思則有備(しそくゆうび)思えばすなわち備えあり

防災意識を育てるWEBマガジン

久田嘉章教授講演「災害時、逃げる必要のない建物とまちづくり」第1部

time 2018/04/27

久田嘉章教授講演「災害時、逃げる必要のない建物とまちづくり」第1部

工学院大学総合研究所・都市減災研究所センター長・教授の久田嘉章氏を講師に迎えたSEISHOP×遊学堂セミナー「災害時、逃げる必要のない建物とまちづくり」が2018年2月6日、日本生命丸の内ガーデンタワーで行われました。4部に分けてその内容をお伝えします。
第1部は地震と震災の基礎や、長周期地震動について学びます。

約10分揺れる長周期地震動

「マグニチュード」と「震度」を混同する方もなかにはいらっしゃると思います。
「マグニチュード」とは震源の地震の大きさです。中程度がマグニチュード6、大地震だとマグニチュード7程度、巨大地震だとマグニチュード8程度といわれています。東北地方太平洋沖地震はマグニチュード9.0で超巨大地震です。マグニチュード6くらいから様々な問題が起き始めるとイメージしていただければいいのかなと思います。
一方、「震度」は揺れや被害の程度です。震度4で揺れにびっくりして、震度5で被害が出始める。とくに室内での被害が出始めるのが震度5。震度6で建物の被害が出始めます。震度7が最大なので、甚大な被害が出るというイメージです。大体震度5くらいから被害が出始め、電車が止まるというのは頭に入れておくといいと思います。
長周期地震動とか長周期・長時間地震動といわれる、ゆっくり長く大きく揺れる地震について解説します。普通の建物は何ともないのですけれども、超高層ビルはだんだん揺れが大きくなってきて大きく揺れるというもので、高層ビルにいる方は注意していただきたいと思います。基本的には、地震の波は、はじめはがたがたと縦に揺れて、その後にゆさゆさと感じてくるのですけれども、その後に表面波というゆっくりした波が地表面にくることがあるのです。

長周期・長時間地震動の画像

長周期地震動は基本的には浅い震源で巨大地震の時に起こります。海溝型巨大地震が起きると必ずやってきます。特に関東平野のような、柔らかい堆積層があるところではどんどん大きくなって約10分と継続時間が長くなります。巨大地震が起きた場合、高層ビルの中では10分ぐらい揺れ続けるというイメージを持っておいていただくといいと思います。
「地震」と「震災」は同じように思われるかもしれませんが、違います。地震というのは2つの定義がありまして、一般的には地面が自然現象で揺れることを地震というのですけれども、われわれの分野だと地震というのは発生場所のことを指していて、気象庁が命名します。震災というのは、その地震が起こったときに起きる被害のことで、大規模なものは大震災です。
例えば、地震でいう南関東地震は、震災でいうと関東大震災。地震でいう兵庫県南地震は、震災でいうと阪神淡路大震災。それから、2011年の東北の地震は、地震でいうと東北地方太平洋沖地震、震災でいうと東日本大震災です。震災はどちらかというとメディアが命名するのですけれども、地震は気象庁が場所で定義するというもので、同じようだけれどもまったく違うということは頭に入れておいていただきたいと思います。

巨大地震の仕組み

過去に実際起きた海溝型の巨大地震を見てみると、一見して太平洋側に多い。宮城県沖地震が起きると言われていたら、非常に大きな東北地方太平洋沖地震が起きました。
今、心配されているのは、南海トラフの巨大地震といわれているもので、東海地震、東南海地震、南海地震、あるいは最大級の地震を全部包含した、もっと大きい地震がもしかしたら起きるかもしれないということです。
それから、南関東地震も危惧されています。
一方、日本海側はどうなのかというと、日本海側もけっこう多く起きているということです。プレートの境界が新しくできつつあるといわれています。海の地震ですから、当然、津波もやってくるわけです。揺れも大きいし、津波もやってくるということで、日本の海岸にいたらどこでも津波と揺れは要注意ということになります。
内陸の活断層帯についてです。東京でいうと立川断層がありますが、日本のいたるところ必ずといっていいほど活断層があります。数百年から長くても数千年単位と、数千年から数万年くらいの単位とありますが、こちらは起きたら大変です。

日本列島でなぜ地震が起きるか。これはご存じの方もいるのではないかと思うのですけれども、プレートがぶつかり合う。大きく分けると、海のプレートと陸のプレートがぶつかり合う。それぞれ2枚ずつあります。日本列島で4枚のプレートがぶつかっているわけです。海のプレートで一番活発なのが太平洋プレートで、ハワイのほうから、ぐいぐい1年で10センチぐらい、日本海溝で沈み込んでいるということになります。それから、南側では、ちょっと小さいプレートなのですけれども、フィリピン海プレートが上がってきて、これで南海トラフのような海溝型の巨大地震が起きるということです。
それから、陸のプレートも最近は2枚あるといわれていまして、ちょうど糸静線というのが静岡から新潟にかけてと、さきほどのプレート境界があります。関東平野は、断面を切ってみると一番下に太平洋プレートがあって沈み込んで、その下からフィリピン海プレートが沈み込んで、北米プレートがある。

