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松岡俊三が著書『凶作克服より報恩更生へ』に書き記した格言(政治家)[今週の防災格言423]

time 2016/01/25

松岡俊三が著書『凶作克服より報恩更生へ』に書き記した格言(政治家)[今週の防災格言423]


『 凶作は東北農業には絶対に避くべからざるものだ。 』

松岡俊三(1880〜1955 / 政治家・政友会 衆議院議員(9期))

松岡俊三(まつおか としぞう)は、大正末期の1926(大正15)年12月4日、積雪地帯の住民の窮状を目のあたりにし「雪害救済運動」を提唱。当時、雪国の人たちを支援する法令上の施策がないことから、国による雪国救済を初めて訴えた人物。

活動から6年後の1932(昭和7)年、内務省に「雪害対策調査会」、翌1933(昭和8)年には新庄市に「農林省積雪地方農村調査所」が設置され、東北振興の特別処置の法令が初めて施行されることとなった。松岡の努力により後に「積雪法」「積雪寒冷地道路交通特別措置法」「豪雪地帯対策特別措置法」「義務教育国庫負担法」などが制定されることになる。

格言は「凶作克服より報恩更生へ」(雪国更生協会 昭和10年)より。
松岡が提出した「雪害第二建白書(昭和7年1月1日)」に曰く―――。

《 震火災、風水害、旱害、霜害は所謂災害と目して、政府は法律勅令に、補助、保護の名実を規定し、社会人の心理亦之に従ふを見る。而(しか)して独り天の作為する降雪積雪は、政府の律令百般に災害と見做さず、補助、保護を与ふる所絶無なり。
抑々(そもそも)満天朦々(もうもう)、満地を浄化せずんば止まざる降雪積雪は、美的なるが故に天災には非ざる哉。之を震火災、風水害、旱害、霜害の災害とは相区別して、帝国法令の災害規定外に置くべき性質、果して如何なる理由によりて然るか。
≪中略≫
連年雪害による経済弾力の微弱は、一度凶作に逢ふや遂に草根木皮を食するに至り、雪害亦恢復を阻みて容易に立直るを得ざるに、再び三度、凶作は周期的定石法の如く猛襲す。然るに政府は降雪積雪を災害と認めず、凶作の遠因惰力は雪害にあるべきを努めて知らざらんとするに近し。
而して一時的表現の凶作を捉へて、義捐、救済を叫ぶとは何んぞや、夫れ政府は為すべきの責務を怠り、其の此処に到らざるを得せしめて、却つて天為に転嫁し、恩を雪国民に売り、彼等を駆つて叩頭哀願の卑屈心を培養せんとするものゝ如し、誤れるの甚しき天下未だ斯(かく)の如きものあるを見ず。政府は只速かに正常の事を正しく為せば可也。 》

松岡は、山形県北村山郡楯岡町(現村山市)の貧農・村川伊兵衛の子として生れる。少年の頃に母の実家である酒造家・松岡家に年季奉公し、16歳で親戚筋の浄土宗報恩寺住職・松岡白雄上人の養子となり僧籍入りし、松岡薩雄と名乗った。その後上京し、芝増上寺の道重信教僧正の弟子となる。芝高輪中学を経て、浄土宗宗教大学に学び、24歳のとき日露戦争で満州へと出征。銃傷を受け帰還し、除隊後、25歳で「都新聞」に入社。長く政治記者として活躍し、39歳の時に都新聞社副社長となった。都新聞在職中の1917(大正6)年、妻の故郷の栃木県鹿沼市から総選挙に立候補したが落選。1920(大正9)年の総選挙で衆議院に初当選、その後は山形県から政友会公認として出馬し、衆議院議員を9期つとめた。1926(大正15)年、請願令違勧幇助罪で議員失格となった心労により病気となり山形市立済生館病院に入院、このとき雪害に苦しむ雪国の人たちの姿をみて雪害救済運動に一生を捧げることを決意した、という。
1955(昭和30)年2月13日、鶴岡にて総選挙の遊説中に倒れ帰らぬ人となった。享年74。死後、1957(昭和32)年に山形県新庄市に彼の銅像が建立されている。

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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