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パンデミックへの備え~予防と将来への展望|新型インフルエンザ対策:今、そこにある危機(第3話)

time 2009/02/15

パンデミックへの備え~予防と将来への展望|新型インフルエンザ対策:今、そこにある危機(第3話)

 


2009年春の企画として、Seiさんのお店メルマガ会員様からの質問でも一番関心の高い、新型インフルエンザ(パンデミック)について、新型インフルエンザ(パンデミック)対策では日本でもトップクラスのコンサルティングファームである 株式会社レックスマネジメント 代表取締役の秋月 雅史社長に、「今、そこにある危機」と題して、新型インフルエンザ(パンデミック)についての正しい知識と対策を分りやすくご説明いただきました。

新型インフルエンザ(パンデミック)第1話 新型インフルエンザ(パンデミック)第2話 新型インフルエンザ(パンデミック)第3話 新型インフルエンザ(パンデミック)第4話(最終回)


 

第3話 (個人・家庭)予防と将来の展望

Q.――――公助の部分である政府や行政など公共の対策はどのような状況なのですか?

日本の対策は、最近予算が増えていると聞いていますが、それでも先進国に比べて2〜3年は遅れていると言われています。

自治体のレベルでは、ちゃんとやっている所とそうでないところに差があります。23区の保健所では、品川保健所の対策が一番進んでいるのではないでしょうか?

Q.――――ちゃんとやっているとは、例えばどんなことでしょう?

発熱相談センターを作って、診療所を作り、感染者とそうでない人を別ける導線管理もしっかり行う、と、そこまで考えていると言うことです。

また、発熱外来(新型インフルエンザの患者とそれ以外の患者とを振り分けることで両者の接触を最小限にする病院の入り口)を民間病院に設けようといった行政の動きもあります。

Q.――――するとパンデミック発生時は病院に行けば良いのでしょうか?

いいえ、先ほどの話の続きで、病院側には、もし(政府・行政が発熱外来のある病院名を)公表するのであるなら(病院が)発熱外来を設けることには参加しない、という所があります。民間の病院も、正直なところを言えば、大量の患者は遠慮したいところでしょう。

ですから(パンデミック発生後に病院自体が)閉鎖するかもしれません、もし、パンデミックが起こったら、病院も “あて” にはならないと考えなければいけません。

病院へ相談することができたら、インフルエンザの抗生物質タミフルも最初はもらえるかもしれませんが、パンデミックの発生が確認されて以降は、(タミフルも)配られないと考えるべきでしょう。

さらに、タミフルも48時間以内の服用でしか効果はなく、タミフルはインフルエンザが体の中で増殖するのを防ぐという限定的な効果しか持たないことに気をつけなければいけません。

タミフルが効かないことも考える必要がありますし、パンデミック発生下の医療機関では、われわれは気休めに解熱剤を頂戴し、家で寝ていてくださいと、帰されることになるでしょう。

Q.――――パンデミックでは、いったいどんな事が起こるのでしょうか?

H5N1に特徴的なのは、全身の細胞のレセプターを開ける能力を持っているので、全身を侵(おか)すということです。最終的には、多臓器不全や脳症をおこします。

そして、パンデミックは、死亡率が60%では起こりません。それは人間の死亡率が高いとウイルスは移動手段(としての人)が使えず広がらないからです。

そのため、だいたい死亡率が20%以下から起こるともいわれています。

20%の致死率と言うと、多臓器不全で死亡しないまでも、重度の後遺症が残る可能性が高いため、(回復したとしても)その後の社会生活に大きな影響をおよぼすかもしれません。

その様な人たちが増えることは、パンデミック後の社会に、より大きなダメージを与えるかもしれません。

Q.――――パンデミックは、どのくらいの間(期間)続くと考えられているのですか?

パンデミック・ワクチンは、発症後1年半で出来るといわれています。

最初の新型インフルエンザの発症からの第一波が8週間で、これに対しては、何とか防いだ(家に閉じこもった)としても、その後に第二波・第三波が来たら、パンデミックは1年間ほど続くと考えられています。そこまでの備蓄が可能なんだろうか?と不安に思っています。(ここでしばらくオフレコの話がありました。)

Q.――――パンデミックと通常の災害の違いはありますか?

