防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

『十訓抄』(鎌倉時代の説話集)から藤原成通(1097~1162)の逸話と名言 [今週の防災格言549]

time 2018/07/02

『十訓抄』(鎌倉時代の説話集)から藤原成通(1097~1162)の逸話と名言 [今週の防災格言549]

『 する事かたきにあらず、よくする事のかたきなり。 』

鎌倉時代の説話集『十訓抄(建長4(1252)年 / 編者未詳)』一〇・六九より

ことを為すのが難しいのではなく、よく為すことが難しい、の意味。

十訓抄(じっきんしょう)は、三巻十篇、十か条の教訓、約二八〇の説話を集めた鎌倉時代の少年用啓蒙書。
作者は、六波羅庁の北条長時・時茂に仕えた人物・六波羅二臈 (ろくはらにろう) 左衛門入道とするのが通説で、紀伊の豪族・湯浅宗業や菅原為長とする説もある。古文献の口承説話の他に、平清盛・重盛父子、西行、鴨長明らの逸話なども収録されている。
この格言は、平安時代の公家で蹴鞠の達人として知られた藤原成通(ふじわら の なりみち / 1097~1162)の逸話から。

曰く―――。

《 成通卿、年ごろ鞠を好み給ひけり。其の徳やいたりにけん、或としの春、鞠の精、かかりの柳の枝にあらはれて見えけり。みづらゆひたる小児(ちご)、年十二三ばかりにて、青色の唐装束して、いみじううつくしげにぞありける。
何事をもこのむとならば、底をきはめて、かやうのしるしをあらはすばかりこそ、せまほしけれど、かかるためし、いとありがたし。されば「学ぶ者は牛毛のごとく、得る者は麟角のごとし」ともあり。又「する事かたきにあらず、よくする事のかたきなり」ともいへる、げにもと覚ゆるためしありけり。 》
藤原成通

