日本三景「松島」と「瑞巌寺」と「三陸南地震」 [編集長コラム]
※東日本大震災後の日本三景「松島」の様子については震災直後に報道不足に陥った観光名所「松島」をご覧下さい。2011年4月現在の写真も追加しておきました。
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日本三景「松島」 |
松尾芭蕉が余りの絶景に「松島や、ああ松島や」としか言えなかったという故事で有名な宮城県松島は、丹後の天橋立、安芸の宮島と並ぶ日本三景の一つとして有名です。この松島の景観の中には、仙台火力発電所の巨大な建築物が景観を壊していることが有名ですが、皮肉なことに今となっては、この火力発電所も松島湾内の観光名所(?)の一つとなっているようです。
雑学として、童謡「どんぐりころころ」は、松島生まれの作詞家・青木存義が松島の幼少時代の思い出を綴った歌詞なのだそうです。
さて、松島湾に浮かぶ大小260余の松で覆われた島々。ここ松島は、自然の景観はもとより、国宝や重要文化財の宝庫でもあります。伊達政宗公の菩提寺として知られる瑞巌寺は「外は寺」「内は城」というおよそ寺とはかけ離れ、少し変わった趣がある素晴らしい建築物です。本堂の長谷川等胤筆の障壁画(復元)や欄間の彫刻は、華やかりし安土桃山文化の残り香を感じることでしょうね。
瑞巌寺は松島海岸(松島観光のメインストリート)の目の前にあり観光客の絶えないお寺です。
寺の入口から、本堂へと続く参道には、その昔、修業僧が生活したとされる洞窟群があり、五輪塔や笠付塔婆など無数の墓標が安置されたり、壁面に彫りつけられています。
出典:内閣府[広報ぼうさい(No16号)] |
2003年5月26日に東北地方を襲った三陸南地震(M7.0)では、松島近辺は震度5弱を記録したそうですが、5月29日の文化庁の被害報告では、国指定文化財など19件以上にのぼりました。
その中で、伊達政宗ゆかりの国宝「瑞巌寺本堂」では「松の間」の壁や回廊壁が一部で崩れ落ちたり、廊下側壁や塀に亀裂が入るなど―――新聞で大きく取上げられたために、私(店長)は6月初旬に宮城県に行き、「瑞巌寺」の被害状況について(個人的に興味があり)視察しに参りました。
報道された時点では、「貴重な文化財が被害を被った」と聞いていましたので、勝手な想像ばかりが膨らみ、「修復できないほどの破壊と酷い状況」ばかりをイメージしてしまいましたが(^^;)、私が見てきた範囲では、ほとんど地震被害らしいものは確認できませんでした。
今回、見てきた中では、瑞巌寺の洞窟群の崖と洞窟内の岩盤が小規模に何箇所か崩落しているのが印象的でした。
この松島の岩質は、砂岩で柔らかいため、岩をくり貫いた単純な造りの洞窟が数多くありますが、その特徴から、非常に岩盤がもろい性質があります。運の良いことに、崩落は小規模で、像や墓標などが崩落した岩にぶつかり壊れるということは無かったようです。
一番大きな崩落箇所は、瑞巌寺参道にある高さ10メートル程度の崖が岩肌が数メートルほどにわたって崩れた箇所です(以下の写真の個所)。
この場所は、国宝の瑞巌寺の参道ということもあり、観光客のとても多い観光スポットです。崩れた巨大な岩のすぐ隣は観光コースの柵があります。岩は、恐らく数トンという巨大な重量があるのでしょうが、運が良いことに、文化財(五輪塔や笠付塔婆など無数の墓標)をまるでよけて転がったようで、観光客コースの歩道にもはみ出ずに、状況としては「ただ単に巨大な岩が下に落ちただけ」で良く済んだな・・・と感嘆せざるを得ません。
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瑞巌寺「僧侶修業窟」の崩落現場 2003年5月26日 三陸南地震(M7.0) ※クリックで拡大写真 |
さて、宮城県というと三陸沖は、過去に比較的大きな地震が発生している海域です。1978年6月12日(17時14分)に起った宮城沖地震(M7.4)は、電気、水道、下水道、ガスが数週間止まり、ライフラインがたたれた戦後の大きな都市型災害として注目された災害です。
この時も数々の幸運が重なった(火災が12件しか起きなかった)とはいえ、その被害の規模は、宮城県を中心に死者28名、負傷者11,028名、建物損壊179,255件など、未だ記憶に新しいことと思います。
宮城沖地震で特筆すべきは、死者の70%が10歳以下の子供(子供9名)と60歳以上のお年寄り(60歳以上10名)に占められる点です。その死亡原因の大部分が、実はブロック塀や壁などの屋外建築物の倒壊による圧死です。これにより、当時、ブロック塀の補強の必要性が初めてマスコミ等を通じて一般に知られるようになりました。
余談ですが、私(店長)は宮城県松島町に見られるような、岩盤が弱いことで岩肌をくり貫いた駐車場などが非常に多いこの地域の生活スタイルと深い関連性のある被害のように感じます。
今回の地震でも松島でブロック塀が崩れている2件ほどの一般家屋を見つけましたが・・・塀や壁の更なる補強(もしくは見直し)は他人を巻き込まないためにも必要と思います。ブロック塀による圧死は半ば人災なのかもしれません。
1978年の宮城沖地震当時を知る松島の地元の人から興味深い話を聞きました。
『凄い揺れで、揺れている時には松島湾の海の底の地面が見えました―――』
(※店長注意書き…松島湾は水深が4m〜10mと浅いのが特徴)。
松島湾内の島に住居があるご家庭では
『庭に生きた魚が打ち上げられたので取って焼いて食べました―――』と微笑みながらお話くださいました。
最後に先日の東北の地震(三陸南地震 2003年5月26日)のお話として、私(店長)が泊まっていたホテルの従業員さんからこんなお話を伺いました。
『先日の地震では、若い女性のお客様が、ちょうど温泉に入られている時に揺れが始まり、風呂の水が凄い勢いで揺れて湯船から体ごと投げ出されそうになったそうです。素っ裸だったこともあって誰にも助けを呼べずに随分と怖い思いをされたそうです―――』
なるほど、地面がそのまま揺れる地震の時には、ただでさえ体を支える術がないのに、大きな温泉の湯船の中では水の浮力があって更に不安定この上ないのでしょう。外では火事になっているかもしれないし、他の客達の避難がはじまっているかもしれないし、(地震による停電もあるだろうし・・・)何も衣服を身にまとっていない裸の状況で独りで湯船につかっている若い女性では不安でたまらなかったのかもしれませんね。
地震の直後の訪問ということもあって、他では聞けないような、とても貴重なお話が聞けた宮城県でございました・・・(^^)
■「松島」に関連する防災格言内の記事
–震災直後に報道不足に陥った観光名所「松島」(2011.03.24 編集長コラム)
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