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幸田文が富士山の大沢崩れの時に遺した格言(作家)[今週の防災格言387]

time 2015/05/11

幸田文が富士山の大沢崩れの時に遺した格言(作家)[今週の防災格言387]


『 崩れと水はつきものだという。
ことに豪雨となればもう気はゆるせない。 』

幸田 文(1904〜1990 / 随筆家・小説家 代表作『流れる』など)

格言は『崩れ(講談社 1991年)』より。現在も進行する富士山の崩壊地である大沢川の大規模な侵食谷「大沢崩れ」について記したもの。

曰く―――。

《 大沢はふだんは涸沢だが、雨の時は崩れの頭部から川になる。大沢川と名がついており、末は潤井川(うるいがわ)とよばれて、田子の浦に入る。崩れを頭に頂いて流れ出る川は、暴れ川になる宿命を負っている。傾斜度の強い大沢川もおとなしくはない。ことに雨量が多ければ、ふだんの崩れで流路の途中に堆積している、岩石土砂を押し流し、水プラス土石の強大な力を発揮して、触れるところすべてを薙ぎ、削り、我がままいっぱいな奔流となる。》

72歳のとき、安倍川上流(静岡県静岡市葵区)にある崖の崩落跡「大谷崩(おおやくずれ)」を見たことを契機に、姫川、松之山、大谷、大沢、鳶など日本各地の山河の崩壊地を訪ねたルポルタージュ『崩れ』を1976(昭和51)年11月から1977(昭和52)年12月まで婦人之友で連載。
自身も、子供時代に隅田川畔に住んでいたので、毎秋の洪水騒ぎを知っており、また、関東大震災も体験した。十代の学生時代には、浅間山の崖から仰向けにすべり落ちた経験をもち、27歳の頃、東京芝区伊皿子の自宅で降雨による土砂崩れがあり、土砂が家の中に押し入り家が壊されたりした体験が、地すべりなど崩壊地、火山噴火や土石流など自然現象のもたらす「崩れ」への興味の原動力となったと述懐している。

幸田文(こうだ あや)は、東京向島生れの作家。父は明治の文豪幸田露伴。
6歳で母を失い、8歳で姉を失う。弟も1926(大正15)年に夭逝。東京麹町の女子学院に学びながら、父に家事や身辺のきびしい躾を受けた。1928(昭和3)年、清酒問屋に嫁ぐ。10年間の結婚生活の後、長女玉(後の随筆家・青木玉 / あおきたま 1929〜 )を連れて離婚し、幸田家に戻る。1947(昭和22)年、80歳の露伴を記念した雑誌「藝林間歩」の《露伴先生記念号》に『雑記』を書く。露伴没後、露伴の思い出や看取りの記を中心にした『父―その死―』『こんなこと』、幼少時の思い出を書いた『みそっかす』など随筆集を出版し注目された。1955(昭和30)年の長編小説『流れる』で第3回新潮社文学賞受賞、日本芸術院賞を受賞。短編集『黒い裾』で第7回読売文学賞、『闘』で第12回女流文学賞。1990(平成2)年10月31日心不全のため死去、86歳。

幸田文 女史:富山県常願寺川にて。1976年10月

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<防災格言編集主幹 平井 拝>

 

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