■「藤原成通」「十訓抄」に関連する防災格言内の記事
鴨長明「人のいとなみ、皆愚なる中に、さしも危うき京中の家を造るとて、宝を費やし、心を悩ますことは、すぐれてあぢきなくぞ侍る」(2012.05.28 防災格言)
鴨長明「恐れの中に恐るべかりけるは、ただ地震(なゐ)なりけりとこそおぼえ侍(はべ)りしか。」(2008.03.31 防災格言)
豊かなるけふ(今日)より、万々一の日の心がけいたすべく候 / 莅戸善政・米沢藩家老『かてもの(寛政12(1800)年)』より(2008.03.17 防災格言)
今の豊かなる日に能能(よくよく)心得させよとの御事に候条、油断すべからざるもの也 / 莅戸善政・米沢藩家老『かてもの(寛政12(1800)年)』より(2011.12.05 防災格言)
兼好法師『徒然草』「よろづの事は頼むべからず。愚かなる人は、深く物を頼むゆゑに、恨み怒ることあり」(2010.01.04 防災格言)
吉田兼好『徒然草』「世に語り伝ふる事、まことはあいなきにや、多くは皆、空言そらごとなり」(2012.06.04 防災格言)
北畠親房「人民の安からぬ事は時の災難なれば、神も力及ばせ給はぬにや」(『神皇正統記』より)(2015.06.08 防災格言)
北畠親房「少しの事も心に許す所あれば、大きに誤る本となる」(『神皇正統記』より)(2014.04.14 防災格言)
源為憲「もろもろの物の中に捨てがたきはおのが身より過ぎたるはなし。」(『三宝絵詞』より)(2018.03.05 防災格言)
「人間はこれ生死無常、芭蕉泡沫のさかひ」(『保元物語』より)(2015.03.23 防災格言)
楠木正成「事に臨んで恐れ、はかりごとを好んで成すは勇士のする所也。」(2014.03.31 防災格言)
「ただ、悲しかりけるは大地震なり。鳥にあらざれば空をも翔りがたく、竜にあらざれば雲にも又上りがたし」(『平家物語』巻十二より)(2014.02.10 防災格言)
慈円 (鎌倉時代の天台宗僧侶)(2014.03.17 防災格言)
無住(鎌倉時代の臨済宗僧侶)(2014.08.25 防災格言)
「更に今日の命、物食はずは生くべからず。後の千のこがね更にやくなし」(『宇治拾遺物語』より)(2014.06.09 防災格言)
「昨日は他人のうれえ、今日は我上わがうえせめ。」(『平治物語』(上巻)より)(2009.05.25 防災格言)
藤原敦光「安くして危きを忘れざるは、古の炯誡なり」(2011.09.05 防災格言)
「眠たいは大事のことぞ」(『平家物語』より)(2013.01.16 店長コラム)
「する事かたきにあらず、よくする事のかたきなり。」(『十訓抄』より)(2018.07.02 防災格言)
やすむ云ふいうは、心を休して、よく守らんためのやすみなり / 山鹿素行(1622~1685 / 江戸初期の兵学者・儒学者・思想家)(2018.04.16 防災格言)
旧約聖書『伝道者の書』第1章9節より(2009.11.23 防災格言)
旧約聖書『創世記』41章より(2011.12.26 防災格言)
安きにありて危うきを思う(居安思危)備えあれば憂いなし(有備無患)(2008.11.10 防災格言)
ことあらかじめすればすなわち、あらかじめせざればすなわはいす(事予則立、不予則廃)(2016.09.26 防災格言)
わざわいのぞみてうれいわするれば、うれいかならこれおよばん。(臨禍忘憂、憂必及之)(2016.6.6 防災格言)
易経 繋辞下伝「安くして危うきを忘れず(安而不忘危)」(2009.11.9 防災格言)
孔子:「人、遠慮なければ、必ず近憂あり(無遠慮、必有近憂)」(2009.1.12 防災格言)
孔子:苛政猛於虎也(苛政は虎より猛なり)(2005.4.13 店長コラム)
天下のわざわいは、多くは隠れてりてにわかに至り~(呂新吾『呻吟語』より)(2013.04.15 防災格言)
前慮ぜんりょさだまらずんば、後に大患たいかん有り(前慮不定、後有大患)(2015.12.14 防災格言)
いたってのちおそるるは、まことらず(禍至後懼、是誠不知)(柳宗元『誡懼箴』より)(2015.12.28 防災格言)
前事ぜんじわすれざるは、後事こうじなり。(前事之不忘、後事之師也)(2016.01.11 防災格言)
水をふさぐにみなもとよりせざれば、かならながる(塞水不自其源、必復流)(2016.07.11 防災格言)
あめわりてみちはらい、みずれてはしす。(中国古典『国語』周語中より)(2019.09.16 防災格言)
墨子「安居あんきょなきにあらず、我に安心あんしんなきなり。」(比無安居也、我無安心也)(2014.06.02 防災格言)
蘇軾「安心は是れ薬、更に方無し。」(安心是薬更無方)(2014.05.19 防災格言)
荀子「ふくきよりちょうなるはし。」(福莫長於無禍)(2018.05.14 防災格言)
安くして危きを忘れざるは、古の炯誡なり(安不忘危、古之炯誡也)(2011.09.05 防災格言)
積善の家には必ず余慶あり(積善之家必有餘慶)、積不善の家には必ず余殃あり(積不善之家必有餘殃)。『易経』坤・文言伝より(2018.10.22 防災格言)
孟子・公孫丑篇上「飢える者は食をなし易く、渇する者は飲をなし易し(飢者易為食、渇者易為飲)」(2019.02.04 防災格言)
洪応明「菜根譚」より「てん機緘きかんはかられず。おさえてはべ、伸べては抑え、みな英雄えいゆう播弄はろうし、豪傑ごうけつ顛倒てんとうするところなり。君子くんしただれ、ぎゃくたらばじゅんけ、やすきにりてあやうきを思うのみ。天もまた伎倆ぎりょうもちうるところし。」(2019.07.01 防災格言)

 

<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

[このブログのキーワード]
防災格言,格言集,名言集,格言,名言,諺,哲学,思想,人生,癒し,豆知識,防災,災害,火事,震災,地震,危機管理
みんなの防災対策を教えてアンケート募集中 非常食・防災グッズ 防災のセレクトショップ SEI SHOP セイショップ

メルマガを読む

メルマガ登録バナー
メールアドレス(PC用のみ)
お名前
※メールアドレスと名前を入力し読者登録ボタンで購読

アーカイブ