『 助かるものは、助かるように助かるように往き、
死ぬるものは、死ぬるように死ぬるように往く、
死生命あり、偶然にあらずとは、正しく此れである。 』
三浦梧楼(1847〜1926 / 武士・政治家 陸軍中将 子爵 号は観樹)
格言は著書『観樹将軍縦横談(1924年)』の「東京の大震災」より。
三浦自身も関東大震災では東京の自宅で罹災。
震災のあった時期には毎年、熱海で過ごす予定だったが、この年は、たまたま行かなかったため家族と離れ離れにならずにすんだ、という。息子も、震災当日に自宅から千葉に行く用事があったものの、朝の汽車に乗らなかったため難を逃れた。三浦は「家族、親戚から召使の一族まで、皆無事であったのは、実に大幸(たいこう)であった」と感想を述べている。
曰く―――。
《 いつもならこの時期熱海の家へと行くのが、行かなかった。熱海に行っていたら交通が絶えて、家族が心配しただろうが、行かなかったために家族が一所に居たために其の心配もなかった。息子も房州(千葉)に居たら死んでいたかもしれないし、朝の汽車に乗っていれば危険だったかもしれない、午餐に四階に居たら死ぬところであった。それが好い方へ好い方へと往って無事に助かった。家族から親戚から召使の一族まで、皆無事であったのは、実に大幸(たいこう)であった。
しかし、息子の妻の親戚である会社重役は、いつもは出ないのに、たまたまアノ日に会社に出た。自室の重役室は堅固であったが、面会人があったために応接室で話していた、また、いつもあの時刻には他所へ食事に行くのに、面会人があって行かなかったところが、あの地震でピシャと遣られた、出ないでも好いものが出た、居るべき所に居ない、また往くべき時に、往くべき所に往かない、ソレで遣られた。
助かるものは、助かる方へ方へと行(ゆ)くが、死ぬるものは、又死ぬる方へ方へと行(ゆ)く、実に不思議なものだ 》
萩藩士(山口県萩市)の陪臣の子として生まれた三浦梧楼(みうら ごろう / 三浦観樹)子爵は、明倫館に学んだ後、高杉晋作の奇兵隊に入隊、長州藩の尊攘運動に従軍。維新後は兵部省に出仕し、西南戦争(1877年)では第三旅団司令長官として勇名をはせた。1878年、中将に昇進し西部監軍部長となるが、藩閥政治に反対する谷干城、鳥尾小弥太、曾我祐準らとともに反主流派の中心人物として山県有朋や大山巌らと対立し左遷される。在朝鮮国特命全権公使に就任した1895年に閔妃暗殺(乙未事変)が発生し、朝鮮が親露になることに危機を持っていた三浦も暗殺事件の嫌疑がかけられ広島で投獄されるが、軍法会議で無罪放免となる。1910年、枢密顧問官、宮中顧問官などを歴任。大正期には「藩閥打倒」を唱え、政界の黒幕として活動した。
1926(大正15)年1月28日、満79歳没。従一位勲一等旭日桐花大綬章受章。
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