いつ噴火してもおかしくないと言われているカルデラの噴火。数千年に1回カルデラが噴火すると言われる中、約7300年前に鬼界カルデラの噴火が起こってから未だ噴火していないのがその理由です。今回は鬼界カルデラについて解説します。
カルデラとは
カルデラとは直径約2km以上の陥没地形のことを言います。語源はスペイン語のcaldera(釜や鍋)で、火山が噴火した際に窪みができたり、侵食によって火口が広がったりすることでカルデラが生じます。また窪みが2km以下の場合は火口と言います。日本では北海道と九州に多く存在し、鬼界カルデラ、阿蘇カルデラ、桜島の姶良カルデラなどが知られています。
中でも、今から約7,300年前、鹿児島県の南の海底火山が噴火したことにより発生したのが鬼界カルデラです。この時、大量に放出されたマグマにより付近の島の大部分が失われました。火山から噴出した火砕流※は薩摩半島にまで上陸し、火山灰は、九州だけにとどまらず、関西や関東でも数10cm積もり、果ては偏西風により東北地方まで達しています。
※噴火により、高温の火山噴出物が噴出し、火口から高速で斜面を流下する現象。
繰り返すカルデラの噴火
東京大学地震研究所の前野深氏は、カルデラの噴火は繰り返し起こる可能性が高いと指摘しています。特に屈斜路、支笏、洞爺、十和田、阿蘇、姶良、阿多、鬼界などの火山では過去15万年間に、噴火により直径が10kmに及ぶカルデラを発生させています。これらの火山では噴火が1回以上起こっているため、再度カルデラ噴火が起こる可能性が高いのです。
日本では、規模の大きさはありますが、平均発生頻度では6000年に一回程度は、マグマを放出するカルデラ噴火が起こっています。しかし、前回のカルデラ噴火から、短いと2000年以内、長くて1万数千年以上後に起こったものあります。
このような規模の噴火で、最後に起こったものが先の鬼界カルデラ噴火なのです。
また、神戸大学の巽好幸教授によると、過去のカルデラ噴火の発生頻度を統計学的に解析し、発生確率を計算したところ、今後100年のうちに、巨大カルデラ噴火が起こる確率は約1%であることが判りました。これは、阪神・淡路大震災の発生前日の地震発生確率に近い数値です。カルデラ噴火はいつ起こっても不思議ではないのです。
火山の噴火に対する備え
火山の噴火は、カルデラのように数千年に1度の大きなものから、60年以上小さな噴火を繰り返す桜島までさまざまですが、噴火に対しての備えや避難方法については知っておきましょう。
具体的には、ハザードマップ(火山防災マップ)を見て危険な場所を確認しておくことや、避難場所や避難経路を確認しておくことが大切です。また火山活動時における防災の指標となっている噴火警戒レベルを知っておくことで、実際に噴火した場合にどのような行動をとればいいのかイメージすることができます。
これは、大きく予報、警報、特別警報に分かれていて、レベルが高くなると火口から遠い居住地域もその対象となります。
(出典:火山噴火では、どのような災害がおきるのか:首相官邸ホームページ)
他にも、火山灰から身を守るためには一般的な災害用品だけでなく、防塵マスクやゴーグルなどを準備しておくと良いでしょう。こうした対策は近隣住民だけでなく旅行者や登山者も意識する必要があります。
最後に火山物理学者である水上武氏の防災格言を紹介します。
『地震や噴火の災害をあらゆる手段をつくして予防防止することが、私たちにとってもっとも重要なことがらの一つである。そのためには、まず第一に地震や噴火について一般的な常識をもつことが必要である。』
災害において予防や予知は重要ですが、カルデラ噴火に限らずいつ起こってもおかしくないのが災害だと肝に銘じておくべきではないでしょうか。その上で、過去の噴火にはどのようなものがあったのか、防災用品は何を準備しておくべきか、噴火した場合には、どのように行動すべきかなどと、日頃より考えて備えておくことが大切です。