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日本の食料安全保障│日本の食料自給率問題と日本の食料の安定供給の確保

time 2021/02/02

日本の食料安全保障│日本の食料自給率問題と日本の食料の安定供給の確保

みなさんは日本の食料自給率をご存じでしょうか?

実は日本の食糧自給率は低く、私たちが普段口にしているラーメンでさえ、自給率は13%程度です。

追い打ちをかけるように、大型台風や長雨などの天候不良により、記録的な不作に見舞われることもあります。

この先もずっと必要な食料を確保するために、政府は何か対策をとっているのでしょうか?
万が一の時に備えてそれぞれの家庭で食料を備蓄しておく必要はあるのでしょうか?
また備蓄する際には、どんなポイントに注意すればいいのでしょうか。

この記事では、そのような「日本の食料問題」について解説しています。
※参考:農林水産省│食料自給率について(子供版)

日本の食料自給率


気になる日本の食料自給率は、令和元年(2019年)の時点で38%です。
2017年度の食料時給率も38%で、全体として大きな変化はありません。
品目食料自給率
(カロリーベース)
総合38%
100%
イモ類74%
大豆7%
野菜79%
果物39%
牛肉36%

※参考:農林水産省『総合食料自給率(カロリー・生産額)、品目別自給率等』より

世界の食料自給率


日本の食料自給率の低さは、諸外国に比べると明らかです。
2017年の統計では、穀類であれば欧米諸国と並んで100%以上確保できているものの、芋類・果実類・肉類を筆頭に低さが目立ちます。
国名穀類イモ類野菜類果実類
アメリカ111.2%56.2%113.4%94.3%
カナダ121.3%64.6%101.6%97.5%
ドイツ114.8%67.4%95.4%72.8%
イギリス119.8%92.5%82.9%92.2%
日本104.9%23.4%103.6%46.4%

※参考:農林水産省「世界の食料自給率」

日本政府が食料を確保する為の試み

日本の自給率の低さは以前から認識されており、もちろん政府も手をこまねいているわけではありません。農林水産省の主導で「食料を確保する試み」(食料安全保障)が下記4つの角度から続けられています。

【日本政府の食糧確保に向けた試み】

    ① 食料輸入の安定化の努力
    ② 食料生産を増加させるための努力
    ③ 食料備蓄
    ④ 不測の事態に備える努力

① 食料輸入の安定化の努力


食料確保の試み1つ目が、食料輸入量や輸入相手国を安定して確保するための努力です。その内容は「輸入規制等に関する情報収集」と「外交」の2つに分けられます。
 
輸入規制等に関する情報収集
農産物や食品の輸入規制に関する各国の動きをいち早く掴み、その原因(天候不良や地政学上のリスクなど)を分析しています。

外交努力
他国や国際会議と連携して共同声明を出す、個別の国の担当官と会談を行うなどの努力をし、輸入規制の早期解除や関係改善を図っています。
※参考:農林水産省「安定的な輸入の確保」

上記以外にも、平時からさまざまな経済連携協定を結び、関税などの輸入障壁となるものを取り払う努力が行われています。現在はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)20種の経済連携協定を結んでおり、2020年には日米貿易協定の発効やEUから離脱した英国とのEPAへの署名が行われました。
※参考:外務省「経済上の国益の確保・増進 > 我が国の経済連携協定(EPA/FTA)等の取組」

② 食料生産を増加させる努力


2つ目は、食料生産量を増加させる取り組みです。
平成29年度から令和元年度の食料・農業・農村白書では「強い農業の創造」と「地域資源を活かした農村の振興・活性化」をテーマに、次の3つのような取り組みが報告されています。
※参考:農林水産省「白書情報」

農業構造改革の推進
低い食料自給率の原因として、農業従事者の高齢化や、農業をやめて別の職業に就く人の増加が上げられます。
その対策として、若い世代が営農しやすくなる「農地等を相続した場合に相続税の納付を猶予する制度」が実施されています。
※参考:国税庁「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」

地域資源を活かした農村の振興・活性化
農村地域の住民が生活関連サービスを受け続けられる「小さな拠点づくり」の推進や、中山間地域(※山間地域とその周辺の地域)への移住と営農開始についての支援、さらに都市農業の振興が行われています。

動植物の防疫
世界の各所で発生する豚熱や鳥インフルエンザなどの家畜伝染病に対処するため、2019年には飼養豚へのワクチン接種を可能とする防疫指針、2020年2月には家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案が成立しました。
植物病害虫についても、侵入や流行を防ぐための防除措置が施されています。

ほかにも、令和2年3月に閣議決定した最新の「食料・農業・農村基本計画」では、食料自給率を2030年に45%(生産額ベースは75%)にすると目標が掲げられました。
この中では、農作物の生産や流通のシステムを改革する「農業生産基盤の整備」や「気候変動対策」さらに「環境に優しい農業」に向けた取り組みも行うとされています。
※参考:農林水産省「食料・農業・農村基本計画」

③ 食料備蓄


3つ目が、避けがたい食料不足のための備蓄です。
政府は、平成5年(1993年)に起こった米の大不作の反省を受けて「主要食糧の需給および価格の安定に関する法律」を施行しました。
この法律に基づき、適正備蓄水準を100万トンとして、毎年21万トン程度を政府が買い入れています。
※参考:農林水産省「我が国の農産物備蓄の状況(令和元年度)」

