。
棚橋源太郎