『 動いてゆく事に生命がある、将来がある。問題は一にその動き方如何にある。 』
下村海南(1875~1957 / 新聞経営者・政治家・官僚・歌人)
格言は随筆集『動く日本』(昭和12年)の序文より。
曰く―――。
《 世界の各国はあげて動いている。
日本ばかり動かずにはいられない。
動いてゆく事に生命がある、将来がある。
問題は一にその動き方如何にある。
象の歩み、亀のゐざり、かける兎、飛ぶ燕。奔馬の速きも牛歩の遅さも、ともに動きにおいては一なりである。
フラフラと間ののびた動きにくみしないが如く、熱しすぎて息切れのする動 きにもくみしがたい。
先ず大所高所に立ちて、国家百年の大計を達観する。その進むべき道、向うべきところを定める。しかる上に腰の据わった腹に底力のある大地を踏みつけて行く動き、そうした動きこそ期待される。
我等はそうした期待をもって刻下の世相をながめている。
たまたまぶつかっている非常時であるだけに。
(昭和十二年三月三十日)》
「ゐざり」は座したままのろのろと歩む様。
この随筆が書かれた1937(昭和12)年3月30日の3ヶ月後、中国大陸では盧溝橋事件と通州事件が発生する。第二次上海事変を経て日中は泥沼の戦争へと進むことになった。
下村海南(しもむら かいなん 本名:下村宏)は、明治・大正・昭和の官僚政治家、新聞経営者。和歌山県串本出身。「海南」は雅号で、佐々木信綱門下の歌人として数多くの著作を発表した。朝日新聞社副社長、日本放送協会(NHK)会長などを歴任し、終戦時の内閣情報局総裁として昭和天皇の玉音放送の立役者となり、ポツダム宣言受諾の実現に尽力したことで知られる。
旧制和歌山中学校(現桐蔭高校)、旧制第一高等学校を経て、明治31(1898)年に東京帝国大学(法科大学政治学科)を卒業すると逓信省(現総務省)に入り、北京郵便局長、為替貯金局長などを務め、簡易保険の創設に尽力した。大正4(1915)年、台湾総督府民政長官、総務長官を歴任し、台湾教育会の設立や地方自治制度の創設のほか、港湾整備など公共事業に取り組み、台湾発展の基礎を築いた。大正10(1921)年に大阪朝日新聞社に招かれ、取締役、専務理事を経て、昭和5(1930)年に朝日新聞副社長に就任。定年退職制度の導入や情報システム構築など経営の近代化に大きく貢献し、昭和11(1936)年に朝日新聞を退職すると、翌年、貴族院議員に勅選され、昭和17(1942)年、東京商業学校校長、昭和18(1943)年に日本放送協会(NHK)会長、昭和20(1945)年4月に鈴木貫太郎内閣に請われ国務大臣兼情報局総裁に就任した。原爆投下により敗戦が濃くなるなか、徹底抗戦を主張する青年将校らの妨害と脅迫に屈せず、昭和天皇の玉音放送の実現に奔走した。敗戦後は戦犯として巣鴨プリズンに拘留(1945年12月〜47年8月)されるも起訴されることはなかったが、昭和21(1946)年1月に公職追放され、田園調布の自宅も接収された。戦後は拓殖大学第6代学長を務め、昭和32(1957)年12月9日に82歳で亡くなった。故郷の潮岬には下村の胸像と歌碑が建立されている。
■「下村海南(下村宏)」に関連する防災格言内の記事
下村海南[2](1875~1957 / 新聞経営者・官僚政治家・歌人 拓殖大学学長(第6代))(2020.04.13 防災格言)
後藤新平 (関東大震災時の内相兼帝都復興院総裁)(2010.4.26 防災格言)
夏目漱石 (作家)(2012.04.09 防災格言)
関東大震災十周年防災標語(2008.7.7 防災格言)
村岡花子 (児童文学者)(2014.04.28 防災格言)
永田秀次郎(関東大震災時の東京市長)(2015.01.05 防災格言)
清水幾太郎(ジャーナリスト)(2008.9.29 防災格言)
宮武外骨 (ジャーナリスト・著述家・文化史家)(2015.08.31 防災格言)
山下重民 (明治のジャーナリスト 風俗画報編集長)(2008.09.22 防災格言)
角田浩々歌客 (明治・大正期のジャーナリスト)(2012.06.11 防災格言)
北村兼子 (大正昭和初期の女性ジャーナリスト)(2012.11.26 防災格言)
水島爾保布 (挿絵画家)(2013.12.23 防災格言)
二葉亭四迷 (作家)(2012.05.07 防災格言)
浅田一(法医学者)(2011.10.3 防災格言)
和辻哲郎 (哲学者・評論家)(2014.10.27 防災格言)
武田五一 (建築家)(2010.6.28 防災格言)
天声人語(朝日新聞 1995年1月27日朝刊)(2009.01.19 防災格言)
渋沢栄一[1](官僚・実業家)(2013.03.18 防災格言)
渋沢栄一[2](幕臣 官僚・実業家・教育者 日本資本主義の父)(2019.07.15 防災格言)
