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地震、雷、火事、親父(親爺)を考える

time 2011/02/24

地震、雷、火事、親父(親爺)を考える
地震、雷、火事、親父(親爺)を考える  [編集長コラム]

地震、雷、火事、親父(親爺)の「おやじ」の語源は
「その昔、台風などの際に吹く強い風を大山風(おおやまじ)と言っていたものが変じて「おやじ」になった」
とネットで見つけた。

でも、その説の原典がどこにも書かれていない。
どこのだれの説なのか、どこの地方のいつの時代の話なのか真偽不明である。

なぜ誰も彼も「おやじは親父ではなく台風らしいよ」、と、「○○らしい」とあやふやな書き方をするのか。

誰の話か、何の書籍からの引用かだけでも書いて欲しいものである。
だって、自分で調べられないじゃないか・・・。

さて、「地震、雷、火事、親父(親爺)」をざっと簡単に調べてみた。
最初に結論を書くと、語源については良くわからなかった。

明治から昭和の「万朝報(よろずちょうほう)」記者の伊藤銀月(いとうぎんげつ / 1871〜1944)氏が、その著書「海国日本(1905年)」で、

地震! 雷! 火事! に続く「親父!」というのは、つまり「 語調を佳ならしめんが為に、且つ滑稽趣味を帯ばしめんが為に、単に之に添加したるものに過ぎざる也 」という説明をしている。
要するに、語呂や調子を面白くするために庶民の間で「地震、雷、火事の次に親父」と言ったのだろうと言う始末である。

うーん、この説は夢がないな。

昭和の文豪で狐狸庵のユーモアエッセイで知られる遠藤周作(1923〜1996)氏は、1976(昭和51)年の毎日新聞連載エッセイの中で「地震、雷、火事、親爺」という題で、

「 むかしの若い者にとってコワイものが幾つかあった。地震や雷や火事はとも角として親爺さまというのはたいへん、コワイ存在であった。
コワイものはいたるところにあった。むかしの若い者はこうしたコワイものを持つことによって何よりも屈辱感に耐えるということを学んだ。
むかしは男が「大人になる」条件として、この屈辱感に耐えることを一つの条件とした。<〜中略〜>そのコワイ存在から屈辱を味わわされ、それを我慢して、やっと一人前の大人とみとめられたのである。 」

と、思わずなるほどと膝を叩いてしまうよな、うまい説明がつけ加えられている。

明治期の修身学(今でいう道徳教育)で著名な竹内無覚氏の著書「修心子守話(1878年)」では、「地震、雷、火事、親父」のちょっと洒落た物語が紹介されている。
いかにも竹内無覚流の修身学らしいお話しで、中にジョークが散りばめられているのだけれど、きっと、古典に慣れ親しんでいない現代人には、この洒落が分からないかもしれない。

だから簡単な注釈をまじえて紹介する。

読む前の注釈ポイントとしてはただ3点だけ。

1、「晦日(みそか)」というのは「単なる月末」「毎月の最後の日」という意味。

晦日は今では死語となっていて、一年最後の月末である12月31日をさす大晦日(おおみそか)だけが名残となっている。

意外とキャッシュレス化のすすんだ江戸時代の物販の支払い期日というものは、主に晦日に行われていたので、現代でいうキャッシュカードと同じように、晦日を境にして全国各地で当時は人手で集金が行われた。そんな江戸時代から明治時代までは「晦日そば」という風習もあって、商家などで、集金や棚卸しで忙しい毎月末に、出前をとって使用人たちの労をねぎらったという。この風習は、今も一部地域で残っているそうな。

2、そして「お尻の用心」。

江戸時代から子供たちは晦日の近づく毎月28日を境に「お尻の用心、ご用心♪」とか「お尻の用心、火の用心♪」などとはやしたて歌いました。
明治から大正時代の文学作品の中には、悪童(悪ガキ)たちが、お互いの着物の裾をまくりあげて「お尻の用心御用心」と遊んだり、若くてかわいい女子に向かって「お尻の用心〜」と調子付いてからかうようなシーンがよく描かれている。

今でも幼い子供たちは「お尻」という言葉のただ滑稽な様が大好きで、よく「お尻」をネタにしますよね。それと同じで、いつの時代も子供はいっしょ。

古来、「帳尻(ちょうじり)を合わす」「物事を縮尻(しくじる)」「尻に巻かれる(尻にしかれる)」とか「尻」という身体の部位を表す言葉を、尻以上の「滑稽だけれど大事なもの」といったような意味合いを持たせて慣用表現として使う。

親に怒られるときには「尻を出す」という世界共通の文化もあるため、そういう意味合いを込めて、尻を出さない方が良い、という風土が芽生えて来たのだろう。

「お尻の用心」には一部隠語的な意味合いもあるらしいのだが、それはさておき、一家の大黒柱である親父(主人)も、家庭や学校でも、とっても忙しいちょうど区切りの良い月末=期末=晦日。
子供たちにとって、期末テストの成績表なんてのもあるでしょうから、そんな、どこか普段と雰囲気の異なる、ピリピリとしたような緊張感を含んだ晦日という日本全国共通の空気というものがその時代に確かにあったのでしょう。

