『 災害は深夜に起こりやすく、人間活動の弱点を突いてくるから始末が悪い。 』
宮澤清治(1923~2011 / 気象学者・気象解説者 気象庁天気相談所長)
格言は著書『近・現代 日本気象災害史(1999年 イカロス出版)』あとがきより。
曰く―――。
だれしも悪いことは、いつまでも覚えておきたくない。しかし、災害体験だけは別である。子や孫に正しく伝えた災害体験、災害の伝承が防災に役立ったという例は、枚挙にいとまがない。
大災害に遭った人の最大の願いは「二度と再び大災害が起きないで欲しい」ということであろう。ところが自然災害は意地が悪い。「一度あったことが二度、三度とある」。一方で、災害は深夜に起こりやすく、人間活動の弱点を突いてくるから始末が悪い。
「自分の所だけは大丈夫だ」と勝手に思い始めても困る。これは、だれにもある「正常化の偏見」と呼ばれる災害時の困った心理である。
進歩したといっても気象予報の技術は完璧ではない。したがって、災害の予知も万能ではない。予知の限界を知りながら、異常に備えることが肝心である。それには昔からの災害事例を学び、教訓をくみ取ることも必要である。
… … …
宮沢清治(みやざわ せいじ)は、NHKの気象キャスターや気象庁天気相談所長を務めた人物。1923(大正12)年、長野市生まれ。理学博士。技術士(応用理学部門)。
特に1983(昭和58)年から20 10(平成22)年6月まで、NHKの「気象情報」の解説者としてテレビ・ラジオに出演、「お天気博士」としてお茶の間で親しまれた。
1942(昭和17)年、気象技術官養成所(現気象大学校)卒。長野地方気象台予報官を経て、1957(昭和32)年8月から1964(昭和39)年3月まで新潟地方気象台予報官として、当時の気象台長・中田良雄(1905〜1985 / 梅雨谷線(現在の梅雨前線)という言葉を日本で最初に導入した気象学者)博士に師事。その後、福岡管区気象台予報課長を歴任。1972(昭和47)年、気象庁天気相談所長。1980(昭和55)年、広島地方気象台長。1982(昭和57)年、神戸海洋気象台長。1983(昭和58)年、NHKテレビ・ラジオの「気象情報」の解説者。1993(平成5)年、日本気象学会評議員。豪雪機構の解明で運輸大臣表彰(1968年)、気象知識の普及の功績により岡田賞を受賞(1996年)。
2011(平成23)年7月18日、癌性胸膜炎のため埼玉県川口市で死去。88歳。
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