編集部では読者アンケート調査「教えて!あなたの家の防災対策」(※回答募集中)を実施して、日頃から行っている災害対策についてのご意見を広く募集しました。たくさんのご回答の中から、皆さまにとって有益で参考になるご意見を毎週ピックアップしてご紹介してまいります。今週は、四国の瀬戸内海側(香川・愛媛・徳島)にお住いの H.M さんのコメントをご紹介します。
■ 教えて!あなたの家の防災対策 アンケート ■
【回答 No.36】H.M 様(70歳代・男性)
【回答 No.36】H.M 様(70歳代・男性)
[回答者名] | |
H.M 様 |
[性別 ・ 年齢 ・ 居住地域 ・ 世帯人数] | |
男性 / 70~79歳代 / 四国・瀬戸内海側(香川、愛媛) / 2人暮らし(要介護:一人居ますが、施設にいます。) |
[居住環境] | |
[想定している災害] | |
[アンケート回答]
南海トラフ地震に対して、地震と津波の影響で、被害を想定しています。
四国の瀬戸内海側に住んでいます。
地震は震度6から7で木造の建物はほぼ倒壊します。
津波は、瀬戸内海側は4メートルと言われていますので、海に近い我が家は多分、床上浸水になると予想しています。
四国の火力発電所は、太平洋側と瀬戸内海側で2基づつありますが、太平洋側は、30メートルの津波が来ますので、多分全滅でしょう。
瀬戸内海側の発電所も、浸水があるかもしれませんが、地震で大きな被害が予想されます。
ある論文によれば、地震後の使える電力は15%で、1年たっても四国の電力の回復は36%だそうです。
電気が無ければ水を作れません。
少なくとも、多くの家庭では、電気と水道が使えないでしょう。
床上浸水した家は、水が使えれば汚れを流せるので、ある程度住めるかもしれませんが、四国は水、電気がほぼ使えないので、避難所生活となるでしょう。
悲惨な避難所生活を想像すると、とても我慢が出来ないと思い、思い切って中古マンションを買いました。
そこに、水、食料、生活道具などを運び入れています。
夫婦2人で、とりあえず60日分を確保しています。
それまでに、救援物資が届くか分かりませんが、それ以上の保管は無理です。
カセットコンロを4台、カセットボンベ約100本確保しています。
瀬戸内海の沿岸地域の一軒家にご夫婦で住まわれており、南海トラフ地震・津波への備えをされていらっしゃいます。
被害想定・ハザードマップもきちんと事前に確認された後、きちんと災害時の状況を自ら想像(シミュレーション)できており、自宅が床上浸水する可能性が考えられることから、最悪の場合には、避難場所として購入した中古マンション物件に身を寄せることを考えて準備されていらっしゃいます。
きちんと順序だてて対策が考えられており、凄いですね。
●防災は想像力です
悲惨な避難所生活を想像すると、とても我慢が出来ないと思い、思い切って中古マンションを買いました。
災害を想定出来ていて、災害後のことも自分目線で、ちゃんと想像できていること、が凄いと思いました。
※「防災は想像力です」は、私が以前書いた本で紹介した言葉です。
確かに、不特定多数の罹災者が集まった「広域避難所」では、もし避難生活が長期にわたった場合には、自分勝手な行動もできず、わがままも言えず、生活で数々の我慢を強いられる可能性もあり、大きなストレスを感じるかもしれません。数日程度なら我慢できますが…数週間、何カ月にもわたった場合には、心や体のバランスを崩すかもしれません。
災害対策というのは、本来は、自宅から考えていくべきものです。
そして、多くの人が「自分の家は大丈夫!」と根拠なく言ってしまうのが大きな問題です。
ところが、H.Mさんのケースでは、我慢できそうに無い、という想像から、自宅外(中古マンション)へと対策の目を向けられたことが大きなポイントです。
恐らくご自宅から余り遠くない場所にマンションを購入されたのかと想像しますが、このマンションが、ご家族の防災ステーションとしての役割を担い、ここを中心に防災物資を備蓄されているのですね。
二つの物件を持つことにより“減災”が出来ているのです。
●瀬戸内海
四国の瀬戸内海側にお住まいとのこと。瀬戸内海は、太平洋や日本海の津波リスクに比べると安全と言えますが、全く津波がないわけではありません。
将来の発生が確実視されている「南海トラフ地震(南海トラフの巨大地震)」の津波被害では、10~30メートルもの大津波が想定されている太平洋沿岸地域と比べると、瀬戸内海沿岸部の波高は高くないですが、それでも3~5メートルの波高が想定されています。
一つ前の南海トラフ地震である「昭和南海地震(1946年)」では、塩田産業が盛んだった瀬戸内海の香川や岡山の沿岸に3メートルの津波が押し寄せて数十人が亡くなっています。地震の揺れによって沿岸部で液状化や地盤沈下が発生し、津波が堤防を越えて被害を大きくさせたと言われています。
