土砂災害を考える [編集長コラム]
土砂災害には「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」という3つの種類があります。
そして防災上は、被害の恐れがある場所をそれぞれ「土石流危険渓流(土石流危険箇所)」「地すべり危険箇所」「急傾斜地崩壊危険箇所」と呼びます。
一般的にはこの3つの危険個所を総称し「土砂災害危険箇所」と呼びますが、これらは、主に各地の行政が中心となって改めて危険個所や警戒区域を指定(地域防災計画)し、それに基づいてハザードマップや防災マニュアルなどが作成され、そして地域住民への周知や啓発活動が行われます。
ちなみに東京都内の「土砂災害危険箇所」は全部で3,718ケ所、そのうち、土石流危険箇所は703ケ所あり、伊豆大島町内の土石流危険個所は40ケ所存在していたそうです。
今回の台風26号による土石流災害が発生した大島町元町地区は、2002年度の東京都の調査で「土石流被害が発生しやすい地域」と指摘されていたそうで、実際に都のハザードマップを確認すると確かに指定されていますが、同時に、指定されていない箇所も今回被害にあっていることも確認できます。以前から言われていますが、自宅がハザードマップ上の斜線部(指定危険区域)にかかってなかったからと言って「だから安全である」と逆方面に安全性を過信しない(自分に都合の良い解釈をしない)ことが肝要です。近隣が地図上で斜線部になっていたら「うちも同様の被害に遭うこともあり得る」といった理解が必要ということです。
今回の報道にもありましたが、行政による危険区域の指定やハザードマップの作成現場では「もし指定されてしまうと(自宅の)地価(資産価値)が下がる」という反対意見が出るなど、なかなか作業が進まないケースもあるようです。実際、例えば過去、富士山噴火ハザードマップがなかなか作成されなかった背景には地域住民の反対が多かったという報道もありました。特に人口の少ない地方行政になればなるほど意見の調整は難しいのかもしれませんね。
なお、気象庁から「特別警報が出されなかった」ことで、警報の基準や運用について「問題である」という論調がされる向きもありますが、これは広域防災システムの運用上の問題点なだけで、システムの改善や改良はもちろん必要とは思いますが、責任どうこう言う議論は基本的に間違っています。特別警報は防災警報の最後通牒と同義で、警報の前段階から行政や住民による避難・安全行動などが行われることが重要だからです。その様な意味からは、今回の問題点は、気象庁や東京都の警戒呼びかけに地元の行政(大島町側)がどのタイミングで地域住民に情報や勧告を出すべきか、それを、どうやって、どう伝えるのか、ということになります。
地方で、このような痛ましい災害が発生すると、毎回のように、行政の長(町長)の危機管理能力が問われる、という議論になってしまいますが、町長がいなくてもちゃんと機能できる・意思決定できる危機管理マニュアルを作って、これを、きちんと運用できる体制を作ることが最も必要なことではないかと毎回思います。
<情報として>
■東京都 土砂災害危険個所マップ・土砂災害警戒区域等マップ
■東京都 土砂災害危険個所マップ
■伊豆大島 火山防災マップ[PDF]
※土石流・土砂災害に関連する私の過去の記事
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