水野錬太郎 (官僚政治家 内務大臣)(2016.04.11 防災格言)
松岡俊三(ジャーナリスト 政治家(政友会))(2016.01.25 防災格言)
加藤久米四郎 (実業家・政治家(政友会))(2015.10.05 防災格言)
井上甚太郎(実業家・政治家(政友会))(2019.10.21 防災格言)
伊藤宗一郎 (陸軍少尉 政治家・防衛庁長官)(2013.01.07 防災格言)
井上準之助 (銀行家 大蔵大臣・日本銀行総裁(第9、11代))(2018.12.03 防災格言)
結城豊太郎 (銀行家 大蔵大臣・日本銀行総裁(第15代))(2016.12.05 防災格言)
廣田弘毅 (外交官 極東軍事裁判のA級戦犯として死刑)(2013.05.13 防災格言)
■「ジャーナリスト」に関連する防災格言内の主な記事
柴田俊治(ジャーナリスト 朝日放送社長 朝日新聞記者)(2019.01.07 防災格言)
竹内政明[1] (ジャーナリスト 読売新聞東京本社取締役論説委員)(2017.10.09 防災格言)
竹内政明[2] (ジャーナリスト 読売新聞東京本社取締役論説委員)(2018.07.16 防災格言)
高橋雄豺(新聞経営者・読売新聞社副社長 香川県知事)(2018.06.11 防災格言)
池上彰 (ニュースキャスター ジャーナリスト)(2010.07.19 防災格言)
本山彦一(実業家・大阪毎日新聞社長 貴族院議員)(2018.05.21 防災格言)
三宅雪嶺[1] (哲学者・評論家・ジャーナリスト)(2017.01.30 防災格言)
三宅雪嶺[2] (哲学者・評論家・ジャーナリスト)(2017.07.31 防災格言)
徳富蘇峰 (ジャーナリスト・思想家・評論家)(2009.07.27 防災格言)
黒岩涙香 (ジャーナリスト)(2011.05.23 防災格言)
山下重民 (ジャーナリスト 風俗画報編集長)(2008.09.22 防災格言)
岸上克己 (社会運動家・ジャーナリスト)(2017.06.26 防災格言)
宮武外骨 (ジャーナリスト・著述家・文化史家)(2015.08.31 防災格言)
清水幾太郎(社会学者 ジャーナリスト)(2008.9.29 防災格言)
角田浩々歌客 (文芸評論家 ジャーナリスト)(2012.06.11 防災格言)
防災格言こぼれ話 「火事を待つ人」(ジャーナリスト・朝比奈知泉氏)(2010.07.29 店長コラム)
正宗白鳥(小説家・劇作家・評論家 元読売新聞記者)(2018.09.17 防災格言)
松岡俊三 (ジャーナリスト 政治家・政友会)(2016.01.25 防災格言)
高山樗牛 (文芸評論家 ジャーナリスト)(2016.02.01 防災格言)
下村海南(下村宏)(ジャーナリスト 内閣情報局総裁)(2016.6.27 防災格言)
石山賢吉 (ジャーナリスト ダイヤモンド社創業者)(2015.02.23 防災格言)
菊池寛 (作家 ジャーナリスト)(2012.03.26 防災格言)
石原純 (作家 理論物理学者 ジャーナリスト)(2012.03.19 防災格言)
司馬遼太郎 (作家 ジャーナリスト)(2015.01.12 防災格言)
伊藤和明 (元NHK解説委員)(2009.7.20 防災格言)
小田貞夫 (元NHK解説委員)(2009.08.17 防災格言)
大和勇三 (経済評論家 日本経済新聞社ジャーナリスト)(2010.03.29 防災格言)
筑紫哲也 (ニュースキャスター ジャーナリスト )(2009.09.21 防災格言)
北村兼子 (ジャーナリスト 随筆家)(2012.11.26 防災格言)
磯村英一 (都市社会学者)(2014.05.05 防災格言)
小川和久 (軍事アナリスト ジャーナリスト)(2008.02.04 防災格言)
野間寅美 (海洋ジャーナリスト 元海上保安庁首席監察官)(2010.07.05 防災格言)
小泉八雲 (ラフカディオ・ハーン)(作家 ジャーナリスト)(2015.10.26 防災格言)
ウォルト・ホイットマン (詩人 ジャーナリスト)(2007.11.19 防災格言)
マイケル・ポーラン (ジャーナリスト カリフォルニア大学教授)(2012.09.10 防災格言)
カール・マイダンス(写真家・ジャーナリスト 取材中に偶然震度7の福井地震を体験)(2018.06.18 防災格言)
吉沢久子(1918~2019 / 生活評論家・エッセイスト)(2019.12.30 防災格言)
余禄(毎日新聞 1995年1月18日朝刊)より(2016.01.18 防災格言)
天声人語(朝日新聞 1995年1月27日朝刊)(2009.01.19 防災格言)
防災格言,格言集,名言集,格言,名言,諺,哲学,思想,人生,癒し,豆知識,防災,災害,火事,震災,地震,危機管理