防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

マンネリズムと先入観が事故を呼ぶ(那須温泉ファミリースキー場雪崩事故 2017年)

time 2023/03/27

マンネリズムと先入観が事故を呼ぶ(那須温泉ファミリースキー場雪崩事故 2017年)

「天災は忘れた頃来る」と寺田寅彦は述べましたが、誰でも知っているように、自然災害や事故は、ある日突然に襲ってくるものです。

その対策としての「防災」は、何事もない平時から“備える”ことを意味しますので、いつ起こるとも知れない(もしかして起こらないかもしれない)という突発現象に対する備えを継続するためには、それなりの心構えが必要なのかもしれません。

今からちょうど6年前の2017年(平成29年)3月27日。

栃木県那須町にある那須温泉ファミリースキー場で、栃木県高等学校体育連盟主催の「春山安全登山講習会」に参加していた高校生7名と教員1人(計8人)が亡くなり40人が負傷する雪崩事故がありました。

この前日、宇都宮地方気象台からは「雪崩注意報」が栃木県那須地域に出されていましたが、主催者側の教員らは「雪の状態や過去の登山の経験から大丈夫と考えた」そうです。
(実施判断を下した教諭3名は後に業務上過失致死傷容疑で書類送検)

その後、栃木県が作成した事故報告書には、講師ら「個人の資質(雪崩リスクへの理解不足)」とともに、組織運営にかかわった関係者全員に、

「正常化の偏見(正常性バイアス)とマンネリズム(形骸化)」

という問題があったことが、そもそもの「背景的な要因」だった、と報告されました。

正常性バイアス(normalcy bias)とは、社会心理学の用語で、多少の異常事態が起こっても、それを正常の範囲内としてとらえ、心を平静に保とうとする人間の心の働きのことです。

バイアスとは「先入観」という意味になります。

人は、心理学的に、自分に危険が迫っていても今まで無事だったという経験などの先入観から楽観視してしまい、危険を過小評価してしまうのだそうです。

栃木県高体連で高校生への春山安全登山講習会を始めた当初にはできていた安全配慮は、何らの事故もなく毎年無事つつがなく講習会を終えるうちに伝統行事となり、しだいに組織運営はマンネリ化していきました。

いつしか組織全体には弛緩した雰囲気が蔓延し、安全への配慮をするべき運営スタッフそれぞれの仕事も淡白となり、それがひいてはスタッフ個人個人のヒューマンエラー(安全意識や配慮の欠如、判断ミス、チェックミスなど)につながりました。

事故前日からの気象台による雪崩警報も、組織スタッフの誰も気にしていないからたぶん大丈夫なんだろう、と考えてしまったのかもしれません。

事故報告書には、今回の事故の最大の要因として「主催者の計画全体のマネジメント問題と、危機管理意識の欠如」も指摘されていました。

組織で災害や事故などの危機に備えることを危機管理(リククマネジメント)などとも呼びますが、過去一度も事故が起きたことがない伝統行事の安全な日常はマンネリ(形骸化)を招き、本来そこにあった危険(災害リスク)を過小評価してしまうことになり、そして、忘れた頃にやってきた雪崩は、結果として参加者の多くの命を奪っていきました。

これは、大人数が係わる組織体が陥りがちな事故事例ではありますが、考え方としては個人にも当てはまるでしょう。

継続は力となります。
でも惰性で続けるのではなく、何のために対策をしているのかといった本分を忘れずにおくことも大切ではないかと思います。




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