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やなせたかしが東日本大震災の際に述べた名言(1919~2013 / 漫画家 代表作「アンパンマン」)[今週の防災格言481]

time 2017/03/13

やなせたかしが東日本大震災の際に述べた名言(1919~2013 / 漫画家 代表作「アンパンマン」)[今週の防災格言481]

『 どんなに対策をたてても絶対安全ということはない。どんなに立派な耐震住宅を建てても活断層がなくても、大地が液状化すればひとたまりもない。 』

 

やなせたかし(1919~2013 / 漫画家 代表作「アンパンマン」)

 

格言は東日本大震災後の2011年5月11日にスタートした岩波書店初のウェブ連載企画「3.11を心に刻んで」で2012年2月11日掲載の「3月11日から」より。

曰く―――。

テレビで東日本大震災のニュースと映像が流れた。…(中略)…
原発はCO2を発生しないクリーンなエネルギーであることを売り物にしていたが、その危険な廃棄物については沈黙していた。実は僕は原発に賛成ではなかったが、チェルノブイリのような事故は日本では起きないと信じていた。

日本人の国民性はまじめで規律を良く守る。戦後は誤った民主教育のためにいくらか怪しくはなってきたが、基本的な性格は変わらない。世界で一番安全な国と言われている。しかし安全神話はもろくもくずれ去ってしまった。

これが僕にはショックだった。
まさか一〇〇〇年に一度の国難のような大震災に遭うとは思わなかった。僕のマンションもその辺りの建物も幸いに無事だった。…(中略)…

でも本当に驚いたのは黄昏になってからである。東京都のような大都市になると都内に住んでいても通勤に一時間ぐらいかかるところはザラである。遠い人は三時間ぐらいかけて勤務地へやってくる。すべての交通機関が止まってしまったので、帰宅できない帰宅難民があふれた。
新宿通りも靖国通りも道をうずめて大群衆が移動していく。スーパーやコンビニも弁当はすべて売り切れ、異様な感じになった。幸い停電はしなかったものの、大都市の弱点が浮き彫りになった。これでもし直下型地震だったらと思うと身の毛がよだった。…(中略)…

どんなに対策をたてても絶対安全ということはない。 僕は震災直後、自家発電機や電池、非常食を買おうとしたが、なんとすべて売り切れていた。 世間の人は僕よりもはるかに用心深いようである。どんなに立派な耐震住宅を建てても活断層がなくても、大地が液状化すればひとたまりもない。

… … …

 

やなせたかし(本名:柳瀬嵩)は、『アンパンマン』生みの親として知られる漫画家・絵本作家。他にもいずみたく作曲の童謡『手のひらを太陽に(1961(昭和36)年)』の作詞者としても著名。

高知県出身。1919(大正8)年2月6日、東京府(現東京都北区)生まれ。旧制東京高等工芸学校図案科(現千葉大学工学部デザイン学科)を卒業後、田辺製薬宣伝部に就職するが、まもなく徴兵により帝国陸軍に入隊、下士官(軍曹)として中国戦線にいたときに敗戦を知った。やなせの弟は特攻隊に志願し戦死している。
終戦後は高知新聞、三越宣伝部デザイナーを経て1953(昭和28)年より独立してフリーとなる。1969(昭和44)年、大人向け絵本『アンパンマン』を執筆。1973(昭和48)年にはサンリオで雑誌「詩とメルヘン」を創刊し編集長を務めた一方で、「漫画家の絵本の会」を立ち上げ、フレーベル館の月刊絵本「キンダーおはなしえほん」に子供向けに改作した「あんぱんまん」を発表。1988(昭和63)年、テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』が日本テレビ放送網で放送開始され人気番組となる。翌年文化庁こども向けテレビ用優秀映画賞を受賞。1989(平成元)年からは劇場用アニメも制作され、1990(平成2)年 「アンパンマン」が日本漫画家協会大賞を受賞し、翌1991(平成3)年勲四等瑞宝章授章。2000(平成12)年、日本児童文芸家協会児童文化功労賞受賞。2009(平成21)年には最もキャラクター数の多いアニメとして「それいけ!アンパンマン」がギネス世界記録に認定された。70歳代以降は病を抱えながらも精力的に様々な活動を展開し、1992(平成4)年からは高知県主催の「まんが甲子園」の審査委員長、2000(平成12)年から日本漫画家協会理事長、2012(平成24)年からは会長を歴任。2013(平成25)年10月13日、心不全のため東京都文京区の順天堂大学医学部附属順天堂医院で死去。94歳。

2011年の東日本大震災時は、都営新宿線・曙橋駅近くの自宅マンション(東京・新宿区)で仮眠中に揺れに遭遇したが、地盤が強固だったこともあり本棚や壁掛け時計が落下するなど小被害ですんだという。





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著者:平井敬也(週刊防災格言編集主幹)

 

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