日本が外国やテロ組織から攻撃された場合、すぐに避難行動を開始して身を守れるよう「国民保護情報」が伝達されます。
万一の時に必要な行動をすぐとれるよう、普段から「情報はどんな手段で教えてもらえるのか」「万一の時はどうやって身を守ればいいのか」を把握しておくと安心です。
本記事では、国民保護情報の発令方法や対応について、最低限知っておきたいことを紹介します。
国民保護情報とは?
そもそも国民保護情報とは「日本が武力攻撃を受けたこと」を政府機関から国民へと知らせるための情報を言います。2003年に成立した「事態対処法」と2004年成立の「国民保護法」に基づいて、どんな状況を国民保護情報として扱うべきか、またどのように伝達するのか、具体的なシステムが整えられるようになりました。
こうした国の対処の背景には、北朝鮮による度重なるミサイル発射実験や、不審船による領海侵犯、米国同時多発テロ、さらにイラク戦争などがあります。
国民保護情報はどんな時に発令される?
国民保護情報が発令される具体的なパターンとして、以下4つが考えられます。
●着上陸侵攻
…船や航空機が無許可で領土に乗り込もうとしている。
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●弾道ミサイル攻撃
…近隣国から大気圏を通過するタイプのミサイルが発射され、領土に落ちる可能性がある。
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●ゲリラ・特殊部隊による攻撃
…特別な訓練を受けた部隊が突然現れて、原子力事業所などの重要施設を狙っている。
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●航空攻撃
…爆撃機などがやってきて、都市部の主要施設やライフラインを攻撃しようとしている。
※参考:「武力攻撃事態の類型ごとの特徴」内閣官房 国民保護ポータルサイト
技術が進歩するたびに武力攻撃のバリエーションが増えているため、上記以外の攻撃でも情報伝達が行われる可能性は当然あります。緊急事態が起きたことを見逃さないよう、以降で「どうやって連絡が来るのか」はしっかりと押さえておきましょう。
国民保護情報の伝達方法
政府から「国民保護情報」を伝える時は、個人の持つ携帯電話にメールを配信し、市区町村設置の屋外スピーカー等でも放送します。なお、メール配信の方法は「携帯電話会社の回線経由」と「人工衛星等と地方公共団体の経由」の2通りあり、同じ情報について何度も受信する可能性があります。
伝達方法が二重・三重……とのようにいくつもあるのは、情報の重要性が極めて高いことが理由です。最新ニュースを知る手段(スマホやパソコンなど)に乏しいお年寄りや障害者にも、緊急事態であることを知らせ、避難してもらわなくてはなりません。
以下では、2020年12月時点までに整備されている国民保護情報の伝達方法を詳しく解説します。
※参考:「国民保護のための情報伝達の手段」内閣官房 国民保護ポータルサイト
※参考:「全国瞬時警報システム(Jアラート)による情報伝達における課題と対応」平成29年版消防白書
緊急速報メール(エリアメール)
第1の伝達方法は「緊急速報メール」あるいは「エリアメール」です。携帯電話事業者(ドコモやソフトバンクなど)の回線を通じ、個人所有のスマホ等に情報を届ける仕組みを採っています。
通知された内容が緊急速報メール(エリアメール)かどうかは、マナーモードでも音が鳴る点で見分けられます。
また、利用の申込手続きは基本的に不要で、パケット通信料や電話料金は一切発生しません。
自然災害が発生した時に「緊急地震速報」や「津波警報」を知らせる回線でもあるため、被災経験のある人ならイメージしやすいでしょう。
Jアラート
第2の伝達手段は「Jアラート」(全国瞬時警報システム)です。Jアラートでは、人工衛星や地上回線(消防防災無線)を経由し、都道府県や市区町村が設置した情報配信機器を自動起動させる仕組みが採られています。
Jアラートが発令された場合、地域の屋外スピーカーや屋内放送機から「どんな危険が迫っているのか」等の内容が音声で流れます。
また、独自に配信サービスを実施している地域では、緊急速報メール(エリアメール)とは別に、住まいを管轄する役場からも緊急事態に関するメールを受け取れます。
サイレン
Jアラートで音声情報が通知される場合、武力攻撃の目標になっている地域では「国民保護サイレン」が流れます。万が一サイレンが鳴った場合は、スムーズな行動をいっそう心がけて避難しなければなりません。
国民保護サイレンの音は、政府のポータルサイト( http://www.kokuminhogo.go.jp/arekore/shudan.html )で試聴できます(※MP3が聴ける環境がh必須)。試聴の際は、むやみに近隣の人に聞こえないようヘッドホン等を使いましょう。
国民保護情報が発令されたら、どう対応すればいい?
