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五感で感じられない原子力災害|シリーズ 『特殊災害を考える』

time 2020/05/18

五感で感じられない原子力災害|シリーズ 『特殊災害を考える』

昨今電力会社が様々な問題や不祥事で世間を賑わせることが多くなっておりますが、私たち現代人にとって電気は生活に不可欠な存在になっています。その電気の供給に欠かせないのが発電所です。
そして、発電所で発電を行う際には必ずエネルギー源が必要になりますが、大きく分けると次の4つに分けられます。

  • 石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料のエネルギー
  • ウランを源とする放射性物質の核エネルギー
  • 河川や湖沼などの降水を源とする水の位置エネルギー
  • 太陽光、風力、潮力、地熱、バイオマスなどのその他のエネルギー

この中で現在問題視されているのが核エネルギーを使用した原子力発電所の原子力災害です。福島第一原子力発電所事故は記憶に新しいかと思いますが、今回はこの原子力災害という特殊災害について考えていきたいと思います。

原子力災害とは

出典:経済産業省・資源エネルギー庁「日本の原子力発電所の状況」他より作成

まず特殊災害とは何かご存知でしょうか。特殊災害はその名の通り特殊な災害のことを意味しており、自然災害以外の化学物質関連の事故や交通機関の事故、テロリストによる攻撃などを指します。最近では特殊災害のことをNBC災害(核(Nuclear)、生物(Biological)、化学物質(Chemical))やCBRNE災害(前述に加え、放射性物質(Radiological)、爆発物 (Explosive))などと呼ぶこともあります。

では、特殊災害に含まれる原子力災害とはなんでしょうか。なんとなくわかっている方もいるかと思いますが、「原子力災害」とは原子力関連施設(発電所)の事故等で放射性物質が異常に放出され、周囲の環境を汚染させ、人の健康、または財産に被害が生じることを指します。

この原子力災害は一般的な自然災害とは異なる性質があります。1つ目として、放射線などは人間の五感で感じることが出来ない為、放射性物質による影響をどれだけ受けているのかがわからず、知らないうちに被ばくをしている可能性があるということです。
2つ目は放出された放射性物質で環境汚染された場合は、周辺の道路などが通行止めとなり物流が止まってしまう可能性もあるということです。その場合必要な物資の供給が絶たれてしまいますので、万が一を考えると食料品などを自分たちで最低限備蓄しておく必要があります。

五感で感じることが出来ない原子力災害は、どこまで被害が広がっているのかも私達にはわかりません。それではどの様に身を守ればいいのでしょうか。

放射性物質から身を守るためにまず行うこと

原子力災害対策特別措置法に基づき定められた原子力災害対策指針では、原子力発電所が全面緊急事態となった場合、概ね5~30km圏内の住民は屋内退避をすることとしています。ただし発電所から5km以内の地域に住んでいる方は、放射性物質が放出される前に予防的に避難をする必要があります。

5~30km圏内の方でも急いで逃げなきゃと思われる方もいるかもしれませんが、不用意に屋外に出てしまうとかえって被ばくする危険性が増します。それに対し屋内退避は建物の気密性と遮蔽効果により放射線による影響を回避したり低減させることができます。
屋内に避難した際の注意事項としては次の通りです。

出典:原子力防災のてびき(佐賀県)

この屋内退避は数日継続する可能性もあるため、やはり日頃から食料の備蓄などを行っておくことも重要になっております。

避難と一時移転

屋内避難の後は、必要に応じて自治体からの指示のもと避難や一時移転を行うケースがあります。指示については、国(原子力災害対策本部)が原子力災害対策指針の考え方に基づき、状況に応じた避難の対応について自治体に指示を行います。これを受けて、自治体は地域防災計画に基づき、地域の実情(避難先の準備状況、避難先までの移動距離や時間、道路状況、気象情報等)を考え、具体的な避難経路、避難先とともに、住民に対して避難等の指示を行うことになっています。この避難および一時移転は、いずれも住民等が一定量以上の被ばくを受ける可能性がある場合に実施される対策です。

