 
		近年、日本のみならず世界各地で大きな地震や異常気象による大規模な風水害が、度々起こっています。また、長くその土地に住んでいた高齢者の人が、生まれて初めて経験した災害だといっているのを聞かされると、過去に安全であった地域も決して安心できず、日本のどこにいても大きな自然災害に遭うことを想定して震災を含む大きな自然災害に備える必要があります。そこで、今回は女性に焦点をあてて女性が「イザというときに自分を守る知恵と身近なものから備える防災グッズ」と題した講座を開催し、女性にとって本当に必要な知識や行動を学び、自分にとって本当に必要なものは何なのかをQ&Aを交えて考えていきます。
なお、講座は株式会社マガジンハウスの書籍「anan特別編集 女性のための防災BOOK ~“もしも”のときに、あなたを守ってくれる知恵とモノ~」(以下、「女性のための防災BOOK」)の編集方針を中心にすすめていきます。この書籍は、女性の視点から女性ならではのニーズを最新の情報を交えてわかりやすく、そして使いやすく紹介している書籍です。
「女性のための防災BOOK」の概要と出版に至った経緯
「女性のための防災BOOK」の初版の発行は2011年9月。東日本大震災で被災した女性をサポートした方々に取材し、危機的状況で女性にとって本当に必要な知識や行動を学び、そして自分にとって本当に必要なものは何かがわかることを編集方針にした書籍です。その後、好評を得て新装版を2014年10月、さらに情報の内容を最新にして2017年10月に発行。
出版に至った経緯は、東日本大震災が2011年3月11日(金)に起きたとき、編集者の防災に関する知識は、小学生のレベルの知識しかないのに、自分が被災者の立場に突然なったら、ちゃんと暮らせていけるのかと疑問が生じたからです。そこで、翌日の土日に本屋に防災に関する本を探しに行きましたが、本屋には、いかに生き抜くかというサバイバル術を教えるような本はみつけられましたが、内容は本格的なテントであったり、手動の発電機であったりと重装備な製品の紹介でした。その他の防災関連というと、乾パンや防災頭巾など小学校のころの防災訓練で聞いたレベルの情報しかありません。これでは、長くつらい避難所生活まで見据えた広い視野の防災に備えられません。
私たちは、2018年という科学が発達した現代に暮らしています。突然、被災者になったとしても「食事は今日から乾パンです」や「防災頭巾で身を守ってね」といわれても、今の生活はすごく便利に、快適になっており随分と乖離(かいり)しています。これだけをみても、私たちの防災の知識と、現実とにはすごい差があるのではないのかと、そのときに気が付きました。そして、多くの人が現在の情報にアップデートされた防災の情報を必要としているのではないか、そしてそれが役に立つのではと思ったことが本を作りたいと思ったきっかけでした。
女性にとっての防災を考える前に
女性にとって必要な防災について話の前に以下の質問について考えてください。自分の知識や防災に関する意識を確認しておくことは重要です。後編で、どのような回答があったかを紹介します。



「女性のための防災BOOK」の編集方針
1.女性ならではのニーズを掬い上げる

例)「自分が使い慣れている」生理用品 (健康に直結するのに被災所で「もっと欲しい」と言い出しにくかったグッズ)
避難所を運営する行政や避難所生活を支援する企業などはどうしても男性目線で支援を考えることから、女性のニーズとの食い違いがでます。また、同性の女性であっても実際に避難所生活を体験してみないと何が本当に便利で助かるものなのかがわからないという問題もあります。もっと必要という量的な問題もありますが、質的な問題もあります。例えば、生理用ナプキンは昼用と夜用がありますが、被災した女性から要請が多かったのは昼用と夜用のどちらか一方に偏っています。その他にも紙ショーツとおりものシートはどちらのニーズが高いのかなども使い勝手や便利差に違いがあり、それは実際に避難所生活を体験した人でないとわからないニーズです。それらの理由については後編で解説しますが、女性ならではのニーズを被災体験に即して知っておくと、いざというときにとても役立ちます。
2.身近にあるものを、一目でパッとわかるようにレイアウトする

例)大判ストール 女性なら必ず持っているもの。帽子やマスク替わりにするなど、さまざまな使い方ができる。
被災すると一般的に多くの人は、パニックになって貴重品が大事なことはすぐに思いつきますが、避難所生活に本当に便利で役立つものは着替えや衛生用品程度しか思いつかないのではと思われます。そこで、非常時に身の回りにあって、役立つものを写真のようにひと目でわかるように書籍ではレイアウトされています。書籍を見ているだけで何が必要か頭に自然に残ります。さらに、読んで理由を知れば明確に記憶として残せます。例えば、ストールは女性なら必ず持っているものですが、非常時には帽子、マスクの代わりになるほか、さまざまな用途に利用できます。
3.現代の人向けにアップデートした情報を届ける

例)非常食(ウィダーインゼリー) 時代の移り変わりにより、保存性が高く、理にかなった非常食なども増えている。
非常食として「乾パン」や「缶詰」しか思いつかない人は少なくなっているかと思われますが、今、非常食はすごく進化しています。また、非常食として一般的に思われていない、例えば「ウィダーインゼリー」などのゼリー状の栄養補助食品は、他の食品では食事のときに水分補給がかなり必要ですが、ゼリー状の栄養補助食品は水分量を減らせて栄養が簡単に摂取できるので避難所生活では重宝できます。さらに、保存期間も約10カ月と長いので保存食としても最適です。また、携帯性にも優れ、災害復旧に昼夜を問わず作業をしてくれる方々の中にも作業の合間にポケットから取り出して、この食品で栄養補給をしている人が多く見られたとのことです。
4.モノを準備すればOKではなく、知識を得ることも、大切な「防災」であることを伝える

例)被災時/支援時の具体的な情報を読み物として展開。
講師PROFILE
 中島 千恵(なかじま ちえ)
中島 千恵(なかじま ちえ)
株式会社マガジンハウス Hanako編集部勤務。
・マガジンハウスに勤務し、『anan』の編集から始まり、現在は『Hanako』の編集を担当するなど女性誌を長年にわたって担当。3.11の東日本大震災を東京の事務所で勤務中に経験。防災の専門家ではないが、「女性と防災」を考えると女性にとって何が重要なのか、どういうものが本当に役立つ情報なのかということが不足しているとして、2011年に発行した『anan特別編集 女性のための防災BOOK~“もしも”のときに、あなたを待ってくれる知恵とモノ』の編集を手掛ける。防災の専門家ではないことが、かえって女性の視点から女性にとって必要なものが見える編集方針となっている。
・2018年東京都が発行した女性視点の防災ブック『東京くらし防災』の編集・検討委員。
・参考
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