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災害に備えるということは?(防災論事始)

time 2007/10/03

災害に備えるということは?(防災論事始)
災害に備えるということは?  [編集長コラム]
 
少々理屈っぽい言葉遊びなお話をしながら、災害への備えとは何か? を少し掘り下げてみますね。

災害とは、ある現象が発生したことにより、その圧力に人間生活や社会基盤が耐えることができずに、何らかの形で破壊された挙句に人的・物的に損害が生じたときの現象を言います。

つまり、地震、津波、豪雨、火山噴火、台風、テロ、細菌などがただ無事に通り過ぎただけだったら、それらは単に災害になったかもしれない現象や要因・原因というだけであって、被害が発生しない限りは災害とは呼びません。

ですから仮に、大きな地震が起こっても、その破壊力に、我々の社会が耐えることができてしまえば<災害は起きない>のです。

「なるほど」と思う人もいれば、「くだらない」定義だと思った人もいるでしょう。定義だけだったら、私もそう思います。

でも、ここで重要なのは、
例え同じ場所で、同じ規模の大地震が発生したとしても、前者は大災害となり、後者は災害とならないかもしれないという事。
自然現象がもたらす物理的な破壊力に対して、私たちの社会システムがどれだけ脆弱であったかで、災害の規模が変わってくることを忘れてはいけません。

そこで、災害をおこさない社会やコミュニティを造るために、防災(災害を防ぐ)が必要となります。
災害が防げたら、それは災害ではないからです。

しかし、現実問題として、私たちは、全ての災害を防ぐだけの道具や科学技術や知恵を現時点で持ち合わせていないことをほとんどの人たちが知っています。

自然災害への対策の難しさは、まさに、ここに集約されていて、

防災は、個人や政府の対策にかかわらず、単純にお金をかけたからといって、100%災害を防げるはずもなく安全・安心とは言い切れないという、費用対効果(費用便益)が見えづらいところにあるのです。

でも、お金かけても即効が得られないからといって、何もせずに 運を天にまかせる ことは誤りです。

安全に費やした費用の効果が見えにくいと言えども、全く効果がないと言うわけではありません。
< 何か備えをする人 > と < 何もしない人 >とでは、その安全性(安全率)に大きな差(格差)が生じるのは紛れもない事実だからです。

簡単にいうと、経済面の安心を買う保険の考え方と一緒ですね。
保険を掛けた人と、そうでない人とでは、もしもの場合の費用負担で大きな差が生じます。

さて、100%防せぐことは難しい災害ですから、今の私たちが行う対策や取り組みは、防災というよりも減災(災害を減らす)することが主要な目的となっています。
 
学問的な分野から厳密に定義づけすると、個人の災害は、災害とは呼ばずに<災難>と呼ぶそうですが、災害によって罹災した個々人は、みんな被災者なのですから、こと自然災害においての個人の災難も、災害の一部分な訳で災害でいいんです。(なんのこっちゃ)
 
そこで、災害を減らすための<減災>とはどういうものなのか?
 
政府や行政がすべき減災の第一は、電気、ガス、水道などライフラインや道路など生活インフラの強度を増すことです。
そして、それらがもし機能しなくなった場合の対策も講じることです。

大災害の時に、家族でカンパンが1缶だけしか配給されなかった、ひもじい・・・などという逸話と、行政の対応への批判を良く耳にします。
でも、ここで、よーく考えてみて下さい。
被災者のための食料や水やら毛布などなどを備蓄することは、行政側が行うべき第一の対策ではないのです。

地に埋まった配管を強化するとか、切れにくいケーブルにするとか、そういった、日頃は余り市民の目に見えない場所、公共に益するようなところを対策しているのが本来の行政なんですね。
見えないからこそ「何もしてないじゃないか」と批判が集中するのは、ま、少々、気の毒ではありますが、でも、年金問題や不祥事などと普段から悪いニュースに接しているとこういう時に文句の一つも言ってやれ、という感情が芽生えるのも、それはそれ、何となく理解できますよね。

では、個人の場合の減災対策は?
 
良く、初めてSeiさんに訪れた個人客さんから「 災害対策では何をしたらいいか分かりません 」(どれから手をつければ良いか分からない)と質問を受けます。(500人に1人くらいの割合かな?)
 
あくまでも私(店長)の回答例ですが、そんな時、こう答えます。

『 まずは自分と家族の命。そして次に災害の後の生活の心配 』

具体的には、まず命を守ることが第一です。
サバイバルフーズ非常食)を買っても、死んでしまったらお腹が減ることはありませんので、食べない食料ほど意味のないものはありません。
つまり自分と家族の命を一番に守ることこそが最大の対策です。

命を守る有効な対策の一つは 住まいの環境を強化 することです。
自分と家族が一番長くいる場所は住居だからです。

そもそもの国や行政の目指している減災の一番の使命は、災害による死傷者を出さないことですので、そのような意味から言えば、例えお腹が減ることはあっても、家の強化によって命が助かることで対策の目的の大部分は完了します。

最も理想的なのは、地盤が堅く(地震)、海抜も高く(水害)、土地や家の周りも広いところ(火災・延焼を防ぐ)でなお且つ、住みやすい環境に堅牢な家を建てて定住することですが・・・と言っても、なかなか難しいので、生活環境の手の届くところから対策すると良いでしょう。
重い荷物や家具の配置や整理から、家族が寝る部屋で、特に枕の部分に重い家具が倒れてこないように配置がえしたり・・・避難路となる場所にじゃまな荷物を置かないようにする、ガラスが飛散して怪我をしないようにしたり、なんてのも立派な対策なんですね。

