防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

パンデミックと事業継続(BCP・BCM)|新型インフルエンザ対策:今、そこにある危機(第4話)

time 2009/02/16

パンデミックと事業継続(BCP・BCM)|新型インフルエンザ対策:今、そこにある危機(第4話)


2009年春の企画として、Seiさんのお店メルマガ会員様からの質問でも一番関心の高い、新型インフルエンザ(パンデミック)について、新型インフルエンザ(パンデミック)対策では日本でもトップクラスのコンサルティングファームである 株式会社レックスマネジメント 代表取締役の秋月 雅史社長に、「今、そこにある危機」と題して、新型インフルエンザ(パンデミック)についての正しい知識と対策を分りやすくご説明いただきました。
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第4話(最終回) 事業継続(BCP・BCM)

Q.――――メルマガには企業や官庁・自治体の担当者も読者に多くいますが事業継続(BCP・BCM)という面ではいかがですか?

現時点で、きちんと事業継続マネジメントができている企業・自治体は、ごく少数という感触を持っています。

例えば、自治体ごとに備蓄しているタミフルについてですが、この薬は症状の重篤化は防げますが、感染そのものを防ぐ薬ではないので、事業継続という面から言うとプレ・パンデミック・ワクチンの備蓄拡大の方が重要だと思います。

プレ・パンデミック・ワクチンは今年から政治家・警察・自衛隊・医師など、公共性の高い仕事をしている人への接種が始まることになっています。

逆に言うと、一般の企業、一般のほとんどの人はワクチンの接種をうけられないわけですから、事業継続を考える上でこれは重要なポイントです。いくつか例をあげてご説明します。

企業の事業継続に必須といえるインターネットの保守は、(プレパンデミックワクチン接種の優先順位により)「 カテゴリーIII:国民の最低限の生活の維持に関わる業種・職種 」として、「 (5)ライフラインの維持等に関わる業種・職種 」と規定されています。

このライフラインの保守について、懸念していることがあります。

ネットワーク・インフラの保守は、名目上は大手企業が運営していますが、保守の現場ではそれらの大手企業から下請けに仕事がまわっていたりするケースがほとんどです。

ワクチンは、本来であれば、こういう現場いにいる人に打たないと意味がありませんが、実際にそういう細かいところまできちんと管理できるかどうかが、多くの企業の事業継続に影響してきます。

事業継続の観点からは、ビル管理もたいへんな問題です。

例えば、企業や自治体の入っているビルですが、毎日何気なくビルを使って仕事ができるのは、管理、設備、警備、清掃などのビル運用の仕事を支えてくれる人たちがいるからということは、改めていうまでもありません。

このビル管理を支えている人たちが倒れてしまったら、ビルの電気も入れられない、空調も効かない、警備員もいない、清掃もできずにゴミがたまるという事態になり、事業活動どころではないでしょう。

複数のテナントが入る貸しビルではもっと状況は複雑になります。あなたの所属する団体の事業継続計画は、そこまで考えてある
でしょうか?

更に、家族の健康状態が、事業継続に大きな影響を与えます。

仕事をしている「お父さん」が元気でも、「お母さん」が倒れて子供の面倒をみられないとなったらやはり差しさわりが出てきます。

たとえばパンデミック時の出勤率を計算してみましょう。発症率(罹患率)を仮定すると、出勤率が推定できます。

お父さん、お母さん、子供という3人家族があったとします。仮に罹患率が50%だとすると、出勤率は50%より悪くなります。

お父さんが病気にかかるケースだけでなく、お母さんや子供が罹って会社に来られなくなるケースが想定できるからです。

仮に、家族全員が無事でない限り出勤できないという前提で単純に計算すると、会社に来られる確率は、50%x50%x50%=12.5%となります。

たかだか10%の社員しか出てこられないとなると、ほぼすべての事業がとまるでしょう。

厚生労働省の想定では、欠勤率は最大40%となっています。これは罹患率が25%、つまり75%の人が健在であるという想定のもとでの数字です。

さきほどの3人家族の場合、3人とも健康である確率は75%x75%x75%=約42%となります。

つまり欠勤率は約60%となり、私は厚労省の推定より少しつらい状況になるのではないかと考えています。

ある社会学の専門家の推定によれば、たとえば地下鉄の保守チームの欠勤率が5%になったら、恐らく地下鉄は運行できなくなるだろうとのことでした。たった5%という欠勤率ですから、パンデミックが始まってすぐですよ。

あるスーパーなどはパンデミック時には駐車場で商品を販売するとしています。

でも、商品はどこから、どういう経路で仕入れるか、というのことを、まさにいま策定中という状況です。

自分たちが事業を行うつもりでも、仕入れの経路での物流が止まったら、やはり事業は継続できません。

社会サービスはいつまで利用できるのか? という観点が多くの事業継続マネジメント(BCM)には抜けているように感じています。

余りにも事業継続に影響する項目が多すぎて、どうやら皆さんが思考停止の状態に陥ってしまっているのではないかと思うのです。

昨今では、新型インフルエンザの話題に絡めて、事業継続計画・BCPという言葉をよく耳にしますが、私が思うに、危機発生時の初動である危機管理と、初動が終わって事業の継続を行う部分のBCPが混同されているように思います。

BCPを作るのは、危機管理計画を作るよりずっとたいへんな仕事です。

さらにBCP(計画)を作っても、BCM(マネジメント体制)が出来あがるわけではありません。

「 BCMの基本は自分たちの事業が何かを知ることだ 」とまるで冗談のような講演をしている外国のコンサルティングの先生もいるくらいです。

この講演はある意味正しいことを言っていますが、余りにも概念的すぎて、多くの企業の担当者には真意が伝わらないでしょう。

このあたりはよく勉強していただいて、新型インフルエンザ対策として、いま自社に何ができていないのか?をよく見極めていただきたいと思います。

Q.――――今日は、どうも長い時間ありがとうございました。

秋月社長:こちらこそ、ありがとうございました。

※合計5時間以上のロングインタビューとなりました。


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株式会社レックスマネジメント 代表取締役秋月 雅史(あきづき・まさし) 氏プロフィール
1963(昭和38)年7月生れ。1989年 日本アイ・ビー・エム入社。メガバンク担当営業を経験。1997年 日系コンサルティング会社に転職、その後外資系・日系IT会社で新規事業の企画を担当。2007年 株式会社レックスマネジメントを設立。同社代表取締役に就任。

血液型O型。性格は頑固かつ大雑把かつ鷹揚。自ら「プロの酒飲み」と豪語するほどの酒豪でもある。

関連情報Link
株式会社レックスマネジメント(会社HP)
新型インフルエンザ対策WEBページ
新型インフルエンザ対策
レックスマネジメント

<編集長 拝>

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