『
” 天之機緘不測。抑而伸、伸而抑、皆是播弄英雄、顛倒豪傑処。君子只是逆来順受、居安思危。天亦無所用其伎倆矣。”
洪応明(生没未詳 / 中国・明末(16世紀末頃)の随筆家 代表作『菜根譚』)
格言は中国古典『菜根譚(さいこんたん)』前集 69条より。
(出典:全訳注 中村璋八・石川力山『菜根譚』(講談社学術文庫 1986年))
口語訳は以下の通り―――。
天が人間の運命をあやつるからくりは、人知ではとうてい推し量ることはできない。
抑えて苦しめたかと思うと、伸ばして喜ばせ、伸ばしたかと思うと抑えたりして、みな、英雄をほしいままにもてあそび、豪傑を打ち倒したりするものである。
ただし、道に達した人だけは、天が逆境を与えれば順境として受けとめ、平安な時にも緊急の時に対する準備をしている。
だから天もこのような人に対しては、どんな手だても施すことができない。
※解説
この中にある「安(やす)きに居(お)りて危(あや)うきを思う:居安思危(きょあんしき)」は、平和な日々にあっても常に危機がくることを忘れずに備えをしておくことの意味で、出典は中国故事『春秋左氏伝』(譲公十一年条)から。
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洪応明(こう おうめい / 生没年未詳)、字は自誠(じせい)、号は還初道人。中国・明代末の著作家で、万暦年間(1573~1620年頃)の人物とされるが、詳しい経歴はわかっていない。
著書の随筆集『菜根譚(さいこんたん)』は、儒教・仏教・道教を融合した世俗的な処世哲学書で、短文の359条(前集225条、後集134条)からなる。中国では注目されることのなかった書であったが、日本では江戸時代に僧侶により仏典に準じた扱いを受け、教養書として実業家や政治家に愛読された。
■中国古典・故事成語に関連する防災格言内の記事
安きにありて危うきを思う(居安思危)備えあれば憂いなし(有備無患)(2008.11.10 防災格言)
易経 繋辞下伝「安くして危うきを忘れず(安而不忘危)」(2009.11.9 防災格言)
孔子:「人、遠慮なければ、必ず近憂あり(無遠慮、必有近憂)」(2009.1.12 防災格言)
孔子:苛政猛於虎也(苛政は虎より猛なり)(2005.4.13 店長コラム)
天下の
水を
墨子「
蘇軾「安心は是れ薬、更に方無し。」(安心是薬更無方)(2014.05.19 防災格言)
荀子「
安くして危きを忘れざるは、古の炯誡なり(安不忘危、古之炯誡也)(2011.09.05 防災格言)
積善の家には必ず余慶あり(積善之家必有餘慶)、積不善の家には必ず余殃あり(積不善之家必有餘殃)。『易経』坤・文言伝より(2018.10.22 防災格言)
孟子・公孫丑篇上「飢える者は食をなし易く、渇する者は飲をなし易し(飢者易為食、渇者易為飲)」(2019.02.04 防災格言)
洪応明「菜根譚」より「