④ 不測の事態に備える努力


政府は、平成14年(2002年)に「緊急事態食料安全保障指針」を策定し、事態をレベル0~2に分けて対応方法を取り決めています。
※参考:農林水産省「緊急事態食料安全保障指針」

緊急事態のレベル判断基準対応方法
Level.0事態の推移いかんによっては、特定の品目の需給がひっ迫することにより、食生活に重大な影響が生じる可能性がある場合・備蓄の計画的な活用
・輸入の確保(多角化など)
・需給のコントロール
・価格の安定化
・関係事業者への要請&指導
Level.1国民が最低限度必要とする熱量の供給は可能と見込まれるものの、特定の品目の需給がひっ迫することにより、食生活に重大な影響が生じる可能性がある場合・緊急増産
・生産資材の確保
・緊急措置法に基づく輸入指示
・経済連携協定の活用
・価格の安定化
Level.2国民が最低限必要とする熱量の供給が困難となる恐れがある場合
(1人1日あたり供給熱量が2,000キロカロリーを下回ると予測される場合)
・生産転換
・既存農地以外の土地活用
・割当て・配給の開始
・物価統制令による価格統制

また、多発する自然災害への備えとして「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」も策定されました。この対策方針に基づいて、全国的に農業水利施設の耐震化や農業用ハウスの補強等が進んでいます。
※参考:内閣官房「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策 特集サイト」

個人ができる食料危機への対策│備蓄

食料が不足する原因は「輸入量の減少」だけではありません。ニュースを見てパニックになった人による「買い占め」で不足するケースもあります。つまり、供給量が十分でも、一時的に必要な食料が手に入らなくなることはあり得るのです。

日本政府は、大規模災害や新型コロナウイルスのような感染症流行に備えて、家庭でも食料を備蓄しておくよう推奨しています。非常事態への備えに不安を持つ人の参考になるよう、最後に「個人でできる食料危機への対策」を紹介します。

備蓄しておく食品


備蓄する食料を選ぶ時は、①主食、②主菜、③副菜の優先順位を意識しましょう。
具体的には、以下のような食品です。

食料の種類備蓄しておくといいもの備蓄のポイント
主食・精米or無洗米
・レトルトご飯
・アルファ米
・パン・もち・乾麺
・即席麺・カップ麺
・シリアル
場所をとらない乾パンや、水やお湯を注ぐだけで食べられるアルファ米がおすすめ
主菜・肉・魚・豆などの缶詰
・レトルト食品
・乾物(かつお節や干物など)
・ロングライフ牛乳
缶詰は調理不要でそのまま食べられるものがおすすめ
副菜・梅干し
・のり
・乾燥わかめや乾燥ひじき
・インスタント味噌汁や即席スープ
・野菜ジュースや果汁ジュース
備蓄の優先順位は低い

※不測の事態が起きた時のストレス緩和に役立つ

※参考:農林水産省「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」

何日分の備蓄が必要?


備蓄量については「最低でも3日分、できれば1週間分程度」と政府が推奨しています。
大規模災害後のライフラインの復旧には数日程度かかり、孤立状態になると救出までさらに時間がかかる可能性があるからです。
大人1日あたりの備蓄例は、以下の通りです。

備蓄する食糧3日分1週間分
精米or無洗米9食分
レトルトご飯orアルファ米7パック7パック
即席麺orカップ麺1個1個
パン1食分1食分
シリアル類50g
肉・魚・豆などの缶詰5缶11缶
レトルト食品2パック7パック
豆腐(充填)1食分2食分
乾物適量適量
ロングライフ牛乳1本

※参考:農林水産省「affバックナンバー 2016年16年9月号 > 特集1:非常食(2)」

無理のない備蓄のやり方


無理なく食料を多めに確保できるテクニックとして「ローリングストック法」が知られています。

ローリングストック法のやり方

    1. 普段のスーパー通いで少し多めに買い置き
    2. 備蓄分のうち賞味期限が迫っているものを優先的に食べる
    3. 食べた分を補充(ローリング)して、常に一定量の備蓄(ストック)を確保する

特別に保存食や備蓄食を購入する必要がないので、明日からでも簡単に始められる方法です。
備蓄した食品を普段の生活で利用するので、いざという時に賞味期限切れという心配もありません。

しかし、このような一般的に知られているローリングストック法は、無理なく食材を多めに保管しておく方法としての “日常的な買い置き” と何ら変わりません。
ローリングストック(買い置き)という消費行動は、たいへん楽に食料を一定数確保できる手法ですが、これは災害時のための食料備蓄を行っているのではないため、災害備蓄としてローリングストック法を活用する場合は、その点で一定の注意が必要です。
例えば、急な災害時にはスーパーなどの棚からは食料がすぐに無くなり買えなくなりますが、非常食の備蓄などと比べて、日常的なローリングストック法ではこれらを(災害時の長期にわたる食料備蓄の必要性)担保できません。
また、多くの人が誤解していることに、食料の保管場所(保管スペース)の問題があります。例え、ローリングストック法でも多めに食料を確保する限り、非常食などを備蓄するのと同じように、普段よりも食材の保管スペースは多く必要とします。

まとめ


日本の食料自給率は低く、家畜を育てるための飼料までほとんどが輸入品由来です。
頻発する大規模災害、感染症の流行、そして外交リスクなどが引き金になって、食料品が不足する事態が今後起きるかもしれません。

政府も対策をおこなっていますが、個人でも「普段から多めに食料品を買っておく」などの対策を意識しておくと安心です。


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