『 下水道があふれる恐れがあるため、豪雨の時、風呂の栓を抜いたらダメですよ。みんなで意識すれば、これも立派な水害対策になる。 』
高橋 裕(1927〜2021 / 河川工学者 東京大学名誉教授)
高橋裕(たかはし ゆたか)博士は《 河川の改修は下流に水を集中させ、かえって大洪水を招き、堤防やダムだけでは水害はなくせない 》との持論を1971(昭和46)年に発表し、森林の保全など流域全体で進める現行の治水対策「総合治水」を提唱した河川工学者。
「水」に関する国際的な権威であり、水害の他にも、水質汚染問題、水不足問題、地球温暖化や環境問題など水が関わる多くの問題についての提言も行われ、特に、河川行政に住民が参加する必要性についての訴えは、1997(平成9)年の河川法改正にも反映された。
1927(昭和2)年1月28日、静岡県生まれ。
実父は、戦後全国のミカン園の復興に尽力し「柑橘の父」と呼ばれた園芸技師・高橋郁郎(1892〜1981 / 日本園芸農協連合会(日園蓮)設立者)。妹に高橋百合子(愛知県立看護短期大学名誉教授)がいる。
死者・行方不明者1,930人を出した1947(昭和22)年のカスリーン台風を契機に《 水害をなくすことが戦後復興の第一歩 》との思いから研究者の道を志したという。
旧制静岡高校を経て、東京大学第二工学部土木工学科へ進学。東大で河川学者・安芸皎一(あき こういち)に師事し、1950(昭和25)年、東京大学第二工学部土木工学科を卒業。1955(昭和30)年、東京大学大学院研究奨学生課程修了。その後、東京大学工学部専任講師となり、1961(昭和36)年助教授、1968(昭和43)年教授に就任。1987(昭和62)年、東大を退官し名誉教授。同年、芝浦工業大学工学部教授(1987年〜1998年)、国際連合大学上席学術顧問(2000年〜2010年)、日仏工業技術会会長を歴任された。
2021(令和3)年5月26日に94歳で死去。
主な受賞歴に、ネパール王国ゴルカ・ダクシン・バフ勲章(1978年)、フランス共和国教育功労賞シュバリエ賞(1981年)、土木学会最高賞功績賞(1998年)、国際水資源学会最高栄誉賞(2000年)、瑞宝中綬章叙勲(2007年)、第31回日本国際賞(2015年)など。
2015(平成27)年4月21日の日本国際賞受賞記念講演では、
《 現在、IT(情報)技術、計測技術、写真などの進歩によって、河川の現象は理解しやすくなった。しかし、そのために川の現象を肉眼で、五感を通して見る感覚が衰えていないか、少々心配している。 》
―――と述べられている。
格言は讀賣新聞(2015(平成27)年2月18日号)「顔」より。
日本国際賞受賞記念講演(2015年)の映像
■「高橋裕」「洪水・水害」に関連する防災格言内の主な記事
安芸皎一(河川工学者・土木技術者 東京大学教授 「伊勢湾台風」の名言)(2020.09.07 防災格言)
川合茂(河川工学者 舞鶴工業高等専門学校名誉教授)(2011.08.15 防災格言)
高橋裕(河川工学者 東京大学名誉教授)(2017.06.12 防災格言)
長野県伊那地方の水害の伝承「未満水(ひつじまんすい)(1715年)」より(2020.06.29 防災格言)
中谷宇吉郎[2](物理学者・随筆家 カスリーン台風後の随筆「水害の話(1947年)」より)(2020.07.06 防災格言)
寺田寅彦[9](物理学者 室戸台風直後の随筆から)(2019.06.24 防災格言)
寺田寅彦[10](物理学者 室戸台風直後の随筆から)(2020.08.31 防災格言)
加々美武夫(室戸台風時の大阪府助役 警察官僚・内務省内務書記官 大阪市長(第8代))(2020.09.21 防災格言)
藤原咲平 (気象学者 室戸台風後の著書『天気と気候』より)(2013.10.28 防災格言)
丹羽安喜子(歌人 室戸台風で罹災)(2016.08.22 防災格言)
諫早豪雨の教訓から(1957(昭和32)年7月25日)(2017.07.10 防災格言)
松野友(岐阜県本巣郡穂積町町長 日本初の女性村長)(2015.03.02 防災格言)
及川舜一(元岩手県一関市市町 カスリーン台風とアイオン台風の大水害)(2015.09.14 防災格言)
小川竹二(元新潟県豊栄市長 下越水害)(2017.09.11 防災格言)
奥貫友山(利根川・荒川水害である寛保大水害時の慈善家)(2010.4.5 防災格言)
幸田文(随筆家・小説家 代表作『崩れ』『流れる』)(2015.05.11 防災格言)
桑原幹根(愛知県知事)(2014.09.15 防災格言)
廣井悠 (都市工学者)(2012.03.12 防災格言)
大隈重信 (佐賀藩士・早稲田大学創立者)(2010.09.27 防災格言)
下田歌子 (歌人・実践女子学園創始者)(2009.12.14 防災格言)
平生釟三郎 (川崎重工業社長)(2009.11.02 防災格言)
山下重民 (明治のジャーナリスト 風俗画報編集長)(2008.09.22 防災格言)
吉田茂 (政治家)(2008.05.05 防災格言)
脇水鉄五郎(地質学者・日本地質学会会長)(2011.07.18 防災格言)
谷崎潤一郎 (作家)(2014.12.08 防災格言)
矢野顕子 (シンガーソングライター ハリケーン・サンディ水害)(2016.10.17 防災格言)
森田正光 (お天気キャスター)(2017.06.05 防災格言)
中央防災会議「大規模水害対策に関する専門調査会」(2008年9月8日)より(2018.07.09 防災格言)
二宮尊徳翁(二宮金次郎)(江戸時代後期の経世家・農政家)(2012.01.30 防災格言)
上杉鷹山 (江戸時代中期の大名 出羽国米沢藩9代藩主)(2010.04.12 防災格言)
莅戸善政[1] (かてもの作者 出羽国米沢藩家老)(2008.03.17 防災格言)
莅戸善政[2] (かてもの作者 出羽国米沢藩家老)(2011.12.05 防災格言)
中江藤樹 (江戸時代初期の陽明学者 近江聖人)(2010.11.22 防災格言)
『百姓伝記』(1680~1682年・著者不明)巻七「防水集」より(2018.08.27 防災格言)
中西 進(国文学者 大阪女子大名誉教授 文化勲章受章)(2019.04.08 防災格言)
倉嶋厚(気象学者・お天気キャスター 元気象庁主任予報官)(2019.07.22 防災格言)
宮澤清治 (気象学者・NHK気象キャスター)(2016.09.05 防災格言)
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中貝宗治(台風23号(2004年10月)時の兵庫県豊岡市長)(2020.11.30 防災格言)
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