『 原発災害のような複雑な問題では “公論を形成する場” “科学的な検討を行う場” “政策案を形成する場” “政策を決定する場” の四つを構築し、これらを適切に連結する必要がある。 』
舩橋晴俊(1948~2014 / 社会学者・専門は環境社会学 法政大学社会学部教授)
格言は2013年(平成25年)11月1日付の讀賣新聞「論点:福島の放射線問題「科学的検討の場」確立を」より。
曰く―――。
公論形成の場をつくって国民の間で活発な論議が起きるようにし、その議論を反映する形で、政府や国会という政策案形成や政策決定の場が動くことが望ましい。そしてこれらの議論の質を高める基盤になるのが「科学的な検討の場」である。この場を確立し、信頼性が高く正確な科学的知見を、それぞれの議論に提供する必要がある。残念ながら、今回の災害では、こうした取り組み態勢があまりにも弱い。
舩橋晴俊(ふなばし はるとし)は、公害・環境問題を専門とする社会学者で、日本における環境社会学研究のパイオニアの一人。東京電力福島第一原発事故を受け、脱原発を目指す「原子力市民委員会」の座長を務めた。
1948年(昭和23年)7月17日、神奈川県中郡大磯町生まれ。1976年(昭和51年)東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。
東京大学文学部社会学研究室助手、法政大学社会学部講師、1986年(昭和61年)より2年間フランス政府給費留学生としてフランス留学を経て、帰国後1988年(昭和63年)より法政大学社会学部教授に就任。1992年(平成4年)社会学者・飯島伸子(東京都立大学教授)らと環境社会学会を設立したほか、日本社会学会研究活動委員を歴任。法政大学社会学部長(2004年~2006年)、法政大学大学院委員会議長(2009年~2011年)、法政大学サステイナビリティ研究教育機構機構長(2009年~2013年)、2013年(平成25年)4月に原子力市民委員会(NPO法人高木仁三郎市民科学基金内)を発足し亡くなるまで座長を務めた。
新幹線公害問題への取り組みや、熊本と新潟での水俣病研究、ごみ問題、グリーンコンシューマー運動、整備新幹線建設問題、青森県の核燃料サイクル施設の立地問題等の研究に取り組んできた。東日本大震災(2011年)以降は原子力問題の研究の指導的な役割を担い、日本学術会議「高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会」の原子力委員会委員長に対する回答(2012年9月11日付)や、2014年(平成26年)4月に原子力市民委員会報告書「原発ゼロ社会への道―市民がつくる脱原子力政策大綱(通称:脱原子力政策大綱)」(2014年)を取りまとめ発表した。
2014年(平成26年)8月15日、くも膜下出血により66歳で急逝。
著書に「社会制御過程の社会学」(東信堂 2018)、共著「被災地から未来を考える(シリーズ3巻)」(有斐閣 2017-2019)など。
写真出典: 科学技術振興機構(JST);地域エネルギーと地域ファイナンスの統合的活用政策及びその事業化研究 url: https://www.jst.go.jp/ristex/env/02project/1-5.html
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