防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

NHK「イースター島の謎21」とラパマイシン

time 2022/05/18

NHK「イースター島の謎21」とラパマイシン

NHKの番組「イースター島の謎21」(絶海!謎と神秘の巨石文明 モアイとイースター島 ~21のミステリーを徹底究明!~)を見た。

台湾を遺伝子の源流とする海洋民族は、8世紀にはポリネシアの先タヒチ島にまで達していた。
その後400年をかけて更に4000キロの大洋を渡り、12世紀に絶海の孤島であるラパヌイにたどり着いた。
ヤシの木を彫って作った伝統的丸木舟に、大洋を渡れるだけの安定性を作るためのアウトリーガーをつけた大型のダブル・アウトリガーカヌーに乗船して、タロイモと鶏、そして食用のネズミを携えてタヒチを旅立ったホトゥマトゥアたちは、前人未到の島に最初に足跡を残す。
彼らが見たのはヤシの木々が生い茂る森を蓄えた緑豊かな楽園だった。

彼らはそれぞれに首長をたてて部族ごとに島の各所に生活をはじめた。
各部落にはモアイが設置され、モアイの目から照射されるマナが村を守ると信じられた。
首長はモアイの力を借りて、季節を読み、漁や収穫時期を的確に指示した。
首長=モアイ神と言うモアイ神信仰が生まれた。

島に食料として持ち込まれたネズミは、やがてヤシの木の実や根を食べ尽くす。
次第に大きな木が失われていき、木の根が保っていた肥沃な土壌が海洋に流出していく。
そうして500年をかけて、豊かな楽園は石と岩の荒地となった。

材料である大木を失ったラパヌイ人たちは、幹をくりぬいて作る伝統の丸木船を作ることが出来なくなった。
漁に出られない島民の重要なタンパク源は鶏とネズミだけ、そして炭水化物はタロイモ、しかしながら植物を育てる土壌は無情にも失われていく。
食料が不足する中で各部族はお互いの食料(にわとりや収穫の芋)をもとめて戦争状態となる。

島には飢餓が訪れ、カニバリズムが始まる。
人肉は貴重なタンパク源となった。
女性や子供から食べられたという。
こうして20000人を超えた人口は、3000人ほどにまで減った。

島民は生き残るために新しいコミュニティと宗教を作った。

島の西端にある孤島に1年に一度渡り鳥が繁殖にやってくる。
各部族の若者が競い合い、一斉に海に飛び込み、崖を上って最初の卵を獲得して首長に献上する。
最初の卵を手渡された者が首長の中の首長=神=鳥人となる。
鳥人信仰によりラパヌイ人は最後の生き残りにかける。

ラパヌイ人たちの想いも虚しく、18世紀(1722年)復活祭(イースター)の夜、オランダ海軍提督のヤーコプ・ロッヘフェーンがラパヌイ(島)を再発見する。
この時から、ラパヌイはイースター島になった。

ヨーロッパは奴隷貿易の真っただ中であった。
島民は、今度は労動力となり島外へ持ち去られ、生き残った3000人のイースター島の人口は1500人にまで減る。

ヨーロッパ人の奴隷貿易への自省から島に戻された10数人のわずかな島民が、さらなる悲劇、ヨーロッパから伝染病を持ち帰った。
絶海の孤島であるために外界から閉ざされていた島民には免疫が無かった。
1500人の島民は次々と感染し、そしてわずか111人になった。
こうしてイースター島の西洋史前の文明は失われる。

1965年になって、イースター島の土壌から単離された放線菌の産生するマクロライド系天然物が発見された。
ラパヌイにちなんでラパマイシンと名付けられたこの化合物は、mTOR(mammalian target of rapamycin)タンパク質に結合してその作用を阻害する。

mTORは、潤沢に食料と栄養があるときに働くタンパク質で、オートファジーを抑制して、タンパク質の合成を促進、細胞の成長・増殖(タンパクの同化作用)をすすめる。
細胞の増殖には遺伝子(DNA)が関係し、DNAが細胞の分裂・増殖の回数の上限(寿命)を決めている。

つまり、細胞の増えるスピードが増えることは、その分寿命も短くなるということだ。
逆に飢餓状態のとき、今度はAMPK(AMPプロテインキナーゼ)と言うタンパク質が活性化して、オートファジーを促進して細胞内の余剰なタンパク質を貪食(分解)、それまで貯めていた脂肪細胞などを利用してエネルギーを作り(タンパクの異化作用)、生き残りを図る。
細胞は増殖しないので、その分寿命は長くなるということだ。

細胞内の栄養およびエネルギーが豊富な時、mTORが働き、タンパク同化作用が進み、細胞内の栄養およびエネルギーが不足しているとき、AMPKが活性化してタンパクの異化作用が進む。
mTORとAMPKは拮抗しながら体内の恒常性を保っている。

食料と栄養(エネルギー)が不足しがちな、飢餓状態の続く絶海の孤島(ラパヌイ)で、生物は強制的にmTORを止める必要があったのではないか?
だからこの島の土壌にラパマイシンが発見されたのではないか?

そのような想像はSFだろうか。


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