『 これはただの公衆衛生上の危機ではなく、あらゆる分野に影響を及ぼす危機なのです。だから、全ての分野、あらゆる個人が共にこの戦いに関わらなければなりません。 』
‘ This is not just a public health crisis, it is a crisis that will touch every sector – so every sector and every individual must be involved in the fight. ’
テドロス・アダノム(1965~ / エチオピアの政治家・学者 WHO事務局長(第8代))
格言は「パンデミック宣言」を発した2020年3月11日(日本時間12日)のCOVID-19メディアブリーフィング開会挨拶より。
曰く―――。
パンデミックについて、はっきりと何度も声を大にして言い続けても足りることはないのですが、つまり、すべての国が、今のパンデミックの行方を変えることができるということです。
We cannot say this loudly enough, or clearly enough, or often enough: all countries can still change the course of this pandemic.
各国が、感染を発見し、検査し、治療、隔離、追跡するために動員さえできれば、新型コロナウイルスの症例が少ない国であっても、クラスター化による市中感染(地域のコミュニティーでの感染)の防止ができるのです。
If countries detect, test, treat, isolate, trace, and mobilize their people in the response, those with a handful of cases can prevent those cases becoming clusters, and those clusters becoming community transmission.
市中感染がすでに起きている国や大規模なクラスターが生じている国でさえも、このウイルスの流行から形勢を逆転させることもできるのです。
Even those countries with community transmission or large clusters can turn the tide on this virus.
すでに、いくつかの国では、このウイルスを抑制し制御できることが実証されています。
Several countries have demonstrated that this virus can be suppressed and controlled.
新型コロナウイルスの大規模なクラスターや市中感染の問題に取り組む多くの国の課題は、彼ら(中国など抑制・制御できている国)と同じように「できるか」ではなく、それを行う「意思があるかどうか」なのです。
The challenge for many countries who are now dealing with large clusters or community transmission is not whether they can do the same – it’s whether they will.
能力の不足に苦しんでいる国もあれば、
Some countries are struggling with a lack of capacity.
資源不足に悩んでいる国もある。
Some countries are struggling with a lack of resources.
そして、意思決定できずにいる国もあります。
Some countries are struggling with a lack of resolve.
私たちは、イラン、イタリア、韓国で、ウイルスの拡大を遅らせ、エピデミックを抑制する措置がとられていることに感謝しています。
We are grateful for the measures being taken in Iran, Italy and the Republic of Korea to slow the virus and control their epidemics.
中国と同じように、これらの措置が、社会経済に大きな犠牲を強いることを私たちは知っています。
We know that these measures are taking a heavy toll on societies and economies, just as they did in China.
どの国であろうと、公衆衛生の保護、社会経済の混乱の最小化、そして人権の尊重との間でバランスを取らなければなりません。
All countries must strike a fine balance between protecting health, minimizing economic and social disruption, and respecting human rights.
WHOの使命は公衆衛生にあります。我々はあらゆる分野にまたがる多くのパートナーたちと協力し、社会経済にもたらすパンデミックの影響の緩和に努めています。
WHO’s mandate is public health. But we’re working with many partners across all sectors to mitigate the social and economic consequences of this pandemic.
これはただの公衆衛生上の危機でありません。あらゆる分野に影響を及ぼす危機なのです。だからこそ、全ての分野とあらゆる個人が共にこの戦いに関わらなければなりません。
This is not just a public health crisis, it is a crisis that will touch every sector – so every sector and every individual must be involved in the fight.
当初から私は、各国において、感染を防ぎ、命を救い、影響を最小限に留めるための政府や社会一体の包括的なアプローチが必要であると申し上げてできました。
I have said from the beginning that countries must take a whole-of-government, whole-of-society approach, built around a comprehensive strategy to prevent infections, save lives and minimize impact.
4つの主な領域に分けてこれらをおさらいしましょう。
Let me summarize it in four key areas.
第一に、備え、体制を整えることです。
First, prepare and be ready.
第二に、感染を検知し、人々を守り、治療を施すことです。
Second, detect, protect and treat.
第三に、感染を抑制させ、
Third, reduce transmission.
第四に、手法を刷新し、学習することです。
Fourth, innovate and learn.