日本列島周辺のプレート構造と首都圏の断面の説明画像

よく首都直下地震といわれるのですけれども、これはまったくタイプが異なる、いろいろな地震があります。
一番怖いのは活断層。非常に浅いところに立川断層がある。これが動いたら大変です。今、心配されているのは、比較的浅いフィリピン海プレートに起因するものです。フィリピン海プレートの境界だったり、中だったりする。一般的に、国や内閣府や都が出している地震の被害想定というのは、ここに震源を想定しています。深さ20キロ、30キロの浅いところに想定するのが被害想定です。
最近地震が多いと思いませんか。あれはだいたい深さ50キロ、60キロ、70キロというところで起きている。一番活発な太平洋プレートに起因している地震ですが、正直なところここでマグニチュード7の地震が起こってもそんなに心配することはないです。なぜなら深いからなのです。深いところで起きる限りは首都直下地震があってもそんなには被害は出ないし、津波もありません。しかし浅いところで起きたら、これは被害が出ます。同じ首都直下でマグニチュード7と言われても全然違う。いろんな種類があるというのも頭に入れておいていただきたいと思います。

「良い地盤」と「悪い地盤」

次に気を付けなくてはいけないのは、地盤です。地盤が悪いと被害が大きいというのは聞いたことがあると思うのですけれども、いくつか種類があります。まずは関東平野そのものの地盤です。2000メートル、3000メートルの深さまで厚い堆積層がある。地質的に柔らかい地盤で、われわれの感覚だと「良い地盤」なのですけれども、周りのがちがちの岩盤に比べると柔らかい地盤です。
何が心配かというと、さきほど述べた長周期地震動です。関東平野の中に表面波が入ってくると、ものすごく長くゆっくりと大きくいつまでも揺れるという地震が起きます。残念ながら、東京の超高層建築はみんな揺れてしまうということになるわけです。
それから、われわれが一般に「悪い地盤」と言っているのは沖積層と呼ばれている地盤。下町の数十メートルのすごく柔らかい地盤というのは縄文時代から数千年かけて陸地になったといわれています。
5000年前は温度が高くて北極・南極の氷が溶けて、東京湾は数メートル、海水面が高かったようです。奥地まで東京湾の水が入り込んでいて、そのときに川から運ばれた砂や土が堆積して、その後、引いていったのですけれども、残されたのが沖積層。堆積層である洪積層に比べて、一番地質的に若い層というのが沖積層です。一般的に地震の被害が集中するのは沖積層の軟弱地盤と呼ばれているところです。よく下町と山の手台地では違うというのは、こういうことが理由だということです。
それから、ずっと時代が変わると、今度は人工的に地盤を埋め立てました。日比谷公園などは海だったといわれています。江戸幕府に開拓されて、ほとんど湿地帯で人が住めなかったところをどんどん江戸時代に埋め立てていったのです。1703年の元禄地震で揺れが大きかったのは、やはり埋め立てたところです。
現代に入って、埋め立て地はもっと前進しました。地盤の対策をきちんとやっていればいいのですけれども、やっていないと大きく揺れ、液状化の心配もあります。山の手台地に比べると、危険性はどうしても高いということになります。
普通、山側は地盤がいいはずなのですが、高度成長期以降は丘陵地にも被害が集中する。これは宅地を造っていくからならなのです。「○○ニュータウン」は、大体、宅地造成していますね。
言葉として覚えておいた方がいいのは、「切土」や「盛土」。山があって谷があると、山を切って谷を埋めて平坦化をします。元々は谷の地盤に盛土にしたために軟弱で、被害がここに集中しました。

宅地造成地と地震被害の説明画像

それからよくあるのが、ひな壇状に土地をつくって、ここを盛土にすると、雨が降った後に地震が起こると地滑りしてしまうという被害が出ます。もちろん対策をしっかりやって、しっかり締め固めて、擁壁にアンカーをして、水はけを良くしてあればいいのですけれども、そうではないと、特に高度成長のときにどんどん造っていったところは地震が来るたびに被害が起きます。
皆さん、お住まいのところの地盤がどんなところなのか、気を付けていただきたいと思います。
 

【その他の久田教授講演コラムはこちら】
久田嘉章教授講演「災害時、逃げる必要のない建物とまちづくり」第2部
久田嘉章教授講演「災害時、逃げる必要のない建物とまちづくり」第3部
久田嘉章教授講演「災害時、逃げる必要のない建物とまちづくり」第4部

【講師Profile】

久田嘉章教授
久田 嘉章(ひさだ よしあき)

工学院大学 総合研究所・都市減災研究センター長/建築学部まちづくり学科教授

1986年 早稲田大学院理工学研究科を修了、同大学助手。
1993年南カルフォルニア大学地球科学科助手
1995年より工学院大学建築学科の専任講師・助教授を経て現在に至る。
専門分野は、地震工学、地震防災。
著書に、『建築の振動―初歩から学ぶ建物の揺れ』(朝倉書店)、『逃げないですむ建物とまちをつくる─大都市を襲う地震等の自然災害とその対策─日本建築学会編』(技報堂出版)などがある。

久田研究室
http://kouzou.cc.kogakuin.ac.jp/newhp/

NHKそなえる防災 連載
http://www.nhk.or.jp/sonae/author/hisada.html

メルマガ登録バナー
E-mail
お名前
※メールアドレスと名前を入力し読者登録ボタンで購読

アーカイブ