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佐野常民が『救護員十訓』に遺した名言(初代日本赤十字社社長)[今週の防災格言270]

time 2013/02/11

佐野常民が『救護員十訓』に遺した名言(初代日本赤十字社社長)[今週の防災格言270]


『 勇敢にして沈着なるべきこと(勇敢ニシテ沈着ナルヘキコト)
  忍耐にして寛裕かんゆうなるべきこと(忍耐ニシテ寛裕ナルヘキコト) 』

佐野常民(1823〜1902 / 政治家 初代日本赤十字社社長 伯爵)

寛裕かんゆうとは、心が広くゆったりしている様の意味。

格言は「救護員十訓」より。
明治18(1885)年に慈恵病院でアメリカ人のリード女史(M. E. Reade / 生没不詳)の指導で幕を開けた日本における近代的看護婦養成事業。明治23(1890)年には日本赤十字社(日本赤十字社病院)でも養成が開始されることになった。
この「救護員十訓」は『日本赤十字社看護学教程(明治29年刊)』の序論の中で佐野常民が十ヶ条にまとめた訓戒で、後に若干の字句修正が行われ、現在でも救護員十訓として日本赤十字社の看護婦教育に用いられているもの。

佐野常民(さの つねたみ)は、佐賀市(肥前国佐賀郡早津江村)出身の政治家。佐賀七賢人の一人。日本赤十字社や日本美術協会の創設者としても知られる。大蔵卿、元老院議長、枢密顧問官、農商務大臣(第1次松方内閣)などを歴任。
佐賀藩医の子として、緒方洪庵の敵塾(大阪)、華岡青洲の春林軒塾(紀伊)、伊東玄朴の象先堂塾(江戸)で学ぶ。1855(安政2)年、帰郷すると幕府の長崎海軍伝習所第一期生となり、佐賀藩主(鍋島直正)を説得し海軍所を創設させ、自ら責任者となり飛雲丸船将、三重津海軍所監督を歴任した。
1867(慶応3)年、欧州視察のため渡欧、パリ万博では国際赤十字活動を見学した。帰国後は兵部少丞として大村益次郎と日本海軍創設を建策するも間もなく罷免される。1871(明治4)年、工部大丞・初代燈台頭に就任し洋式燈台建設に従事。1872(明治5)年、博覧会御用掛となり日本初の博覧会を湯島聖堂で開催。翌年、ウィーン万国博覧会事務副総裁としてウィーン万博を成功させた。1877(明治10)年「西南の役」が発生すると、同じ元老院議官の大給恒(おぎゅう ゆずる)らと「敵味方の区別なく負傷者を救護する」日本赤十字社の前身「博愛社」を創立。大日本私立衛生会会頭に就任し1886(明治19)年に博愛社病院を開設。1887(明治20)年、博愛社を日本赤十字社と改称し初代社長に就任。国際赤十字に加盟した日本赤十字社は、日清戦争(1894年)や義和団の乱(1900年)など国際舞台で活躍することとなる。
1902(明治35)年12月7日、東京の自宅で死去。享年80歳。

曰く―――。

凡(およ)そ看護者は慈仁恵愛(じじんけいあい)の心を基(もと)となし患者の不幸を憐(あわれ)み 苟(いやし)くも病者に益(えき)ある所は、細大(さいだい)となく躬(み)を忘れて之を行い、懇篤深切(こんとくしんせつ)なること猶(な)お慈母の愛兒(児)に於けるが如くなる可(べ)し。

仮令(けりょう=例え)終日通夜看護に従事して疲労し、不快汚穢(ふかいおわい)の事を執り、或(あるい)は天災地変に際して百難(ひゃくなん)交起(おこ)るも益(ますます)勇気を振(ふるっ)て能(よ)く之に堪えて屈することなく、己(おのれ)が任務を盡(つく)し、常に医員及び他の長者に対しては真に服従の意を以て之に接し、其(その)命令示導(めいれいしどう)を遵守して聊(いささ)かも戻ることなく、又患者に対しては言語動作(げんごどうさ)を温和にして常に之を慰撫(いぶ)して安心慰楽(あんしんいらく)を得(え)せしめ 且(か)つ注意周密(ちゅういしゅうみつ)にして毫(すこし)も等閑(なおざり)に看過(かんか)することなく作業は極めて敏活(びんかつ)にして随時(ずいじ)事に従って聊(いささ)かたりとも怠慢粗漏(たいまんそろう)に流れざることを勉(つと)むるは看護者たる者に於て最大一の要務なり。

〜付記〜

救護員十訓

一、博愛ニシテ懇篤親切ナルヘキコト

二、誠実勤勉ニシテ和協ニ力ムヘキコト

三、忍耐ニシテ寛裕かんゆうナルヘキコト

四、志操堅実しそうけんじつニシテ克己自制こっきじせいニ力ムヘキコト

五、恭謙ニシテ自重ナルヘキコト

六、謹慎ニシテ紀律ヲ重ムスヘキコト

七、勇敢ニシテ沈着ナルヘキコト

八、敏活ニシテ周密ナルヘキコト

九、質素ニシテ廉潔ナルヘキコト

十、温和ニシテ容儀ヲ整フヘキコト

佐野常民

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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