調べものをしたり情報を得るために、インターネットやスマートフォンなどは広く使われています。そして災害時においても”情報”を得る手段は大切ですね。最近ではIT技術の進歩により、新たな情報手段が続々と出てきています。今回は、現在日本で行われている防災時の情報発信の取り組みと、防災にも活用され始めている新しい技術についてご紹介します。
日本でのIT技術活用の取り組み
住民向けICTサービス
総務省が発表している「防災ICTシステム及びサービスの日本におけるベストプラクティス集」では、防災ICTシステムの住民向けサービスとして次の7つを紹介しています。
- エリアメール・緊急速報メールを活用した災害警戒情報の提供
- 地上デジタルテレビ放送を活用した災害情報の配信
- ワンセグ放送を活用した災害警戒情報の配信
- 同報系防災無線を活用した災害情報・避難情報の提供
- 災害用伝言ダイヤル・伝言サービスを活用した安否確認
- 防災メールを活用した災害警戒情報の提供
- ラジオを活用した災害情報・避難情報の配信
ラジオや携帯電話に届く緊急速報メールなどはご存知の方も多いのではないでしょうか。
東日本大震災では、発生時は即時性の高いラジオが評価されていて、震災直後には安否確認等のため、双方向性を有する携帯電話・メールと、映像を伴う地上テレビが評価されていたことがわかっています。(参照:総務省が東日本大震災の被災者の方へのアンケートを取りまとめた「災害時における情報通信の在り方に関する調査結果」内の「震災時に利用したメディアの評価」より)
災害に備え、こうした防災情報のサービスと自分が持っている電化製品が対応しているかを事前に調べて知っておくことが大切です。
地域性や即時性のあるデジタルによる情報発信
先述の通り、東日本大震災ではラジオからの情報が有益ではありました。しかし、被災者のアンケートからは、多くの人が現在地付近の状況が分からず不安になったり、津波の大きさを認識していなかったりしていたことがわかっています。
一方、ITリテラシーが高い人たちは、インターネットやSNSを活用し、安否確認や地域性の高い情報を入手していました。また、ボランティア活動においては、SNSで物資の不足を伝えたり、支援物資や炊き出しの提供場所を知らせていたりと活用されています。こうしたインターネットの活用は一部のデジタルに強い人たちに限られてしまっていました。
このような課題に対して、地域性や即時性の高い情報を発信する動きがあります。
その一つがデジタルサイネージを活用した防災誘導です。今までの避難看板ではできなかった、タイムリーな情報を元にした避難誘導などを実現します。具体的には、火災時の風向きや避難場所の被害状況などに応じて、個々のサイネージに対して適切な誘導案内を出せるようにする取り組みです。この取り組みは3社共同※1で進められており、実際に中野区の商店街にて防災情報を発信する実験を行いました。
※1マルチメディア放送サービスを行うi-dioの事業全般を担う「BIC株式会社」と、i-dioのソフト事業者である「東京マルチメディア放送株式会社」と「ストリートメディア株式会社」の3社
(出典:平成24年版 情報通信白書:総務省)
また、総務省では、「情報難民ゼロプロジェクト」という訪日外国人や高齢者を主に対象とした災害情報の伝達や避難支援などの整備も進めています。オリンピックを見据えた2020年を目処に、目指す姿として、空港や駅などのターミナルや観光・商業施設に多言語に対応したデジタルサイネージを設置や、高齢者に対して音声が聞き取りやすい、災害情報の戸別受信機や自動起動ラジオを周知する予定です。自動起動ラジオはコミュニティ放送と連携することを予定していて、災害発生時に自動的にラジオが起動し、避難場所や安否確認、救援活動の状況など地域性の高い情報を受信できるようになります。
デジタルを活用した防災意識の啓蒙
災害時だけでなく、防災意識の啓蒙においてもデジタルの活用は行われています。最後に
その事例を3つご紹介します。
デジタルサイネージを活用した例
(出典:土砂災害を見て知って 電子看板で防災啓発 神戸:神戸新聞NEXT)
2017年の夏、神戸市の市危機管理センターでは防災意識を高める目的でデジタルサイネージを設置しました。画面には過去の水害の映像が流れています。土砂災害が起きやすい夏に、より直接的に伝わる映像を使っての防災意識の啓蒙の取り組みとなります。
AR技術を使った避難訓練
(出典:静岡)拡張現実でリアルな水と煙、小学生ら防災訓練:朝日新聞デジタル)
静岡の千浜小学校で、AR技術を使った避難訓練が実施されました。ARとは拡張現実のことで、特殊なゴーグルを付けることで実際の現実にCGで映像をリアリティを持って付け加える技術です。取り組みでは火災を想定し、普段歩き慣れている校舎に煙が充満するとどうなるのかなどを身をもって体験することができ、生徒が自分ごととして捉えてくれることが期待されています。
大学、自治体が連携してAIを使った防災の取り組みスタート
(出典:https://bosaijapan.jp/action/防災・減災を目指す「電脳防災コンソーシアム」/)
慶應義塾大学(山口真吾研究室)、情報通信研究機構、防災科学技術研究所、ヤフー、LINEが連携し、AIの技術を防災に活用するための「電脳防災コンソーシアム」が設立されました。被害状況や孤立集落の把握や、災害対策本部の情報整理の負担を軽減させるなどを目的としていて、政府や地方公共団体と連携した防災活動の強化を目指している。1回目の会合が2017年11月、中間報告が2018年4月頃に行われる予定となっています。
このように防災領域でIT技術の活用は進められています。今後は自分が今いる場所に特化した災害情報を受け取れたり、自分自身が発信側になったりとする場面も出てくるでしょう。これらの技術を上手に活用することで、より迅速な避難と、被害の軽減がはかられることが望まれます。是非自分を守るためにも改めて情報取得について見直しましょう。