避難は放射性物質や放射線の放出源から離れることによる被ばく低減を図ることが目的であり、避難は空間放射線量率等が高かったり、高くなるおそれがある地点から速やかに行われるため、緊急で実施されます。
一時移転は緊急の避難が必要な場合と比べて空間放射線量率等が比較的に低い地域でとられる対策となり、日常生活を続けた場合の無用な被ばくを低減する目的で、その地域から離れるために実施されます。
また、避難指示が出たタイミングで対放射能薬である「安定ヨウ素剤」の配布が始まりますので、自治体の指示に基づいて速やかに服用する必要があります。

さて、いざ避難となった場合どこに避難すればいいのでしょうか。一般的な自然災害であれば近隣の小学校や公共施設などが避難所として活用されることが多いですが、それでは屋内避難と変わりません。繰り返しになりますが、原子力災害は五感で感じられない災害であり、放射線被ばくからの避難はこれでは足りませんので放射性物質が届かないエリアまで避難しなければなりません。これを踏まえ、各々が自分たちの地域はどこまで避難すれば安全なのか事前に知っておく必要があります。
道府県の原子力災害対策に関するHPがありますので自分のエリアを事前に確認をしておきましょう

参考:http://ndrc.jrc.or.jp/portal-sub-prefecture/

避難エリアについてはお住いの市区町村のHPなどを定期的に確認し、普段から把握をしておくことが望ましいでしょう。
例えば佐賀県の玄海町の場合、エリアごとの集合場所と施設名が記載された情報を公開しています。

参考:http://www.town.genkai.lg.jp/soshiki/18/1014.html

まとめ

原子力災害は長期間にわたる環境汚染や健康被害が生じる恐れのある目に見えない特殊災害であり、その避難等の方法も一般的な自然災害のそれとは全く違います。前述したように状況に応じて屋内避難、避難、一時移転と対応が分かれますが、どの対応をとるにしても健康被害(内部被ばく)から逃れるためにできるだけ速やかに対応することが求められ、場合によっては放射線が強いときに一時的に身をひそめ、その後遠くへ避難する(二段階避難)などをとる必要もあります。このように避難方法だけを見てもその特殊性がわかります。
また、東日本大震災のように地震と大津波という自然災害から原子力災害に発展するケースもあり、被害(汚染範囲や被ばく状況など)も小規模なものから想像を超えた広範囲なものまで起こり得る可能性もあります。

福島県の一部地域では原子力発電所事故の影響で今(2020年現在)でも放射線量が非常に高いレベルにあることから、帰還困難区域が指定されバリケードなど立ち入り禁止による物理的な防護措置がとられています。現在、世界で猛威をふるっている新型コロナウイルス・パンデミックの感染症対策でも、放射能汚染地域の封鎖と同じように、各地で都市封鎖(ロックダウン)が行われています。原子力災害では危険な汚染源に近づかないための封鎖で、ウイルス禍では人の集まる都市部で人から人への感染拡大を抑えて終息に導くことを目的とする封鎖ですが、人と経済活動を止める都市封鎖という一面では似た影響を及ぼします。単純に比較はできませんが、新型ウイルスによる感染症禍は、数か月から長くても数年で終息するとされますが、放射能汚染は場合により数十年、数百年というたいへん長い期間にわたるとされています。旧ソ連ウクライナのチェルノブイリ原発事故(1986年)では、都市そのものを放棄せざるを得ず、30年以上たった現在でも、原発から半径30キロ以内の居住禁止エリアは廃墟と化し、原発から北東350キロ圏内の高濃度汚染地域(ホットスポット)では農業や畜産業など経済活動が全面禁止されています。

原子力発電所が自宅から離れているから大丈夫だろうと安易に考えずに、自分の住んでいるエリアは避難地域の対象になっていないか、なっていた場合は避難場所はどこなのか、どういった行動をとればいいのか、一度確認してみてはいかがでしょうか。

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