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柏木孝之が阪神淡路大震災の時に残した格言（みよしや千林店店長）[今週の防災格言408]

time 2015/10/12

『非常持出袋で命は救えない』

柏木孝之（1966〜 / 鞄店みよしや千林店(大阪市旭区)店長）

曰く―――。

《例えば、自宅が全半壊して立ち入りが困難な状況では、改めて非常用袋を持ち出せる可能性は少ないのです。また、生死にかかわる一刻の猶予もない状況であれば、持って逃げることにこだわるよりも、ただちに逃げることが重要となります。つまり、非常用持ち出し袋というのは、必要となる人には持ち出す余裕がなく、逆に安全に持ち出せる人には不必要である、とも言えるのです。
運悪く避難生活を余儀なくされた場合、非常用持ち出し用品は、各避難所に支援物資が届けられるまでの間、数時間から数日間のつなぎとして生活便利グッズ程度にはなるでしょう。しかしながら、万一長期の避難生活を強いられた場合は、持ち出し品の装備だけでは事足りません。
一つの考え方として、非常用の持ち出し袋は「無いと困る」というものでなく、自宅が被害を受けた際に最寄りの一時集合場所や避難場所、避難所までに無事にたどり着くための最低限の備えであるという点を理解しておくことが大切であり、「持ち出し袋さえ用意しておけば、震災が起きても大丈夫」という考えは改めるべきです。》

柏木孝之（かしわぎたかし）氏は、大阪・千林商店街（大阪府旭区）にある昭和3（1928）年創業の老舗鞄店「みよしや」の三代目店主。大阪で1、2を争う活気ある商店街として知られる千林商店街振興組合のIT部長としても活躍されている。
千林商店街では、商店街の店主らが講師となり、プロならではの専門知識を活かした様々な知恵を無償提供する「まちゼミ」というユニークな公開講座を年に二回、定期的に開催。柏木氏はこの中で、阪神淡路大震災（1995年）での体験を契機とした、カバン屋ならではの防災学習講座を自らが講師として受け持つ。特に、災害時の物資運搬に際し、大いに役立つリュックについては、購入者がいざ準備をしようとしても「何を入れて良いか分らない」「小さすぎて入り切らない」「重すぎて持ち運べない」などといった言葉が多く聞かれ、なんとか力になりたいと考えた、という。発災直後の数日間の「1次の備え」、その後の「2次の備え」、更には一番大切な命を守る「0次の備え」を含め、リュックを用いた備えについて専門家として的確なアドバイスを受講者に提供している。
《せっかく防災意識をお持ちであっても、知識を習得する場が限られているため、なかなか思うような情報を得ることが出来ない方が実はたくさんいらっしゃいます。そこで少しでも受講者の知識向上につながればとの思いで、自分の経験を交え、「見て」「聞いて」「触って」理解しやすい様にまとめたんですよ》と防災講座について話す。

柏木孝之店長

みよしや千林店（大阪・千林商店街）