『 夏月の涼風、冬天の淵風。
一種の気なるも、嗔喜同じからず。
(夏月涼風、冬天淵風。一種之氣、嗔喜不同。) 』
空海(AD774〜AD835 / 平安時代の僧侶 真言宗開祖 弘法大師)
格言は『性霊集(835年頃)』第1巻『徒懐玉(徒(いたずら)に玉を懐(いだ)く)』より。
口語訳 『 夏の涼風や冬の淵風も同じ風であるのに、喜びや不快というように人によって受け取り方は異なる。』
弘法大師(こうぼうだいし)空海(くうかい)は平安前期の讃岐国多度郡屏風浦(現・香川県善通寺市)の郡司である佐伯氏の出身。804(延暦23)年、遣唐使として31歳で唐へと渡り、長安・青龍寺の密教僧・恵果(けいか / AD746〜AD806)に師事、2年後の806年に多くの仏典、仏具、仏画を持って帰朝。帰国後に高野山に密教修行の場を作り金剛峰寺を開創。能書家として知られ、嵯峨天皇・橘逸勢(たちばなのはやなり)と共に三筆の一人に挙げられる。仏教のみならず、書芸、画芸、文芸のほか、教育、経済や土木の分野にまで多大な業績を残し、835(承和2)年、62歳で高野山で入定(にゅうじょう)した。
格言とした「夏月涼風、冬天淵風〜」の部分は、空海の美しい雑体詩の一節として各処で紹介される名文ですが、実は、防災格言としては、この前後の文章もなかなか興味深く読めます。以下に紹介します。
曰く―――
『 輪王(りんおう)の妙薬は鄙(いやし)んずれば毒と爲(な)り、法帝(ほってい)の醍醐(だいご)は謗(ほう)ずれば災(さい)を作(な)す。
(輪王妙薬鄙爲毒。法帝醍醐謗作災。)
店長の簡訳:秘法を妄伝すれば、かえって災厄があるもの。
夏月の涼風、冬天の淵風、一種の氣なれども、嗔喜同じからず。
(夏月涼風、冬天淵風。一種之氣、嗔喜不同。)
蘭肴美膳(らんこうびぜん)味(あじわい)変(へん)ずること無(なけ)れども、病(やまい)の口(くち)飢(うえ)の舌(した)甜苦(てんく)別(こと)なり。西施(せいし)が美笑(びしょう)は人(ひと)愛(あい)して死(し)すれども、魚鳥(ぎょちょう)は驚絶(きょうぜつ)して都(すべ)て悦(よろこ)びず。
(蘭肴美膳味無変。病口飢舌甜苦別。西施美笑人愛死。魚鳥驚絶都不悦。) 』
店長の簡訳:立派で美味しい食事でも病人なら苦くて不味いと思い、飢えた人ならば甘く美味しく感じる。しかし味そのものに変わりはない。また人が好む美女の笑顔は人を死ぬほど焦がれさすが、魚や鳥ならば笑顔を見て驚いて逃げ去るだろう。
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