『 身 、心 の苦 しみを知 れれば、苦 しむ時 は休 めつ、まめなれば、使 ふ。いかにいはんや、常 に歩 き、常 に働 くは、養性 なるべし。 』
鴨長明(1155~1216 / 平安時代末期の歌人・随筆家 代表作『方丈記』)
口語訳『 身体は、心がその疲労の程度を把握しているので、疲れたときは休ませ、元気なときは働かせる。言うまでもなく、こまめに歩き、こまめに体を動かすのは健康の増進にもいいはずだ。』
曰く―――。
身 、心 の苦 しみを知 れれば、苦 しむ時 は休 めつ、まめなれば、使 ふ。使 ふとても、たびたび過 ぐさず。もの憂 しとても、心 を動 かすことなし。
いかにいはんや、常 に歩 き、常 に働 くは、養性 なるべし。なんぞ、いたづらに休 み居 らん。人 を悩 ます、罪業 なり。いかが、他 の力 を借 るべき。口語訳: 身体は、心がその疲労の程度を把握しているので、疲れたときは休ませ、元気なときは働かせる。働かせるといっても、度を過ごすことはない。身体がだるくて怠けても、いらいらする必要はない。心が体を管理しているからだ。
言うまでもなく、こまめに歩き、こまめに体を動かすのは健康の増進にもいいはずだ。どうしてだらだらと体を動かさないでいいことがあろう。体は動かすに限る。しかも、使用人を雇って苦労を押しつける のは、罪作りの行為にほかならない。どうして他人の力を借りていいことがあろう。何事も自分でするに限る。
(訳文:武田友宏編「方丈記(全)」(角川ソフィア文庫 平成19年))
方丈記が書かれた時代は、源平の合戦の頃、武家社会へと価値観が大きく変わり、天変地異が次々と起こる不安な時代であった。
京都の名門「下鴨神社」の神官の子として将来を約束された鴨長明は、ついにはその座に就くことなく山里の小さな庵(方丈庵)に隠棲し、この世の無常を綴った。
方丈記は、鴨長明が58歳のときの随筆で、若いころに京都で体験した大火、辻風、福原遷都、飢饉、地震という五つの災厄を「世の不思議」として描いた災害文学として知られる。
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