防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

クラウゼヴィッツの「戦争論」(1832年)第6章・戦争は政治の一手段であるの名言(1780~1831 / プロイセン王国の軍人・軍学者)[今週の防災格言742]

time 2022/03/14

クラウゼヴィッツの「戦争論」(1832年)第6章・戦争は政治の一手段であるの名言(1780~1831 / プロイセン王国の軍人・軍学者)[今週の防災格言742]

『 戦争は他の手段をもってする政治の延長にほかならない。 』

“ Der Krieg ist nichts als eine Fortsetzung des politischen Verkehrs mit Einmischung anderer Mittel.”

 

カール・フォン・クラウゼヴィッツ(1780~1831 / プロイセン王国の軍人・軍学者 最終階級は少将 『戦争論』著者)

 

格言はクラウゼヴィッツ『戦争論(Vom Kriege)』(1832年)より。
戦争は政治の手段にほかならないとの観点から、ナポレオン以降の近代戦争を体系的・総括的に研究分析した初の軍事戦略論で、今日でも各国の士官学校や研究機関で扱われている古典的名著である。

下巻、第6章「A.政治的目的が軍事的目的に及ぼす影響」「B.戦争は政治の一手段である」に曰く―――。

《 国家が他国の利益のために一肌脱ぐという事はあり得るが、しかしこれを自国の利益と同様に真剣に考えるという事は、決してないと見ていい。多少の援軍は派遣されるが、その援軍も事態の頽勢(たいせい)を挽回するに効無しと見るや、問題は既に殆ど片付いたと考え、出来るだけ少ない犠牲をもってこの危地から逃れ出ようとするのが人情である。 …(中略)…

曰く、戦争は政治的交通の一手段に過ぎず、それ故に決して独立なるものではない。
“daß der Krieg nur ein Teil des politischen Verkehrs sei, also durchaus nichts. Selbständiges”. …(中略)…

曰く、戦争は他の手段を用いる所の、政治的関係の継続に過ぎぬ、と。
“Der Krieg ist nichts als eine Fortsetzung des politischen Verkehrs mit Einmischung anderer Mittel.” …(中略)…

政治的着眼点が戦争の開始と同時に中絶せねばならぬという場合が可能であるとすれば、それは、戦争が全然単なる敵対的感情に由来する生死の闘争たる場合に限られている。しかしありのままの戦争に就いて見れば、先に述べた如く、戦争というものは、単なる敵愾心の発露ではなく、政治それ自体の表現に過ぎないのである。然りとすれば政治的着眼点を軍事的着眼点の下位に置くのは不条理であるといわねばならぬ、蓋し政治が戦争を生んだのであるからだ。政治が主宰者で、戦争は手段に過ぎない、その逆では決してない。 》
(出典:馬込健之助訳「戦争論・下」(岩波文庫 昭和8年))

 

カール・フォン・クラウゼヴィッツ(Carl von Clausewitz)は、プロイセン王国の軍人で軍事学者。最終階級は少将。
プロイセン軍将校としてナポレオン戦争(1799~1815)に従軍し、戦後は陸軍大学校長となり、軍事研究や著述に専念した。死後1832年に発表された『戦争論』で、絶対的戦争や政治的交渉の延長としての戦争概念の提唱、防御の優位性など戦略・戦術研究で大きな業績を残した。

