『 危機に直面したらまず深呼吸を三回せよ。
三回する時間がなければ二回、いや一回でもよい。
一回もできないときは、深呼吸をするんだということを考えよ!
これでまず心は落ち着くと考え、つねにそれを実行してきた 』
坂井三郎(1916〜2000 / 大日本帝国海軍の戦闘機パイロット)
格言は著書「大空のサムライ」(光人社NF文庫 2003年)より。
曰く―――。
《 私は霞ヶ浦を卒業してのち、長い間、実戦部隊の勤務をつづけている間に、飛行中に何度か不運なエンジン故障に遭遇したり、不覚ともいえるミスを起こしてピンチに陥り、空中戦闘では四回も負傷したが、そのたびにその危機をうまく処理し得て、現在、生きているという現実を考えてみると、俺は運も強かったが、危機に遭遇したとき、霞ヶ浦で教官にならった、この『まず落ち着け、つねに冷静であれ』ということを深く肝に命じて、自分は自分なりにその方法を考え、それを心の銘として守ってきたからこそ今日の自分があるのだと思う。
私はその落ち着く方法として、いろいろ考えたが、危機に直面したらまず深呼吸を三回せよ。三回する時間がなければ二回、いや一回でもよい。一回もできないときは、深呼吸をするんだということを考えよ! これでまず心は落ち着くと考え、つねにそれを実行してきたし、また後輩たちにもこれを教えてきた。人間は突発的な危機に襲われると、反射的に、筋肉が硬直する。したがって血管も収縮し、心臓は異常な鼓動をする。このような状態にあるときは、絶対によい思案は浮かばないものである。
ここで一番になすべきことは、心を正常にもどし、正しい思考力を呼びもどすことである。これは落ち着くということを、自分に言い聞かす以外にない。危機に遭遇した場合、その処置をあわててやったら正しい答えを得ることはできない。 》
他の章では《 冷静さを取り戻すには、息を吸うより息を吐け。この時、下腹に力を入れ、尻の穴を締めよ。なで肩になれたら満点だ 》とも述べられている。
坂井三郎(さかい さぶろう)は、太平洋戦争(大東亜戦争)における海軍航空隊のエース(撃墜王)の一人として知られる零戦パイロット。ポツダム宣言後の最終階級は海軍中尉。戦後に海軍時代の経験を綴った著書『大空のサムライ』は世界的ベストセラーとなった。
佐賀県西与賀村(現佐賀市西与賀町)の農家の出身。少年時代に父が亡くなり生活が困窮し、東京の親戚に引き取られ青山学院中等部に入学するも成績不振により退学。実家に帰され、海軍の志願兵として1933(昭和8)年に水兵となった。当初は戦艦の砲手だったが、航空機の操縦練習生に合格し、1937(昭和12)に霞ヶ浦航空隊入隊。1938(昭和13)年、中国大陸で初出撃。1940(昭和15)に零式艦上戦闘機(零戦)パイロットとなり、1941(昭和16)12月の日米開戦後は、小隊長として多くの作戦に参加。1942(昭和17)年4月からはニューブリテン島ラバウルに進出し、連合国軍(米豪軍)との戦闘に参加するが、昭和17(1942)年8月に負傷により内地に送還された。
坂井の戦果の多くは、日本軍が優勢だった緒戦のもので、負傷により内地に退いてからは、日本軍が劣勢となった激戦時に活躍することは余りなかった。
サイパンが陥落し敗戦の色も濃くなってきた1944(昭和19)年6月、横須賀海軍航空隊の一員として硫黄島での戦闘に参加、帰還して少尉に昇進し、1945(昭和20)年8月15日のポツダム宣言受諾の日を迎えた。
戦後は『大空のサムライ』に代表される多くの著作を出版し一躍時の人となった。ただ、多くの読者から尊敬を集めた一方で、戦後の伝聞に基づく作戦や上官に対する批判的な言動や、著述内容と実際の記録との食い違いや創作された戦果も多く、ゴーストライターの存在を指摘されたり、当時社会問題化していた「ねずみ講事件」にかかわるなど、同僚の海軍飛行搭乗員たちからの反感や批判も多かった。
2000(平成12)年9月22日、米軍厚木基地で開催されたアメリカ海軍西太平洋艦隊航空司令部50周年記念祝賀夕食会に来賓として出席後に体調を崩し、その日の夜に死去。享年84。
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