地震などの物理的な災害と違って、インフラは壊滅的なダメージを一切受けませんが、それを操作する人がダメージを受けるでしょう。

インフラが動いていられるように、これに携わる企業はBC(事業継続)の努力をしています。

電力についてですと、無人でも動く大規模な設備である発電所は心配していませんが、それらの保安所や送電設備のトラブルと復旧には心配を覚えています。なぜなら、そこには作業員が必要だからです。

水道も、浄水場やダムには問題を覚えませんが、途中に問題があったら、作業員による復旧はできない。水道もガスもそうですが、漏水などトラブルがなければ、問題はないのですが・・・。

Q.――――防衛戦略の部分で、やはり個人の対策が重要だと思ったのですが、個人の対策はどう考えれば良いのでしょうか?

そうですね、先ほども申し上げたように、心がけとして、”目に見えない危険物” である、ということを念頭にしなければならい。

まずは 外出しない、ということが一番です。

1人でも国内で第一例が発見されましたと報道された時点で、国内にすでに何万人もの感染者がいるという可能性が高いのです。

(国内で第一例の報道があった)その時には、実は、私たちの隣にいるかもしれないのです。

そういう時のことを考えると、そうなった瞬間に、マスクして、手袋して歩くということが重要かもしれません。

でも、マスクは専門家の先生によっては、全く意味がないと言う人もおります。要するに、N−95マスクは、確かにウィルスを通さない可能性が高いのですが、N−95マスクをつけると息苦しくて歩けないのです。なので、基本的には、できるだけ人ごみを避けるしか方法がないのですね。そうなると普通に売っているサージカル・マスクしか選択肢がないのですがこれだとウィルスをすかすかと通してしまうので、マスクをしている意味がなくなってしまうという理由です。

もし、電車に乗ったりする時に、どうしてもN−95マスクをしたいというのであれば、苦しくないように、できるだけ動かないようにする、など、(息苦しさから)マスクを外さなくても済む程度の運動量に心がけて移動することになります。

そういった意味からお薦めの移動手段は、公共の乗り物でなく「車」ですね。

Q.――――なるほど、確かに自家用車での移動は安心ですね。実は、私(店長)は自宅にN−95マスクを備蓄しているのですが、マスクが意味がないかもしれないという点をもう少しご説明下さい。

マスクを既に備蓄しているのは素晴らしいことです。

専門家の意見も分かれているN−95マスクですが、ただ、気休め、にはなります。

パンデミックになったとして、家に閉じこもっていたいが、でも、どうしても(公共の場に)出なければいけないという場合に、自分の安心のための材料として、N−95マスクは意味があると思いますね。

また、普段の生活の中でも、電車の中などで座っている時に、上からゴホゴホと咳やクシャミをしている人がいます。ゴホとなった瞬間にウィルスを撒き散らしている訳です。そういう時のために、マスクをしているというのも意味があると思います。「咳エチケット」と言いますが、こういうエチケットも早く広まるといいですね。

更に、最近は、どうやら新型インフルエンザは空気感染ではなく、飛沫感染だろうと言われています。

なので、N−95マスクは気休めかもしれませんが、普通のサージカル・マスクは予防のため、全く意味がないとまでは思いません。

Q.――――より具体的な(個人の)感染予防策を教えてください?

やはり、個人の対策では、手洗いが重要ですね。手についた菌が目に入ったり粘膜についたりして感染することが最も多いの
です。

普段やっていないことは出来ないわけですから、(私は)普段から手洗いを習慣化するようにしています。

今は、手に “危険物” がついていることをイメージして、自宅に着いてもそこら中を触らないように気をつけています。

(ここで店長は正しい手洗い方法をレクチャーいただく)

※文章での説明が難しいのですが、医者の手洗い方法を参考に、手のひら、手の甲、手の甲の親指の付け根(目をこする時にここで擦るケースが多い)、指と指の間、爪の間、爪の上側(洗い忘れの多い部分)、など念入りに洗う。

例えば、よくあるアルコール洗浄器も、正しい使い方があって、手に油脂がついているのを落としてからアルコール洗浄をしないと意味がありません。つまり、石鹸で洗ってからアルコール洗浄をするのが正しい使用方法です。

先ほどもお話した通り、専門家でも意見は分かれるところですが、マスク(N−95という基準に準拠したマスク)は気休めかもしれません。まして防護服までの必要を感じません。