1780年7月、プロイセン王国ブルクのポーランド系ドイツ人の家庭に生まれる。父親は七年戦争(1756~1763)に少尉として従軍し、退役後はブルクの徴税官として勤めた。
1792年、12歳で入隊し、フランス革命後の第一次対仏同盟戦争(1793~1797)の1794年のマインツ攻城戦で初陣を飾り、この戦闘で将校相当の准士官に昇進。15歳で少尉となり、連隊長推薦により1801年にベルリン士官研修所に入学。研修所所長だったシャルンホルスト中佐(1755~1813 / フランス革命戦争(1792~1802)でハノーファー軍参謀本部の指揮官として有名となり後にプロイセン軍初代参謀総長となった人物)に師事した。
1803年、士官研修所を首席で卒業し、卒業後はシャルンホルストの推薦によりアウグスト親王(プロイセン王子フェルディナントの五男)の指揮する近衛大隊の副官となった。
1806年、ナポレオンのライン同盟に危機感を覚えたプロイセン王国は、第四次対仏大同盟に参加しフランスへ宣戦布告するが、近衛大隊は1806年10月の「イエナ・アウエルシュタットの戦い」でフランス軍に大敗北を喫し、指揮官のアウグストとともにクラウゼヴィッツはフランス軍の捕虜となった。翌1807年のティルジット講和条約(プロイセンとフランスの講和条約)で釈放され、フランスの占領下にあるベルリンに帰還し軍備再編委員会議長としてプロイセン軍の軍制改革を進めるシャルンホルストの招きに応じ改革を補佐した。
1810年、新設された陸軍大学校の教官に任命される。1812年2月、プロイセンがフランスと軍事同盟を締結すると、クラウゼヴィッツは「プロイセン存続のためにはフランスとの同盟はありえない」と呼びかけこれに反対した。1812年6月、ナポレオンによるロシア遠征が始まると、プロイセン軍に辞職届を出し(※当時プロイセンはフランス占領下でフランス・プロイセン連合軍だった)、ベルリンを出奔してロシアのヴィルナにあるロシア防衛軍司令部を訪ね、ロシア軍中佐・第1騎兵軍団長付き参謀次長として兵站を担当した。
1812年10月、フランスのナポレオン軍は、ロシアの焦土作戦でモスクワで大敗北を喫する。
クラウゼヴィッツは、戦闘中にナポレオン指揮下のプロイセン軍とロシア軍の戦闘回避に奔走し、両軍の停戦交渉を成功させるとともに、ロシアに占領された東プロイセンをロシアから解放する「タウロッゲン協定」を締結させるなど活躍。これによりプロイセン国王は新政府を樹立しフランスとの同盟を破棄、1813年3月に、プロイセン新政府はフランスへ宣戦を布告した。
プロイセン解放戦争の緒戦に勝利した1814年、プロイセン国王に出奔を許されたクラウゼヴィッツは、プロイセン軍大佐として軍へ復帰した。
エルバ島脱出以降のナポレオン戦争では、クラウゼヴィッツは第3軍団参謀長となり、1815年6月の「ワーテルローの戦い」の勝利に寄与した。
1818年に少将に昇進し、陸軍大学校校長として勤務し、以降12年間で『戦争論』の大部分を書きあげ、1830年、50歳で校長職を辞した。
同年7月「フランス7月革命」に影響されてポーランドで暴動が発生すると、東方監視軍司令官付き参謀長としてこの紛争鎮圧にあたったが、作戦中にコレラに感染し、1831年11月16日に急死した。神経性ショックによる心臓麻痺が原因とされている。享年51。
死後、夫人により遺稿がまとめられ、1832年に戦史論や政治論などを含む『戦争論』が出版された。


by wikipedia.







■「軍学者」「兵学者」「軍事研究家」に関連する防災格言内の記事
蘇秦(BC5~BC4世紀頃 / 中国戦国時代の政治家・縦横家)(2015.12.14 防災格言)
墨子(BC470頃~BC390頃 / 中国の思想家 諸子百家「墨家」の始祖)(2014.06.02 防災格言)
王莽(BC45~AD23 / 古代中国「新朝」皇帝)の故事成語「酒は百薬の長」(『漢書・食貨志下』より)(2021.12.20 防災格言)
楠木正成(1294~1336 / 鎌倉時代末期・南北朝時代の武将 正一位)(2014.03.31 防災格言)
ニッコロ・マキャヴェッリ(1469~1527 / 中世イタリアの思想家 外交官)(2020.05.18 防災格言)
山鹿素行[1](1622~1685 / 江戸初期の兵学者・儒学者・思想家)(2018.04.16 防災格言)
山鹿素行[2](1622~1685 / 江戸時代前期の兵学者・儒学者・思想家 古学派の祖)(2021.05.10 防災格言)
カール・フォン・クラウゼヴィッツ(1780~1831 / プロイセン王国の軍人・軍学者 『戦争論』著者)(2022.03.14 防災格言)
マシュー・ペリー提督(1794~1858 / アメリカ海軍軍人 東インド艦隊司令長官)(2013.01.07 防災格言)
徳川斉昭(1800~1860 / 幕末の大名・常陸水戸藩主(第9代))(2015.08.17 防災格言)
勝海舟(1823~1899 / 江戸・明治の政治家 従五位下・安房守 日本海軍の生みの親 伯爵)(2012.12.03 防災格言)
乃木希典(1849~1912 / 武士・長府藩士 陸軍大将 学習院院長(第10代))(2021.05.03 防災格言)
徳富蘇峰[1](1863~1957 / ジャーナリスト・思想家・評論家・歴史家・随筆家・新聞経営者)(2009.07.27 防災格言)
徳富蘇峰[2](1863~1957 / ジャーナリスト・思想家・評論家・歴史家・随筆家・新聞経営者)(2020.07.13 防災格言)
毛沢東(1893~1976 / 政治家・軍人・思想家「中華人民共和国の建国の父」)(2012.09.24防災格言)
瀬島龍三(1911~2007 / 伊藤忠商事会長 関東軍作戦参謀・陸軍中佐)(2017.02.13 防災格言)
坂井三郎(1916~2000 / 大日本帝国海軍中尉 零戦パイロット)(2016.10.24 防災格言)
小野田寛郎(1922~2014 / 予備陸軍少尉 元帝国陸軍情報将校)(2014.1.20 防災格言)
伊藤宗一郎(1924~2001 / 陸軍少尉政治家・防衛庁長官)(2013.01.07 防災格言)
吉村昭(1927~2006 / ノンフィクション作家 代表作『関東大震災』『戦艦武蔵』等)(2021.07.19 防災格言)
アルビン・トフラー(1928~2016 / アメリカの作家・未来学者)(2016.7.4 防災格言)
佐々淳行[1](1930~2018 / 作家・評論家 警察官僚・初代内閣安全保障室長)(2008.6.30 防災格言)
佐々淳行[2](1930~2018 / 作家・評論家 警察官僚・初代内閣安全保障室長)(2018.10.15 防災格言)
志方俊之(1936~ / 元自衛隊陸将・北部方面総監)(2010.11.01 防災格言)
柳田邦男[1](1936~ / ノンフィクション作家 元NHK記者・解説委員)(2010.10.04 防災格言)
柳田邦男[2](1936~ / ノンフィクション作家・評論家)(2019.03.18 防災格言)
ジャレド・ダイアモンド(1937~ / アメリカの人類生態学者 カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)(2021.01.04 防災格言)
小川和久(1945~ / ジャーナリスト・軍事アナリスト 危機管理総合研究所長 静岡県立大学特任教授)(2008.02.04 防災格言)
君塚栄治(1952~2015 / 陸上幕僚長東日本大震災時の東北方面総監)(2016.03.14 防災格言)
ハリー・ハリス提督 (1956~ / 米海軍大将 アメリカ太平洋軍司令官)(2017.11.06 防災格言)番匠幸一郎(1958~ / 元自衛隊陸将・西部方面総監(第35代))(2017.04.03 防災格言)

