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強毒性新型インフルエンザの脅威と防衛戦略|新型インフルエンザ対策:今、そこにある危機(第2話)

time 2009/02/14

強毒性新型インフルエンザの脅威と防衛戦略|新型インフルエンザ対策:今、そこにある危機(第2話)

 


2009年春の企画として、Seiさんのお店メルマガ会員様からの質問でも一番関心の高い、新型インフルエンザ(パンデミック)について、新型インフルエンザ(パンデミック)対策では日本でもトップクラスのコンサルティングファームである 株式会社レックスマネジメント 代表取締役の秋月 雅史社長に、「今、そこにある危機」と題して、新型インフルエンザ(パンデミック)についての正しい知識と対策を分りやすくご説明いただきました。

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第2話 対新型インフルエンザ防衛戦略

Q.――――新型インフルエンザの特徴とはどんなものですか?

話を単純に考えれば、新型インフルエンザの脅威の本質と、その対応の方法が見えてくるように思います。

先ほどもお話したとおり、われわれは火事や地震などの災害については、ある程度想像力が働きます。

なぜなら、火事や地震は、テレビなどで映像として見ることも多く、その様子や脅威を思い描きやすいからです。

しかし、現代の都市で、特定の感染症が爆発的に広まって、人がどんどん倒れていくことはなかなか想像できません。誰も、そのような経験をしたことがないからです。

だから “脅威を想像できない危機” に的確に対処することは難しい。

そのために、皆さんには、単純に、新型インフルエンザの脅威の本質を理解できるように、次のような例え話をしております。
まず、新型インフルエンザ・ウィルスのことを、『 病原体 』ではなく、『 扱いのめんどうな危険物 』であると思ってください。

そしてこの『 危険物 』は、やっかいな3つの特徴を持っています。

まず1番目の特徴は――――『 どこにあるのか、わからない 』ということです。

私たちの生命を脅かすような危険物がある場合、通常ですと、その危険物は厳重に保管され、うっかり人が近づかないように警告表示がされていたりします。ですが、この “危険物” の場合、感染者が発症するまでどこにあるのか目には見えません。

やっかいなことに、インフルエンザは感染して3,4日後になると、まだ病症が明確でない状態でも、周囲に感染させてしまうことが知られています。

“危険物” はあなたが気づかないうちに傍に来るのです。

2番目の特徴は――――『 (乗り物を使って) 移動する 』のです。

この “危険物” は移動するのです。

もちろん、ウィルス自身は自分では動けないので、ある「乗り物」を使います。そう、人間の身体を乗り物にして移動し、次の乗り物、また次の乗り物と、次々に広がっていくのです。

つまり「乗り物」に咳(せき)やクシャミをさせることで、次の「乗り物」へと飛び移るのです。

“移動する危険なウィルス” を想像してみて下さい。

そして3番目の特徴――――『 意思をもって殖(ふ)える 』です。

この “危険物” は、つくりは粗雑ですが、基本的にわれわれ地球上の生物とほぼ同じ方法で増殖する様な仕組みとなっています。

われわれの遺伝子は殖えて生き延びることをプログラミングされており、ダーウィンが言うように環境に適応した者が生き延び栄えます。

この “危険物” もわれわれと同じ増殖方法を取る以上、より環境に適応してより効率よく殖えるための意思を持っている、といっても過言ではないのです。

“ひとりで勝手に殖える危険物” なんて世の中にウィルス以外ありません。

さて、このように摂取してしまうと死亡率が高くて、どこにあるのかもわからなくて、こっそり移動することができて、しかもひとりでに殖える “危険物”がやってくるような状況を想定したら、そんな “危険物” から自分の身や、家族をまもるための準備をしておくことが非常に大事であることぐらい、考えなくてもわかりますよね。

Q.――――我々は、どうやって防げば良いでしょうか?