3、「雷(カミナリ)」と「蚊帳(かや)」の関係

蚊帳(かや)というのは、蚊などの害虫から身を守る箱型の網目状の網で、エアコンの普及していなかった一時代昔には、暑い夏から秋にかけて窓を開け広げて寝るために、多くの家の寝室などの室内に吊して使っていたもの。昭和50年頃からだんだんと姿を消していった。

夏から秋にかけて蚊の多い季節は、当然、雷雨も多い。だから雷がゴロゴロと鳴ると、子供たちがあわてて、おへそを隠しながら蚊帳の中に隠れる、という文化があった。

これは、ただ網の中に布団があり、身を潜ますのにちょうど良いから蚊帳に隠れた、とする説や、麻で造られていた蚊帳の網が絶縁体として電気を通さないから安心とする説など、色々と諸説あった。
確かなことは、その昔の一軒家というものは、どこの家にもみな広い庭があった。ちょっとした公園くらいの広い庭なんてのも珍しくなかった。
テレビゲームなぞ存在しない時代には、小学生くらいの子供たちが集まって、誰かの家の庭で遊ぶというのがごく普通のことだった。だから、カミナリと雨が降ると、キャーといいながら、開けっ放しのガラス戸から、渡り廊下奥にある蚊帳に一直線で逃げ、誰が一番早く隠れるか、とかなんとか言いつつも、悪天候も気にせずに工夫をこらして遊んでいたものだ。
※仲間はずれになることの慣用表現で「蚊帳の外(かやのそと)」と昔から言うが、それと関係があるのかもしれない・・・。

で、以下をご紹介する。


地震雷火事親父と晦日の話
(出典:竹内無覚著「修心子守話(1878年)」より)

出演者:地震さん、雷さん、火事さん、親父さん、晦日さん の5人の雑談話の物語です

地震が言うには、

私もよんどころのなき時には 少しふるふると 地球上のものはいやがる(嫌がる)が、地の底は一面に火なるゆえ 地球上の水がおのずから漏れて 火の中へ流れ入りむされて湯気となり 積んで出(い)でんとすれども 出口なく よんどころなく、震動するが、我が浅間ヶ嶽(あさまがたけ)の如き煙を 噴出す山に 世界中に天然三百ヶ所あまり有って 地心(ちしん)より湯気を噴出すを導き 大空へ噴出(ふきだ)さしむる故に、地球も崩れず 億兆の者が 安く 住居して居られることを 有りがたく思って居ればよいのに

と云(言う)と、

雷がいふには

私の本体は越歴(エレキ=電気)だから地球上の万物とも この越歴(エレキ)を多少とも持たざる物はなけれども 夫(それ)を知らずに 音にのみ恐れて 蚊帳を釣り 線香や一月の飾松などを蚊遣(かやり)のようにいぶすが、私を蚊の頭(かしら)だと思ふかしら

と云う(言う)と、

火事が聞きて

私を仇敵のように思って 十年あとに 焼けた事まで言い出して怨んで居るが 夫(それ)など 私が憎ければ 常に 火の元を よく心付け 多葉粉(タバコ)のふきがらや 蝋燭の真(ろうそくのしん)を切捨(きりすて)、其(その)まま置けば 大火となる事もあるから 能(よく)心を用うれば 火災は有るまいに

と云う(言う)を、

親父が聞いて

何事もその通り
我を省(かえりみ)ぬと 兎角(とかく) 先があしきやう(悪しき様)に 思うが 私も若いもの(者)の 行き届かぬ事を 気を付けて 言うゆえ 邪魔のようにみるけれども 術(じゅつ)ない時(どうしようもないとき)には 私を出したがる

と云う(言う)と

晦日(みそか)が聞いて

あなた方の事は 昔からよくいう事で有りますが、私の事も 晦日が来る晦日が来る といや(嫌)がり、廿八日(二八日)になり 拂(はら)ひのお尻の用心、ご用心なさっても間には合いません、常に お尻の用心して 飲食のお尻(食事の作法)に気を付け 其外(その他)、無益の事を省き、その業に怠りなく お尻を軽く 勉強して居れば 私がいつ来ても 恐れる事は有りません。皆様(みなさん)左様に思し召しまし

と 満座の中にと 声高々と 述べしとぞ


――――つまりは油断大敵というありがたい道徳のお話しでした。

■この記事に関連する防災格言内の記事
 -地震・雷・火事・親父(2004.09.22 編集長コラム)
 -今週の防災格言<139> 小説家・遠藤周作氏(2010.07.12 防災格言)
 -災害用備蓄食(25年保存非常食)サバイバルフーズ

<編集長 拝>

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