■「ドイツ人」に関連する防災格言内の主な記事
ヴェルナー・ロレヴィンク(1425~1502 / ドイツの修道士(カルトジオ会)・神学者)(2020.08.10 防災格言)
ゲーテ(1749~1832 / ドイツの文豪・自然科学者・法律家)(2013.11.18 防災格言)
ルートビッヒ・ヴァン・ベートーベン(1770~1827 / ドイツの大作曲家)(2013.09.09 防災格言)
カール・フォン・クラウゼヴィッツ(1780~1831 / プロイセン王国の軍人・軍学者 『戦争論』著者)(2022.03.14 防災格言)
ハインリッヒ・シュリーマン(1822~1890 / ドイツの考古学者・実業家)(2016.11.21 防災格言)
アーノルド・ニーベルディング(1838~1912 / ドイツの法学者 政治家)(2020.09.14 防災格言)
ルドヴィコ・ザメンホフ(1859~1917 / 眼科医・言語学者 エスペラント言語の創案者)(2021.01.25 防災格言)
ロバート・ボッシュ(1861~1942 / ドイツの実業家 自動車部品メーカー・ロバート・ボッシュの創立者)(2011.12.12 防災格言)
アルフレッド・ウェゲナー(1880~1930 / ドイツの気象学者・地球物理学者 「大陸移動説(1912年)」を提唱)(2021.10.25 防災格言)
クルト・ワルトハイム(1918~2007 / オーストリア大統領 国際連合事務総長(第4代))(2019.11.04 防災格言)
アルノ・ボルスト(1925~2007 / ドイツの歴史家・中世史家 コンスタンツ大学教授)(2020.07.27 防災格言)
ギュンター・グラス(1927~2015 / ドイツのノーベル賞作家)(2015.04.20 防災格言)
ヘルムート・トリブッチ(1943~ / ドイツの自然科学者「動物は地震を予知する」の著者)(2011.10.24 防災格言)
ウルリッヒ・ベック(1944~2015 / ドイツの社会学者 「リスク社会」を提唱)(2018.10.29 防災格言)
ドナルド・ディングウェル(1958~ / ドイツの火山学者)(2011.02.07 防災格言)
スイス連邦政府「民間防衛(1969年)」より[1](2009.05.11 防災格言)
スイス連邦政府「民間防衛(1969年)」より[2](2017.01.09 防災格言)
スイスのパンはとっても不味い(2002.12.16 編集長コラム)

 

著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

[このブログのキーワード]
防災格言,格言集,名言集,格言,名言,諺,哲学,思想,人生,癒し,豆知識,防災,災害,火事,震災,地震,防災グッズ,非常食
みんなの防災対策を教えてアンケート募集中 非常食・防災グッズ 防災のセレクトショップ SEI SHOP セイショップ

メルマガを読む

メルマガ登録バナー
メールアドレス(PC用のみ)
お名前
※メールアドレスと名前を入力し読者登録ボタンで購読

アーカイブ