いままでいろいろと怖いことを申し上げましたが、けっして脅すつもりではありませんので、ご安心ください。いちど危険性を認識したあとで、きちんとした知識を持って対処することが有効であるということを覚えて下さい。

新型インフルエンザから身を護るためにやるべきことは、基本的には今年も流行した季節性インフルエンザの感染予防とほとんど同じです。

ただ、われわれは新型インフルエンザの抗体を持っていないので、少しだけ厳密に対策を行う必要があります。まず、対策のベースになる戦略から考えてみましょう。

この新型インフルエンザ・ウィルスは、効率よく殖えるために、ある戦略で攻めてきます。

ひとことで簡単に言うなら、彼らの戦略は「 乗り物がまだ元気なうちに、次の乗り物に飛び移ること 」です。

自覚症状がまだ軽くて元気な乗り物は、なんだか咳(せき)が出るなぁ、少し身体がだるいなぁ、と思いつつ、ウィルスをまき散らしながら社会の中を移動します。こうして感染が拡大するのです。

これを防ぐためには、ウィルスの戦略の裏をかく防御戦略を考えることが必要です。

彼らは我々を乗り物にしようと襲いかかってくるわけですから、われわれが取るべき戦略は「 危険物の乗り物にならないこと 」です。

そしてそのための防衛ラインを何重にも設置することが重要だと思います。

現在、新型インフルエンザの発生が確認された場合、WHOのチームが発生国に派遣され、まずは “封じ込め” が行われることになっています。

これが 第一 の 防衛ライン です。

そして日本国政府は、検疫空港・検疫港を設けることにより、入り口を狭くして新型インフルエンザが入ってくることを阻もうとします。

これが 第二 の 防衛ライン です。

しかし、新型インフルエンザ・ウィルスにこの第二防衛ラインを突破されると、自治体レベルでは県境での交通を規制するなど封じ込め・閉じこもりのための方策が取れないため(そのような規制を行う法整備がない)、事実上、国内では野放しになっていまいます。

ですから、国の防衛ラインを突破された後は、自分の会社や家の壁の外まで一直線に来てしまうということになります。

つまり、日本には、個人の人権を制限するような法律が存在しないので、戒厳令を敷くことが出来ませんから、一旦発生したら、その拡大を止めることは非常に難しいということです。

新型インフルエンザ発生時には、感染者が増えることによって社会機能も低下し、通常の経済活動のレベルを維持することが難しくなるだろうと考えられています。

でも、私たちは、お金がなければ生活はできないし、食べるものがなければ飢えてしまいます。

企業も、そんな環境の中で会社が潰れてしまわないように、必要最低限の活動を継続する必要があるのです。

そのため先進的な企業では、危機管理・事業継続のための計画をつくり、パンデミックが発生した場合でも経済活動をつづけるための努力をしています。

これが 第三 の 防衛ライン です。

さらに家族と自分を護るための防衛ラインを設置する必要があります。

これが 第四番目 の 防衛ライン です。

Q.――――では、一旦発生してしまった後の対策はどうですか? 防災で言えば、自助・共助・公助との考え方がありますが、それぞれのレベルでの対策を教えてください。

先ほどお話した「 危険物の乗り物にならないこと 」という戦略を実施するための戦術が、大きく3つあります。

まず、防災で言うところの公助にあたる、国家の戦術としては『 抗体を作ること 』です。

共助で言うところの企業や家庭は『 閉じこもること 』、そして自助(個人の戦術)『 乗り物の入り口にご案内しないこと 』です

それぞれを詳しくご説明しますね。

●戦術1●『 抗体を作ること(国家の戦術) 』

目的は「 乗り物 」にならないことですから、感染症対策的に最も有効なのは言うまでもなく、ワクチンを打って「 抗体を作ること 」です。

抗体さえあれば、ウィルスはそのヒトを乗り物にすることはできません。

いま多くの国で、プレ・パンデミック・ワクチンと呼ばれるワクチンが備蓄されています。

これは現在のH5N1で作られたワクチンで、実際に発生した新型インフルエンザ・ウィルスから作ったものではないので、その効果を疑問視する専門家もいます。ですが、逆に、国民の70%がプレ・パンデミック・ワクチンを接種していれば、パンデミックは起きないと主張する専門家もいます。

例えば、スイスなど欧米の先進国には、全国民分のプレ・パンデミック・ワクチンを備蓄している国も多くありますが、残念ながら日本の場合は3千万人分しか備蓄がなく、現時点でそれ以上のプレ・パンデミック・ワクチンを製造する計画もありません。

