防災意識を育てるWEBマガジン「思則有備(しそくゆうび)」

糸魚川大火(2016年の糸魚川市大規模火災)から学ぶ

time 2017/10/20

糸魚川大火(2016年の糸魚川市大規模火災)から学ぶ

2016年12月22日午後10時20分頃、新潟県糸魚川市において約4万平方メートルを焼き尽くす大規模な火災が発生しました。火災を鎮火するまでには約30時間かかり、147棟もの建築物に被害が及びました。発端はラーメン店の店主が中華鍋の火を付けたまま外出したことであり、店主は2017年9月27日時点で業務上失火罪に問われています。この糸魚川大火から、災害について意識したいポイントをお伝えします。

土地柄が影響!?糸魚川大火

2016年に発生した糸魚川大火は地震によって多発的に発生する火災を除き、単一の出火による延焼としては1976年の酒田大火以来、最大級の火災となりました(酒田大火では1774棟もの建築物、糸魚川大火の約4倍の約15万平方メートルもの面積が焼損しました)。幸い死者こそ出ませんでしたが、約120世帯が家を失っています。また新潟県最古として知られていた酒造や多くの著名人が訪れた旅館なども失われています。
その被害の大きさから、火災では初めて被災者生活再建支援法が適用されました。

被害の遭った糸魚川駅北側の付近一帯は雁木造※1や裸木造※2の建築物の密集している市街地であったことに加え、初動の段階効果的に消火活動を行うに足りる消防車が到着しなかったことから、被害が拡大したと分析されています。この付近の建築物は隣同士の壁がくっついており、火が広がりやすい環境だったのです。

※1雁木造とは積雪の際も歩けるように、商店街に設置された雪よけの屋根のことをいい、これにより建物間が密接しやすい。
※2裸木造とは木材が剥き出しになっていて、防火対策のとられていない建築物。

さらに、この辺りは姫川おろしと呼ばれる強い南風が吹いていたことから火の粉や火のついた板の切れ端などが飛び、日本海方向に広く延焼しました。出火の約30分後には火元から200メートル離れた場所、その2時間30分後には300メートル離れた場所まで広がっていました。

総務省消防庁が平成29年5 月に発表した「糸魚川市大規模火災を踏まえた今後の消防のあり方に関する検討会報告書」によると、この付近では、かつて1932年12月21日にも368棟が全焼する火災が発生していました。そして火災後には新しく建築物が建てられ、その多くが残っている地域でもありました。
そのため、1960年の準防火地域の指定以前に形成された区画であることから、防火構造に該当しない既存不適格の木造建築物が密集していたものと推定されています。

糸魚川市では19世紀以降、100棟以上を焼失する火災が10回も発生しており、2016年の1年間で2000件弱の救急出動、16件の火災が発生しています。糸魚川大火をきっかけに全国的に都市防火対策の強化が図られていますが、いつこのような大火に発展してしまうかはわかりません。消防団の可搬ポンプの3割に不具合があり※3活かせなかったことも被害の拡大につながっていますので、防災意識を高めて、再発防止に努める必要があるでしょう。

※3総務省消防庁が平成29年5 月に発表した「糸魚川市大規模火災を踏まえた今後の消防のあり方に関する検討会報告書」より

火災についての防災格言

糸魚川市に限らず、日本では家屋を焼損する火災が度々発生しています。歌人である鴨長明氏(1155年~1216年)は、大火の続く都会に私財を費やし、家を建てるのは愚かだという趣旨の格言を遺しました。

しかし、大切なことは家を建てないことではなく、家をどう守るかです。
新潟大火のときに訓練の途中で火事に遭遇した自衛隊が出動した事実を捉えて、タレントの永六輔氏(1933年~2016年)は「災害がいつ起るか、と思い続けていましょうとは言いません。でも訓練は大事だなと思います」という格言を遺しています。
消火活動の遅れから被害が拡大してしまった糸魚川大火において、もし自衛隊が出動していたら被害の拡大を抑えることができたかもしれません。

物理学者であり、俳人の寺田寅彦氏(1878年~1935年)が遺した災害警句「天災は忘れた頃来る」を耳にしたことのある人も多いでしょう。この格言はどの書簡にも掲載されていませんが、実に的を射ていたことから多くの人に言い伝えられ、現在に伝わっています。まさに糸魚川大火からは、過去を忘れず、日頃から万一に備えておくことの大切さを学ばなければなりません。

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