『 噴火を100%予知することは今の科学ではできない。 』
岡田 弘(1943〜 / 地球物理学者 専門は火山学 北海道大学名誉教授)
格言は日本経済新聞(2008年1月27日 朝刊)日曜版記事より。
2007(平成19)年12月から始まった気象庁による「噴火警報」。それ以前の「火山情報」をよりわかりやすく改めたものだが、それまでの「臨時火山情報」や「緊急火山情報」では観測事実を客観的に知らせる内容にとどまり、「避難」など防災対応には踏み込まないのが慣例だった。そのため、有効に機能するのか、懸念の声が専門家から出ているという。
曰く―――。
《 噴火を100%予知することは今の科学ではできない。
地下のマグマの動きを知るための正確な理論モデルもないうえ、山ごとに特徴が異なり、予知は経験則によるしかない。
(2000年の)有珠山では噴火前に「緊急火山情報」が出たが、将来、噴火警報が導入されたときも確実に予測できるとは限らない。
気象庁は能力を持たないまま大きな責任を負ってしまった。
避難などの防災対応と一体の『警報』になったことで、先手の対応が困難になった。
気象庁は身軽に情報を出し、自治体の首長が責任をもって防災対応を判断するのが望ましい。 》
岡田弘(おかだ ひろむ)氏は、長野県長野市出身の火山学者。1977(昭和52)年以降、有珠火山観測所において観測・研究を続け、2000(平成12)年の有珠山噴火を的確に予知。噴火前に約1万人の住民のスムーズな避難が行われた火山予知成功例の立役者として「有珠山の主治医」と呼ばれる。この功績により、平成12年に北海道新聞文化賞特別賞、北海道科学技術賞、平成13年度防災功労者内閣総理大臣表彰を受賞。
1962(昭和37)年、長野県長野高等学校を卒業後、北海道大学理学部地球物理学科に入学。1966(昭和41)年に大学院へと進み地震学を専攻。1968(昭和43)年より北海道大学理学部助手、米国カーネギー地球物理学研究所留学を経て、1977(昭和52)年の有珠山噴火が転機となり、1982(昭和57)年より有珠火山観測所助教授に就任し、1985(昭和60)年から1998(平成10)年まで有珠火山観測所長として有珠山や十勝岳の研究と観測網の整備に尽くした。また、測地学審議会委員、気象庁火山噴火予知連絡会委員などを歴任。
1998(平成10)年に地震火山研究観測センター教授。2007(平成19)年に大学を定年退官し北海道大学名誉教授となり、現在は特定非営利活動法人環境防災総合政策研究機構理事。火山現場における観測・研究を信条に、常にフィールド・サイエンスを実践すると同時に、火山地域の住民や自治体へ積極的な啓発活動を行うなど社会に役立つ火山学を体現された。
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