●発電所
ある論文によれば、地震後の使える電力は15%で、1年たっても四国の電力の回復は36%だそうです。
かなり厳しい数字ですね。どの論文かご存じでしたらぜひ教えて下さい。
地震災害時に地下に埋没した水道管やガス管の破損復旧と異なり、目視復旧可能な電柱の多い電力の復旧作業は比較的に早いと言われています。
阪神淡路震災(1995年)の際には、断水の復旧に3カ月間(91日)、ガス復旧に16日かかりましたが、電力の場合は関西電力は発生6日後(153時間後)にほぼ全面復旧(応急復旧)させています。
東日本大震災では、震度6弱以上の揺れの地域の100%が停電したそうで、一般的に被害想定を算出する場合は、震度6弱以上の地域は全停電するものと考えるようです。
愛媛県で2014年にまとめた地震被害想定(下記「地震後経過時間」グラフ参照)をみると、阪神淡路震災(1995年)のケースをモデルに電力復旧率を算出したらしいのですが、これを見ると、10日ほど(250時間)でほぼ復旧(応急送電)するという想定みたいですね。
情報をいただいた論文に比べて、だいぶ甘いですが、いずれにせよ、最悪を想定して備えるのが良いとは思います。
- 参考資料
■愛媛県地震被害想定調査結果(最終報告書)(2014年)
https://www.pref.ehime.jp/bosai/higaisoutei/higaisoutei25.html
●物資
夫婦2人で、とりあえず60日分を確保しています。
2人で60日分というと、食糧で360食相当、飲料水で360リットル相当となります。
それまでに、救援物資が届くか分かりませんが、それ以上の保管は無理です。
「救援物資が届くか分からない」と思っておられる事は凄い事で、見習いたいポイントです。
つまり、政府や自治体の想定以上の被害を想像されている、ということになります。
電力想定など他の項目にも同じ様なお考えが散見されましたので、様々な部分で、それ以上を想像されています。
何度も言いますが、危機管理の要諦は、最悪を想定して最善を尽くす、ことにあります。素晴らしいです。
カセットコンロを4台、カセットボンベ約100本確保しています。
今回のアンケートを通じて、ほとんどの回答者がカセットコンロ(カセットフ―)を確保されていることが分りましたが、ご夫婦お二人で、カセットコンロ(カセットフ―)を4台というのは…恐らく一番多いかと思います。
故障した際の予備としてや、調理に複数コンロがあった方が捗る、などの多々の理由が想像できます。
「カセットコンロ(カセットフー)×4台」に対して「100本のカートリッジ」と十分な量を確保されています。
イワタニさんのWebページを参考にすると、カセットコンロのガスを調理にだけ使用すると考えた場合、カセット1本で、最大約1時間(3.5Kw 3000K)持ちます。また熱伝導効率の良い素材でできた鍋とかクッカーを使えば、ガスの消費を更に抑えられます。
イワタニさんのページのシミュレーションで調べると、大人2人で調理に使うだけならば、1日1本(1日3食2人分で0.6本~0.7本くらいの消費となる)で十分のようですので、100本のガスカートリッジは、3か月(90日分)の確保という想定となります。
- 参考資料
■Iwatani(岩谷産業) > カセットボンベとカセットこんろの備蓄について
http://www.i-cg.jp/topics/campaign_bousai/
・カセットコンロ:イワタニ(Iwatani)
イワタニの「タフまる」というカセットコンロは、普通の卓上カセットコンロをアウトドア用に改良したモデルで、空気は通すが風は通さない特許「ダブル風防ユニット」搭載で、風に強く野外でも強い加熱性能が得られるベストセラー商品です。「タフまる CB-ODX-1(ブラック)」は税込7,480 円
URL:https://amzn.to/3KwM38l [amazon.co.jp]
・カセットガス:イワタニ(Iwatani)使用期限7年
カセットガスの使用期限は「7年以内(40℃以下)」です。PL法などの補償がありますので、必ず、お使いのカセットコンロが推奨するガスを揃えましょう。基本的に同じメーカーの物であれば良いと思います。「イワタニ カセットガス 専用ボックス入り 12本組 CB-250-OR-12BOX」は税込2,949 円
URL:https://amzn.to/3tU75I8 [amazon.co.jp]
―――さて、
アンケートは引き続き回答を募集しております。
皆様のご協力をお願いいたします。
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