そして、生き残った後の生活を自分で想像します。
実は、これが最も難解なのです。

と言いますのも、人によって、各々の住環境によって、被災状況の想定が大きく異なるからです。

まず、家が全壊してしまい避難所暮しを余儀なくされた人、家が壊れずにその後も自宅で暮らせそうな人、とでは、後の生活に大きな格差が生じることが疑いようもありません。
電気が止まり、エレベーターが止まった高層階のマンション住人は、階段を上り下りしなくてはいけませんから、一軒家に住まう住民とは、やはり災害後の生活が大きく異なります。
でも、どんな場合であっても、生活するための物資(食料や水など)は、生きてさえいれば必要となるのですから、これらを備えるに越したことはありません。

生き残った後の生活は、そうですね、食う、寝る、遊ぶ、お金、で考えましょう。
食う、寝る・・・云々は、今、店長がふと思いついた適当な言葉ですけどね。

食うは食料や水、食器、燃料などの当面に必要となる生きるための物資、寝るは生活スペースの確保や生理用品、衣服や毛布、靴、帽子、衣料品など当面の生活必需品、遊ぶは子供の玩具やお菓子(子供は大人のように我慢できない)や、何らかの仕事・ミッションを持つことで長い被災生活を乗り切るための種々の道具類(荷物を運ぶ道具など)、重い水などを汲んで来たりする場合(ポリタンク)もありますし、お酒や薬、ビタミン剤補助食などなど嗜好品もここの分類かな?
お金は、当初は現金、後には、保険などに加入するなど長い被災者生活の更に後に来る家族が暮らすための経済的基盤を確保する対策などなど。でしょうかね。

ここで知っておいていただきたいのは、
地震により家が壊れる、と言っても、爆弾が落ちて家が木っ端微塵となるわけではないという事です。
火災により家が焼失したり、津波で基礎ごと家が流されない限り、家のモノ(家にある物資)の多くは、災害によって消えてなくなる事態にはなり得ないからです。
一時的に避難して、後に、家に必要な物資を取りに行く、というのは、被災地域ではよく見られる光景です。
ここでも、家が強固であればあるほど、物資はより多く残るのです。
 

 
さて、昨日から民間への提供がはじまった緊急地震速報は、科学的な限界はあれど、数秒前にある程度の揺れが起こることが事前予知できるという点で、減災に大きな効果を発揮することが期待されています。
 
一般家屋への端末の普及は難しいまでも、デパートなど商業施設や、多くの人が集まるイベント会場、鉄道、道路など、公共の場所で緊急地震速報がこれから多数利用されるようになることでしょう。
 
同時に、地震直前予知の可能性が普及することによって、地震被害でもっとも怖い<地震による火災>の減少にも一役買うのではないかと、私は期待しています。
 
火災は、隣近所に延焼・類焼します。
自分が 火 に日頃から注意していたとしても、他所からの出火が原因で自分が巻き込まれる可能性のある、ということが怖い最大の理由です。
 
実は、大火災により東京だけで数万人の焼死者を出した関東大震災では、震源から離れていた東京は、それほど大きな揺れではなかったそうです。
しかし、地震発生時刻が、仕事が午前終了の、いわゆる半ドンの日で、しかも、お昼の食事時間と重なったことで、台所から同時に出火し、結果として東京の6割もの家が全焼する被害となりました。
 
もし、揺れがくる数秒前に警報が出されていたら、きっと火を消す人もたくさんいて、ここまで大規模な火災にはならなかったかもしれません。
 
最近、政府も、常日頃の火災の怖さに警鐘を鳴らして、火災報知器を一般家庭に普及すべく新たな法律を施行(消防法を改正)しました。
欧米での実績などにより、火災に早く気づくことで被害を半数以上も抑えられることが分かってきたからです。
 
新築住居を建てる場合には、一般家屋も火災報知器を設置しなければならないとして、昨年6月1日から義務化(東京都は一昨年から義務化)し、今後、各地の行政では、2011年までの猶予期間に、新旧全ての住居に火災報知器を設置しなければならないとの法律ですが・・・
義務化したとはいえ、法自体、余り周知徹底されていないような気もします。とても良い法律ですが、一般家庭への設置を徹底させるのは、そう簡単には進まないでしょう。
 
家庭用火災報知器といっても、ただ煙を感知して音を出すだけの単純なタイプのもので良いので、この法制化は、住んでいる人に小火をいち早く知らせることで、大火とならないよう類焼を避ける狙いもあります。
なので、小火に気付いて消すということが難しい地震による家屋倒壊と二次災害の火災に焦点をあてたというものではありませんが、火による人的被害を減らすという目的で、政府が重い腰をあげた法改正という減災への取り組みは、たいへんすばらしいと思います。
 
後半は無理やり地震速報のことを書いたので、なんだか方向性がズレましたが、駄文を読んでいただき、何らかの気付きを得て頂ければ幸いです。

■この記事の関連情報
 緊急地震速報は買いか否か?(2007.10.1 編集長コラム)
 食料備蓄の参考資料(2011.03.24 編集長コラム)

■「安全論・危険論」「防災論」「安全神話」に関連する防災格言内の記事
 -「安全」を考える(2004.9.30 編集長コラム)
 -日本の防災制度(2004.11.24 編集長コラム)
 -教訓(安全神話とは何か)(2005.1.17 編集長コラム)
 -苛政猛於虎也(苛政は虎より猛なり)(2005.04.13 編集長コラム)
 -小田原評定(2006.1.29 編集長コラム)
 -災害に備えるということは?(防災論事始)(2007.10.3 編集長コラム)
 -毒矢の教え(フェイルセーフ論)(2010.7.30 編集長コラム)

<編集長 拝>

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