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川島雄三（1918～1963 / 映画監督）が敗戦間もない頃、贅沢品である舶来の日用品を買い求めた際に述べた名言 [今週の防災格言625]

time 2019/12/16

『ゼイタクはステキです！』

川島雄三（1918～1963 / 映画監督代表作「幕末太陽傳（1957年）」）

格言は山本若菜著「松竹大船撮影所前松尾食堂」(中央公論新社 2000年)より。

かつて松竹大船撮影所前（神奈川県鎌倉市）にあった「松尾食堂」。
昭和10（1935）年、松竹大船撮影所が全盛期の頃、大部屋女優だった松尾千鶴が開いた高級洋食店で、木下惠介や渋谷実、川島雄三ら名だたる監督のいきつけの店だったが、昭和48（1973）年に閉店した。
松尾食堂の主人だった山本若菜は、監督や俳優らとの思い出をエッセイに綴った。

戦争が激化の一途をたどり物資不足が本格化してきた昭和15（1940）年8月、政府は七・七禁令（奢侈品等製造販売制限規則）を発令して国民に我慢を強いた。帝都には「ぜいたくは敵だ！」のスローガンが掲げられた。

敗戦から間もない頃、松竹大船撮影所の近くには、進駐軍物資（食料品、高級化粧品など）を売りに来た者たちがいた。
しかし、物資の乏しいなかで、外国製の化粧品や石鹸など贅沢品は、なかなか手がでる品々ではなかった。
そんな折、川島雄三は、何のためらいもなく現金で３個入りのフランス石鹸を購入したという。
「贅沢よ」と山本若菜（松尾食堂主人）がいうと、毅然として「贅沢は素敵です！」と川島が答えたという。

川島雄三（かわしまゆうぞう）は、女優・若尾文子の代表作「女は二度生まれる」「雁の寺」「しとやかな獣」などの作品で知られる映画監督。フランキー堺主演の「幕末太陽傳」など、後に「重喜劇」と呼ばれる作風を確立させ、松竹、日活、東宝へと移籍し生涯に51本の作品を撮った人物。

大正7（1918）年2月4日、青森県下北郡の江戸時代から続く商家の七人兄姉妹の三男として生まれる。5歳のとき実母、10歳で長姉、大学生のときに次姉を病気で亡くす。野辺地中学（旧制）を経て、明治大学専門部文芸科に入学し映画研究部に在籍した。大学卒業後に松竹大船撮影所に入社。小津安二郎、野村弘将、木下惠介らの助監督を経て、昭和19（1944）年の「還って来た男」で初監督。
大船の松尾食堂に居候し、行きつけの都内の宿を転々とする生活を続けたが、亡くなった実母似の銀座の小料理屋の中村八重司と恋仲になり日活アパートで同棲する。生来体の弱かった雄三は健康には気を使い、ありとあらゆる薬を常飲する一方で、スタッフらと毎夜飲み明かしては深酒し、給料のほとんどを酒と薬とファッションに浪費した。昭和38（1963）年6月11日、芝の日活アパートの自室で急死。享年45。

川島雄三監督とフランキー堺（幕末太陽傳・1957年）by wikipedia