これは、外に出ない、と決めていれば、マスク等は必要ないですから。

でも、どうしても出かけなければいけない時、あるいは公共に出るときの防御策として、(マスクは)ある程度は有効であると思っています。

それから、冊子(CDROM「新型インフルエンザ対策のツボ」)にも書きましたが、クレベリン(次亜塩素酸を使った抗菌剤)など除菌剤を衣装ケースに入れて置く。着ていた服をすぐに衣装ケースにしまうことで、つまり、外からの菌を家の中に持ち込まないように気をつけることです。

そのため、(私は)靴底の汚れまでを落とすべきか?と家で話し合ったりしました。

また、手袋も用意しています。この手袋のはずし方にも気を使います(必ず裏返しにします)、危険なウィルスがついていると考えたら、自然とこのようになります。

色々と申しましたが、とにかく、まずは手洗いです。

そして、うがい。鼻のうがいも良いんじゃないかと思います。ウィルスが粘膜から入るのならば、目を洗うのも有効だと思います。

新型インフルエンザは、どうやら空気感染でなくて飛沫感染とも言われているので、ゴーグルまでは不要で、眼鏡やサングラスでこと足りるかもしれません。

Q.――――除菌・抗菌剤の使い方は?

こういう(机を叩きながら)テーブルなどの硬いものの上では、ウィルスは48時間ほど生きると言われていますが、衣服などの柔らかい素材などについているウィルスは24時間ほどで死滅するといわれています。

そのため、除菌剤を入れた衣装ケースに(着ていた服を)1日入れておけば良いのです。

Q.――――個人的には、いつから避難(閉じこもる)を開始するが良いのでしょうか?

ProMED
ProMED


MLインフルエンザ流行前線情報DB
MLインフルエンザ流行前線情報DB


Google Flu Trends
グーグル・フルー・トレンズ


 


国内発生時は、当然ですが、海外で発生の噂がある時点で、自分では閉じこもろうかな?と思っています。うーん、そうですねぇ、良い情報サイトがありますよ。

●情報サイト● ProMED

これは、海外の科学者が作っているサイトですが、世界中のウィルス情報についてだと一番早い速報が流れます。ですが、この情報は、WHOなどから発表される正式なものではなく、いわゆる「 検証されていない噂 」を扱っているものなので閲覧には注意や知識が必要です。

●情報サイト● MLインフルエンザ流行前線情報DB

また、日本の小児科医さんが集まって、(通常の)インフルエンザの患者さんの数を報告しているサイトがあります。これも一つの指標にはなるかと・・・これを見ると、現在、東京・神奈川・鳥取でインフルエンザが流行ってきていますね。

●情報サイト● Google Flu Trends

これはグーグル(検索サイト Google )で、インフルエンザの検索数とそこでの感染との間に相関を見つけたグーグル社のサイトです。

(私は)こうしたサイトを、毎日観測してます。こういった情報を目安にするのが良いでしょう。

Q.――――秋月社長は、パンデミック対策で何をしてますか?何かアドバイスはありませんか?

実は、モデルガン(P-90と言う電動エアガン)を購入しています。まあ、そこまで必要かな?とも思うのですが、最近、身を守る必要性もあるのじゃないか、とまで考えています。もちろん殺傷力は無いですよ(笑)。でも、びっくりしますよ。

Q.――――それじゃアドバイスになりませんよ(笑)

やはり、徹底した感染予防ですかね。それと、外に出ないことかもしれません。

第4話につづく・・・

 

 


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株式会社レックスマネジメント 代表取締役秋月 雅史(あきづき・まさし) 氏プロフィール
1963(昭和38)年7月生れ。1989年 日本アイ・ビー・エム入社。メガバンク担当営業を経験。1997年 日系コンサルティング会社に転職、その後外資系・日系IT会社で新規事業の企画を担当。2007年 株式会社レックスマネジメントを設立。同社代表取締役に就任。

血液型O型。性格は頑固かつ大雑把かつ鷹揚。自ら「プロの酒飲み」と豪語するほどの酒豪でもある。

関連情報Link
株式会社レックスマネジメント(会社HP)
新型インフルエンザ対策WEBページ
新型インフルエンザ対策
レックスマネジメント

 

 

<編集長 拝>

 

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