またプレ・パンデミック・ワクチンは、社会的機能を維持する上で重要な仕事をしている人から優先的に接種することが決まっています。

たとえば国会議員、医療関係者、電力・ガス・水道のインフラ従事者、消防・警察・自衛隊などの職種の人です。

われわれ一般人には接種されることはないので、やはり自衛手段は他に持たなければいけません。

そして実際に起こった新型インフルエンザ・ウィルスから作ったワクチンをパンデミック・ワクチンと呼びます。

これがもっとも効果のあるワクチンになるわけですが、実際には、開発までに最低でも半年、国民に打てるように製造するまでさらに半年以上かかると言われています。

ですから、ワクチンが開発されるまで、なんとか “危険物” に飛びかかられないような工夫が必要になるわけです。

●戦術2●『 閉じこもること(企業・家庭の戦術) 』

「 乗り物にならない 」ために効果的なもうひとつの戦術は、「 家に閉じこもって動かないこと 」です。

例えてみれば「 車を車庫に入れたままにする 」ことと一緒で、動かない乗り物は乗り物たりえないわけですから、これも非常に有効な戦術です。

専門家の見解にばらつきはありますが、多くの感染症対策の専門家が、だいたい 2週間 から 8週間 の家庭内篭城を勧めています。

ただし、これを実施するには、いくつか考慮すべき点があります。

まず第一に、全ての人は経済活動を行ってお金を稼がないと衣食住が維持できないため、普通は、何週間も閉じこもるなんてことはできません。

また、全ての人が閉じこもってしまったら、社会インフラも停まるし、企業も倒産してしまいます。

そのために、さまざまな企業や団体が、自分たちの活動を最低限継続するための事業継続計画(BCP)を作り、そして、その機能に携(たずさ)わる従業員以外の者が、家の中に閉じこもる施策を実施できる環境を整える必要があります。

さらに、実際、それだけ長い期間閉じこもるとなると、買い物にもいけないわけですから、生き延びるためには、食料品の備蓄が必要になります。

そういうわけで、長期間保存できる備蓄食や非常食なども、地震のためだけではなく、パンデミック発生時にも使えるように、買い足しておくこともとても有効でしょう。

●戦術3● 『 乗り物の入り口にご案内しないこと(個人の戦術) 』

“危険物” が乗り物に乗りこもうとする場合、その入り口となる場所は、実は3つしかありません。

目、鼻、口 だけなのです。

つまり、インフルエンザに罹(かか)るということは、罹(かか)った人自身が、自分の手や指に付いていたウィルスを、自分の
目 や 鼻 や 口 まで「 ご案内 」してしまったという状態なのです。

これを防ぐために有効なことは、徹底的な 手洗い です。

重要なことは、パンデミックが起こる前の<今>から日常的に気をつけるということです。

私は自分自身への訓練だと思って、外を移動して室内に入った場合には「 今、私の指は危険物で汚染されている 」と思うようにしています。

そして室内の物をあれこれ触る前に、まず徹底的に手を洗います。

手洗い後に、更に、抗ウィルス用の消毒剤で指を消毒します。

この消毒剤は、パンデミック時に、手・指や持ち物についたウィルスを不活化するために非常に有効です。

また、私は普段からこの消毒剤を携帯しております。

電車の手すり、つり革、公共の建物のエレベーターのボタンなど、不特定多数の人に触れるものは言わば「ウィルスの仮宿」です。そのようなものに触れた後は、これで必ず手指を消毒するように心をがけています。

抗体をつくること(戦術1)は、国家の施策であるため、ここで私たちにできることは何もありません。国に頑張ってもらうしかないのです。

ですが、閉じこもること(戦術2)のための食糧備蓄や、乗り物の入り口にご案内しないこと(戦術3)のために有効な消毒剤があれば、かなり確実に新型インフルエンザが防げるだろうと考えています。

第3話につづく・・・

 

 


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株式会社レックスマネジメント 代表取締役秋月 雅史(あきづき・まさし) 氏プロフィール
1963(昭和38)年7月生れ。1989年 日本アイ・ビー・エム入社。メガバンク担当営業を経験。1997年 日系コンサルティング会社に転職、その後外資系・日系IT会社で新規事業の企画を担当。2007年 株式会社レックスマネジメントを設立。同社代表取締役に就任。

血液型O型。性格は頑固かつ大雑把かつ鷹揚。自ら「プロの酒飲み」と豪語するほどの酒豪でもある。

関連情報Link
株式会社レックスマネジメント(会社HP)
新型インフルエンザ対策WEBページ
新型インフルエンザ対策
レックスマネジメント

 

 

<編集長 拝>

 

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