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ウイルス・免疫・ワクチン 基礎の基礎 | 須谷尚史(東京大学 定量生命科学研究所 准教授)

time 2021/09/07

ウイルス・免疫・ワクチン   基礎の基礎   |  須谷尚史(東京大学 定量生命科学研究所 准教授)

◆ワクチン - 対ウイルスの切り札

獲得免疫の仕組み

病気にならないけれどウイルスそっくりなもの「ワクチン」によって、身体にウイルスを経験させておくことで、獲得免疫の初回とし、いざ本物のウイルスが侵入した際、獲得免疫が迅速に反応して、ウイルスを排除する。

ワクチンの種類

ワクチンの種類は弱毒化したウイルスを使用する「生ワクチン」と感染性をなくしたウイルスを使用した「不活化ワクチン」の2種類がある。

人類最初のワクチンは生ワクチンで、ジェンナーによる種痘(天然痘ワクチン)。牛飼いの女性は天然痘に罹らないことから、牛痘(牛の天然痘)を打つことで、天然痘に罹らないようにした。
不活化ワクチンは、獲得できる免疫が弱いため何度も接種する必要がある。

この2種類の従来型コロナワクチンの開発には2~3年はかかる、と専門家はみていた。
その理由は、①弱毒化株の作製や確実に不活化させる条件、ウイルスを増やす工程など作製工程の確立が必要 ②ウイルス由来の製剤のため病原性がないことを念入りに確かめるための厳重な安全性試験が必要、の2点からだった。

◆mRNAワクチンの登場

mRNA ワクチンの華々しい登場

従来の2種類のワクチンとは異なる、新しいタイプのmRNAワクチンが登場した。
ファイザー社の場合、2020年1月にウイルスが見つかって、3か月後の4月に治験開始。
2020年11月に最終大規模治験。ワクチンを打った人、生理食塩水を打った人のその後コロナにどれだけ罹患したか、防げたかを確認し、感染、発症、重症化の全てを予防、高い効き目と重篤な副反応がないことが確認された。

mRNA ワクチンのしくみ

mRNAワクチンは、コロナウイルスの表面のとげとけしたスパイクタンパク質の遺伝情報(mRNA)を脂質膜で包んだもの。
このワクチンを注射すると、mRNAが細胞の中に取り込まれて、スパイクタンパク質が合成される。このスパイクタンパク質に対して、身体の中で獲得免疫が獲得される。2回目の接種から1週間くらいすると、コロナウイルスに対する抗体が十分な量できる。

大事なことは、

    ・コロナウイルスそのものが体内で合成されることはない。

    ・mRNAはとても不安定で細胞の中に入ったらすぐ壊れてしまう。スパイクタンパク質が合成されるのは数日の間。スパイクタンパク質もずっとは残らない。

    →mRNAが身体に入ることで遺伝情報が書き換えられる、とか、スパイクタンパク質が永遠に作り続けられる、コロナウイルスの抗体が永続的に作り続けられて人間の免疫システムが崩壊する、などという話はデマ。

    ・ワクチンに含まれているのは、mRNAと脂質、身体にうつためのごく少量の塩分とショ糖。身体に悪いものは何も入っていない。ショ糖が入っているからワクチンを打つと糖尿病になるというのはデマ。

    ・なにより生ワクチン、不活化ワクチン、と違い、病原性がないので安全。

mRNA ワクチン登場の機は熟していた

mRNAワクチンはコロナ禍で突然ありあわせで作られたものではない。コンセプト自体は古く、30年以上研究されていたが、mRNAを注射すると、人体にとっては異物と認識され自然免疫による強い炎症が起こるため、開発が断念されていた。
ハンガリー出身の科学者、カタリン・カリコ博士が、mRNAを構成する物質の一つである「ウリジン」を「シュードウリジン」に置き換えると炎症反応が抑えられることを発見。
この発見を使ってmRNAワクチン実用化に注力してきたのがベンチャーのBioNTech社とモデルナ社。BioNTechと組んだのがファイザー。モデルナ社のワクチンを輸入して供給しているのが武田薬品。モデルナの英語名称 Moderna = Mode RNA。
世の中の殆どの感染症にワクチンがあるなか、新型コロナはmRNAワクチン実用化の好機となった。

mRNA ワクチンの効果

ファイザーのワクチンの発症予防97%の数字の意味は、未接種の人が100人感染する状況で、同じ数の接種者では3人しか感染しないという意味。100人のうち3人感染する、という意味ではないことに注意。普通のワクチンで8割9割、インフルエンザワクチンで5割程度、というのと比べると驚異的に高い数字。
ただし痛み、発熱などの副反応が発生する。が、数日で解消し、解熱剤も有効。
アナフィラキシー反応も稀で、接種30分以内に適切な処置をすれば快方に向かう。
mRNAを接種できないのは、1回目の接種でアナフィラキシー反応が出た人のみ。
mRNAの長期的なヒトへの影響を気にする方もいらっしゃるが、成分や成り立ちからはそう影響がないと考えられる。コロナウイルスに罹患するリスク、後遺症のリスクの方が格段に大きい。



次は、ワクチンの安全性や変異株について解説
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