昨日の編集長コラム「海外情報(シンガポール)から食品汚染と風評被害を考える」の追伸です。
以下がシンガポール政府の日本産食品に関する禁輸の変遷である。
3月23日(火):福島、茨城、栃木、群馬 合計4県
(理由:日本政府の高濃度放射線汚染の野菜、生乳の発表を受け)
3月25日(金):福島、茨城、栃木、群馬、千葉、愛媛 合計6県
(理由:シンガポール農産物獣医庁の検査で、千葉・愛媛の三つ葉、菜の花、オオバからヨウ素131、セシウム134・137を微量検出)
3月26日(土):福島、茨城、栃木、群馬、千葉、愛媛、東京、神奈川、埼玉 合計9都県
(理由:3/25-26に輸入した東京産のネギからヨウ素131 = 226 Bq/kg、神奈川産のキャベツからヨウ素131 = 936 Bq/kg , セシウム134 = 242 Bq/kg , セシウム137 = 474 Bq/kgを検出)
3月31日(木):福島、茨城、栃木、群馬、千葉、愛媛、東京、神奈川、埼玉、静岡 合計10都県
(理由:3/30に輸入した静岡県産の小松菜からヨウ素131 = 648Bq/kg , セシウム134 = 155Bq/kg , セシウム137 = 187Bq/kg を検出)
4月4日(月):福島、茨城、栃木、群馬、千葉、愛媛、東京、神奈川、埼玉、静岡、兵庫 合計11都県
(理由:4/2に輸入した兵庫県産のキャベツからヨウ素131,セシウム134を微量検出)
ここに関連する2つの日本側の新聞ソースをはめ込んでみる。
3月29日(火):輸入停止野菜、産地誤る? 放射性物質検出めぐり−愛媛県(2011.3.29 産経新聞)
4月7日(木):輸入停止問題、キャベツではなく白菜=他県産とも取り違え−兵庫県(2011.4.7 時事ドットコム)
3/29の愛媛県のケース、
シンガポール政府は、3月25日に愛媛県産オオバから放射性物質が微量に検出されたため愛媛県産野菜全ての禁輸を発表した。
この時にシンガポールで検査に引っかかった「愛媛県産オオバ」は、実は、「福島県産オオバ」だった。
これは、何らかの手違いにより、本当は「福島県産(Fukushima)」と書かなければいけないところ、シンガポール政府へ申請する輸出用書類には英語で「愛媛県産(Ehime)」と記載されてしまった可能性が高い、という。
愛媛県側は「事実誤認であれば愛媛県産野菜の輸入停止措置の解除を求めたい」としている。
4/7の兵庫県のケース、
4月4日にシンガポール政府から新たに禁輸指定された兵庫県産農産物は、実は「兵庫県産キャベツ」ではなく「他県産の白菜」だった。
これは、日本の輸出業者が誤って「野菜の品目」と「産地」を取り違えて輸出してしまった野菜である。
そのため「兵庫県産の野菜」には放射性物質汚染の心配は全くない、という趣旨の記事である。
兵庫県側は「事実誤認であれば兵庫県産野菜の輸入停止措置の解除を求めたい」としている。
この2つの報道の問題の争点は、
事前にシンガポール政府が輸入禁止を発表した産地(福島県産など)の野菜が、書類上だけ異なる産地名となってシンガポールに輸入されそうになったことである。
シンガポール政府による、日本からの輸入食品の検疫が強化されていたためにたまたま発覚した。
そして、発覚と同時に、申請書類に書かれた産地からの全ての野菜が新たに禁輸措置となったのである。
そして、もし、日本の輸出業者が、故意に書類に虚偽の記載をしたのであれば、それは「産地偽装」ということになる。
更に、4月4日以前にシンガポール政府が輸入停止を公表していた「福島、茨城、栃木、群馬、千葉、愛媛、東京、神奈川、埼玉、静岡」のいずれかの産地のものであったのなら、悪質な産地偽装ということになりかねない。
記事では、兵庫県の方は、取り違えた(シンガポール政府に申請する輸出用書類に誤って記載)他県産の白菜が、どこの県の白菜だったのか明らかにされていない。
そして、2つの記事ともに、どこの県・地域の会社・輸出業者が誤って書類を記載したのか書かれていない。
もし取り違いがあったのなら、愛媛県や兵庫県の農家は、本当に気の毒である。
愛媛県や兵庫県(の農家)には、まったく落ち度がないからだ。
どこか他県の業者が、勝手にやったかもしれないことで、
まるで知らぬ間に犯人扱いされてしまったというものだ。
これこそ本当の風評被害そのものじゃなかろうか。
シンガポールの担当官も馬鹿ではないのだ。
担当官は産地偽装の可能性もあったと当然考えているはずである。
(日本の農水省も業者を調査中らしいが・・・)
通常、どこの国も、
国民の健康と安全と守るための国の検疫(防疫措置)というものは
「疑わしい場合は全て輸入しない」
という方針で行われる。
しかも法(基準)にしたがって、極めて無機質に事務的に処理される。
それが故意で出荷されたものであっても、なくても、海外の国民保護防疫にとっては何ら関係ない。
「実は誤表記でした」程度の理由では、一度決定した禁止令を国はなかなか取り下げることはない。
特に、福島原発問題が収束していない状況では、汚染は現在進行形として世界各国はみている。
だからなお更に、このような業者のスタンドプレーが生んだ結果の根は深い。
許し難い。
※追記(2011.4.15)
「静岡県産」と業者が誤記載 コマツナ輸入停止問題(2011.4.14 産経新聞)
という続報があった。
この4/14の静岡県のケースは、
シンガポール政府が3月30日に輸入した静岡県産コマツナから基準値を上回る放射性物質を検出し、静岡県産の野菜と果物の輸入停止を3月31日に発表した問題。
シンガポールからの輸入停止措置を受け、静岡県は4月13日に「このコマツナを取り扱った東京・築地市場の青果卸売業者が他産地のコマツナを誤って静岡県産と輸出書類に記載していた」と発表。卸売業者は「従業員の過失」と誤記載を認めたという。ただし、他産地がどこかは不明。
静岡県の独自検査では、静岡県産コマツナからは基準値を超える放射性物質は検出されなかったため、静岡県では農林水産省を通じ輸入停止解除をシンガポール政府に要請するという。
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海外情報(シンガポール)から食品汚染と風評被害を考える (2011.04.07 編集長コラム)
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