防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

ウイルス・免疫・ワクチン 基礎の基礎 | 須谷尚史(東京大学 定量生命科学研究所 准教授)

time 2021/09/07

ウイルス・免疫・ワクチン   基礎の基礎   |  須谷尚史(東京大学 定量生命科学研究所 准教授)

2020年2月のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の横浜沖での大規模検疫開始から1年以上たつが、新型コロナウイルスの感染状況は沈静せず、ネットやTVでいろんな情報が飛び交い、ウイルス、免疫、ワクチン、抗体、PCR検査、変異株といったワードが普通に語られるようになった。しかし、それが実際にどういうものなのか理解していらっしゃる方は少ないのではないだろうか。
そこで、災害時の健康と安心を考える 株式会社セイエンタプライズ の寄付講座として、今さら聞けない新型コロナ関連についての基礎知識を一気にキャッチアップするZoom講座を開催した。講師は東京大学 定量生命科学研究所 ゲノム情報解析研究分野 須谷尚史准教授。
※6月開催(開催日:2021年6月9日)のため、現在のデルタ株蔓延の状況を考慮した内容にはなっておりません。ご了承ください。


ウイルス・免疫・ワクチン 基礎の基礎

著者:須谷尚史
(東京大学 定量生命科学研究所 ゲノム情報解析研究分野 准教授)

◆ウイルスとは

ウイルスは主に脂質、タンパク質、DNA/RNAといった遺伝情報(タンパク質の設計図)の3つから成り立っている。コロナウイルスは「脂質」で覆われているタイプなので、「石鹸での手洗い」「アルコール消毒」が有効であることは念頭に入れよう。

ウイルスの構造

ちなみに、脂質をもたないウイルスもある。主に子どもが罹患するお腹を下すノロウイルス、ロタウイルスはこのタイプのため、手洗いやアルコール消毒程度ではなかなかウイルスが死なない。このため、漂白剤での念入りな消毒などが必要となっている。

◆細胞とウイルスの違い

細胞もウイルスも構成成分は同じ。ただしウイルスはとても小さい
ウイルスの一生

細胞もウイルスも構成成分は同じだが、ウイルスはとても小さい。

細胞が生きていくためには最低1000種類のタンパク質が必要と言われているが、ウイルスは10から20種類しかタンパク質がないので、自分だけでは生きていけない。このため、細胞に侵入して寄生して増殖するしかない。

ウイルスの一生は、細胞に侵入して、細胞の中で自分のコピーを大量に合成して、細胞から飛び出て次の細胞に侵入して、を繰り返してどんどん増殖を繰り返す。

細胞からコロナウイルスが出ていくところ

人の細胞にコロナウイルスが感染後10時間くらいして大量増殖して次のターゲットの細胞に飛び出していくことがわかる。このようにウイルスに乗っ取られた細胞は最終的には死んでいくことになる。

◆コロナウイルスの感染様式

コロナウイルスの感染様式
スパイク-ACE2 結合を介してコロナウイルスはヒト細胞に侵入する

コロナウイルスは、鼻粘膜と肺内部の細胞から主に体内に侵入する。増殖したウイルスにより体内の細胞が感染。会話やくしゃみ等で口や鼻から出る飛沫に含まれるウイルスが、次の人を感染していく。
ミクロにみていくと、コロナウイルスの表面にあるとげとげ=スパイクタンパク質がヒトの細胞の表面のACE2タンパク質に結合し、スパイクタンパク質が銛のように変形し、ヒトの細胞に突き刺さり、コロナウイルスがヒトの細胞の中に侵入する。



次は、免疫系―身体を侵入者から守るシステムについて解説
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