※全文はWHOサイトより
⇒ https://www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-covid-19—11-march-2020
テドロス・アダノム・ゲブレイェソス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)博士は、世界的なマラリア研究者として知られ、2017年に香港人マーガレット・チャン博士に代わり、第8代のWHO(世界保健機関)事務局長に選出されたエチオピア人。
2019年12月から中国武漢を中心に広がった新型コロナウイルスによる肺炎で、2020年3月11日に、「過去二週間で中国以外での感染者数は十三倍に増え国の数は三倍になった。今後、数日、数週間後には感染者数と死者数、そして感染が確認された国の数はさらに増えると予想する」との見通しを述べ「パンデミック(世界的大流行)」を表明し、翌12日には、各国が対応策を強化すれば「制御可能なパンデミック」だという見解を示した。
1965年3月3日、アフリカのエチオピア帝国(現エリトリア)エリトリア州アスマラに生まれ。地元のアスマラ大学で生物学を学んだ後、1986年に保険省に入省。後に英国ロンドン大学で免疫学の修士号を、2000年に英国ノッティンガム大学で博士号を取得。
エチオピア政府で2005年から2012年にかけて保健大臣、2012年から2016年まで外務大臣を務めた。保険大臣としてエチオピアにおける革新的な保健サービスを提供し国民の健康改革で大きな成功を収めた。何百万人ものエチオピア人の命を救ってきたとして、2012年に英国WIRED誌による「世界を変える50人」の一人にも選出された。2017年、WHO(世界保健機関)総会で第8代事務局長に選出された。
2020年、武漢から世界へと広がった新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、中国当局の初動の遅さを指摘する声が世界で高まる中、中国擁護の発言を続けたため、WHOが中国政府に忖度している可能性が指摘されテドロス事務局長への批判が高まり、辞任を要求する声も一部であがっている。
■「テドロス事務局長」「感染症」「医師」に関連する防災格言内の記事
尾身 茂(医師 名誉WHO西太平洋地域事務局長 自治医科大学名誉教授)(2020.03.02 防災格言)
マーガレット・チャン(第7代WHO事務局長)(2009.05.01 編集長コラム)
テドロス・アダノム(第8代WHO事務局長)(2020.03.16 防災格言)
李 文亮(中国・武漢市中心医院の眼科医 新型肺炎で最初に警告を発した医師)(2020.02.17 防災格言)
厚生労働省 2007(平成19)年 インフルエンザ総合対策標語(2009.10.26 防災格言)
CDC(米国疾病予防管理センター)感染対策ガイドライン(2013.12.30 防災格言)
ジュリー・ガーバーディング(米CDC長官 炭疽菌テロ事件担当・中国SARSウイルス担当者)(2009.04.27 防災格言)
ジュリー・ホール(WHO中国伝染病担当 中国鳥インフルエンザ(新型インフルエンザ・パンデミック)担当者)(2009.02.02 防災格言)
ガレノス(古代ローマ帝国の医者・哲学者)(2020.02.24 防災格言)
バルダッサーレ・ボナイウティ(フィレンツェの歴史家)(2020.02.10 防災格言)
ジョヴァンニ・ボッカチオ(フィレンツェの詩人・散文作家 「デカメロン」著者)(2010.11.15 防災格言)
日沼頼夫(ウイルス学者 京都大学名誉教授 塩野義製薬副社長)(2020.01.27 防災格言)
アルフレッド・W・クロスビー(アメリカの歴史学者)(2014.07.28 防災格言)
マクファーレン・バーネット(オーストラリアの免疫学者 ノーベル生理学・医学賞)(2020.02.03 防災格言)
川崎富作(小児科医 川崎病を発見)(2009.01.05 防災格言)
北里柴三郎(細菌学者 医学者)(2008.12.15 防災格言)
二木謙三 (内科医・細菌学者)(2016.11.14 防災格言)
竹田美文(医学者 国立感染症研究所長)(2009.05.04 防災格言)
岡部信彦(小児科医 国立感染症研究所感染症情報センター長)(2009.02.23 防災格言)
田尻稲次郎(政治家・経済学者 スペイン風邪当時の東京市長 専修大学創始者)(2008.12.22 防災格言)