今週の木曜日(1月26日)は「 文化財防災デー 」です。
1949年(昭和24年)1月26日―――。
世界最古の木造建造物である奈良の「 法隆寺金堂 」が火災となり、国宝の十二面壁画が焼損しました。
翌日の朝日新聞に、イギリスのロンドンタイムス東京支局長だったフランク・ホーレー氏(日本古典書籍の収集家として著名な人物)は、
日本人はこうした“貴重なもの”の取扱いが全く下手でデタラメだ
…と文化的損失を大いに歎くと同時に、文化財保護意識に欠ける日本人へ英国人的な皮肉を込めた寄稿を紙面に寄せました。
極めつけは、この火災の翌月2月には、愛媛県の松山城が不審火(放火)され、本丸に通じる筒井門とその東西の続櫓(やぐら)(いずれも国宝)の三棟が焼失。
さらに、6月5日、北海道の松前城が火災となり、天守と本丸御門東塀(いずれも国宝)が焼失してしまったのです。
わずか半年で、国宝(当時)が三度火災になりました。
これらの事件で、日本では、火災や災害から文化財を保護しようという世論が沸き起こります。
そして、翌年の1950年(昭和25年)に、文化財保護法が制定されることになりました。
各自治体による文化財保護政策が一段落した1955年(昭和30年)、当時の文化財保護委員会(今の文化庁)と国家消防本部(今の消防庁)が、文化財を災害から守る日として、冬季が一年のうちで最も火災が発生しやすい時期であることと、法隆寺金堂が焼損した記念日でもある「1月26日」を「 文化財防火デー 」と定められました。
それから毎年この日には、文化庁や消防庁の主導により、全国各地の古い神社仏閣で防火訓練が実施されたりするようになったのでした。
なお、最初に火災となった法隆寺の金堂壁面は、1994年(平成6年)11月1日、45年ぶりに一般公開(金堂修復40周年記念)されて今に至ります。
防災に歴史ありですね。
出典: 石田茂作・亀田孜朝監修「法隆寺 : 壁画と金堂」(1968年 朝日新聞社)