防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

防災意識を育てるWEBマガジン

日本の防災制度

time 2004/11/24

日本の防災制度
日本の防災制度  [編集長コラム]

もしも・・・の時、日本の防災制度では、地元住民への通報や避難誘導、国や他の自治体などへの応援要請はその地域の自治体が行う。

住民にとって一番身近な存在である行政が命を守ってくれるというシステムである。

しかし、阪神淡路震災と新潟県中越地震では、行政も罹災したため、当面の水や食料の手配など、行政から他所に依頼すべき応援要請が中央に来ず地震からしばらく経っても被害状況すら不明だった。結果、政府や他の行政機関、私企業も含め、その対応が遅れた。ここに、予知が全くできない広域地震被害への対応の困難が、改めて露呈したように思える。

さて、行政の防災というのは、誰かが算出した被害想定を基に、被災者のおよその人数を割り出し、予算を計上し、それぞれ自治体が独自判断で、事前に食料備蓄したり、毛布などを用意したりする。

つまり、ある災害が起った場合の被害想定が既にあり、しかも予算が計上されて、初めて種々の防災対策が行われる。

平日の勤務時間内という1964年6月16日、13時2分に発生した新潟地震(M7.5 死者26人)の時でさえ、当時の新潟市長は『災害対策は普段から組織されているが、今回は想像を絶する大災害で、給水・給食と言われても連絡がとれずに、車も動かず、地震直後には職員も平時の2割程度しか能力が発揮できなかった』と述べた。

実は、新潟県では、当時も今も、主に想定される災害というのは、地震ではなく水防を指す。

しかしながら、当時、震度5を記録した新潟市の住民の多くの証言では、まさか川沿いで死者26名も出す大きな被害になっているとは想像もできなかった・・・といった程度の弱い揺れだったのにも関わらず、行政の初動防災体制は職員の2割しか発揮できなかった。

阪神淡路震災でも、知事が『予想していなかった地震が起こった』といった趣旨の発言をし、行政による即時応急体制の困難を露呈した。

そもそも、行政の危機管理体制というのは、<想像を絶する災害時>のためのシステムではないのか? と思わず茶々も入れたくなるが、それはさておき、この行政や政府の発言に良くある<想定外の災害>の意味を皆さんには良く知っておいてもらいたい。

行政には税金を使うための予算割があるため、その予算の根拠となる数値が必要なのだ。この予算の根拠となるのが<想定>である。

もし東京に関東大震災クラスの巨大地震が起こったら・・・1991年に東京都で発表された被害予測は、死者9,300人、負傷14万7,000人であった。

一方、全く同じ地震であっても、政府(中央防災会議)の見解は全く異なる。

1988年の政府の予測では、東京・神奈川・千葉・埼玉で死者15万2,000人、負傷20万3,000人と試算された。

同じ震源域の地震予測だけでも、調査手法の違いでこれだけ大きな開きが生まれる。

また、昨年にも、立川断層帯の直下型地震の発生確率について、両者は対立(?)した。東京都では「近い将来に起る確立は低い」としていたものが、政府は「発生確率は高い(2%)」と、その地震想定が大きく相違していたのだ。

「どちらが正しいのか?」などの意見も当然あるだろうが、地震災害は予知できない、ことを知っておくことが重要だ。

そもそも、防災は<自分の身は自分で守る>のが基本だと、政府も行政も口をすっぱくして言っている。

そのため、地域住民にとって、これらの地震予測値の違いに対して、過剰に反応する必要はないのである。

これらの予測が公開された背景には<住民1人ひとりが、最悪の事態に備え、被害を最小限に抑えるよう努力するように>との願いが込められているのだ。

行政の体制に意見するのも必要だが、それ以上に、住民夫々が、備えるという防災の基本を忘れてはならないのではなかろうか。

■「安全論・危険論」「防災論」「安全神話」に関連する防災格言内の記事
 -「安全」を考える(2004.9.30 編集長コラム)
 -日本の防災制度(2004.11.24 編集長コラム)
 -教訓(安全神話とは何か)(2005.1.17 編集長コラム)
 -苛政猛於虎也(苛政は虎より猛なり)(2005.04.13 編集長コラム)
 -小田原評定(2006.1.29 編集長コラム)
 -災害に備えるということは?(防災論事始)(2007.10.3 編集長コラム)
 -毒矢の教え(フェイルセーフ論)(2010.7.30 編集長コラム)

<編集長 拝>

[このブログのキーワード]
防災格言,格言集,名言集,格言,名言,諺,哲学,思想,人生,癒し,豆知識,防災,災害,火事,震災,地震,危機管理,非常食
メルマガ登録バナー
E-mail
お名前
※メールアドレスと名前を入力し読者登録ボタンで購読

アーカイブ