国民保護情報が発令された時は、以下4つの対応を心がける事が重要です。
【国民保護情報が発令された時の対応方法】
1. まずは避難する
2. 安全な建物内でも被害を受けないよう、十分注意する
3. テレビやラジオなどで情報収集する
4. 不審なものを見つけても近寄らない、触らない
上記の中でも特に「どこに避難すればいいのか」「日頃の備えはどうすればいいのか」について詳しく解説していきます。
避難方法1:屋外にいる場合
国民保護情報を屋外で受け取ったケースでは、ミサイル着弾による爆風等に巻き込まれる恐れがあります。頑丈の建物(コンクリート造りなど)や、地下街、地下鉄の駅などがないか確認し、一番近いところに避難しましょう。
運転中に避難を始める場合は、通行の邪魔にならない場所に駐車して避難します。このとき、必ず「キーはつけたまま」にしておきましょう。
緊急通行車両(救急車や自衛隊の車両など)がその場を通ることになった場合、車を移動させられるようにしておく必要があるからです。
避難方法2:近くに避難できる建物が無い場合
国民保護情報を受け取っても、近くに避難できそうな施設が見つからず、外出先でそのまま身を守る行動をとらなくてはならない場合があります。
この場合は、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭をかばいましょう。
避難方法3:屋内にいる場合
屋内にいる場合でも、空気の入り口や水道から毒物が流れ込んできたり、飛散物が窓ガラス等を破って入ってきたりする恐れがあります。これらの被害を受けないように、下記3つの対応を心がけましょう。
【屋内避難中に心がけるべきこと】
● ドアや窓を全て閉める
● 換気扇・ガス・水道を全て止める
● ドア・壁・窓ガラスから離れる
避難施設一覧
避難施設できる頑丈な施設の情報は、国民保護情報ポータルサイトから検索できます。スマートフォンを持っていない人については、ガラケー専用の検索ページも利用可能です。
万一の事態に備えて、住まいの近くの避難場所を調べておくと良いでしょう。
日頃からの備え
武力攻撃を受けると、ライフラインが停止し、情報も遮断されてしまう可能性があります。日頃から「万が一の際に必要なもの」をリストアップしておき、非常用袋に入れて準備しておきましょう。
具体的に準備しておきたいものとして、政府では次の一式を紹介しています。緊急時には、貴重品(通帳・印鑑・現金など)と身分証明書(運転免許証やパスポートなど)を一緒に持ち出して避難しましょう。
【非常事態の備えになるもの】
● 食料や飲料水(3日分が目安)
● 携帯ラジオ+予備電池
● 応急処置キット
● 懐中電灯
● ヘルメット、防災ずきん
● 軍手(厚手の手袋でもOK)
● マッチ、ろうそく類(水で濡れないようビニールでくるむ)
● 衣類(セーター・ジャンパー類)
● 下着
● 毛布
● 使い捨てカイロ
● ウェットティッシュ
● 筆記用具(ノートや鉛筆など)
まとめ
日本は「平和な国」と考えられがちですが、今後も平和が維持できるかどうかは、近隣諸国や欧米との関係しだいです。外国勢力やテロ組織による武力攻撃は、いつ起こっても決して不思議ではありません。
日頃から備えをしておき、緊急速報メール(エリアメール)やJアラートを逃さないよう配信方法を把握しておけば、いざという時に命を守れます。本記事で紹介した「国民保護情報」に関する知識は、出来るだけ家族と共有しておきましょう。