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災害備蓄の整理収納術 ~ 被災体験から見えてきた「事前の備えの収納問題」を解説する ~|澁川真希(整理収納コンサルタント)

time 2020/08/11

災害備蓄の整理収納術 ~ 被災体験から見えてきた「事前の備えの収納問題」を解説する ~|澁川真希(整理収納コンサルタント)

防災・整理アドバイザーとして自らの罹災経験をもとに災害にも役立つ整理収納術を雑誌やテレビなどのメディアや主催セミナーなどを通じ広くご紹介されているCOMFORT STYLE代表の澁川真希様より、災害への備えのポイントについて、わかりやすい解説をいただきました。


災害備蓄の整理収納術 ~ 被災体験から見えてきた「事前の備えの収納問題」を解説する ~

著者:澁川真希(整理収納コンサルタント)

 

3度の震災で分かった便利な日常と災害後のモノ不足

私が本気で備蓄という、「事前の備え」を始めたのは、東日本大震災(2011年3月11日)を仙台の地で経験したからです。

福岡県出身の私は、地震が極端に少ない地域だったこともあり、地震というものを甘く見ていましたが、夫の転勤で住んだ仙台で地震の怖さを体験することになりました。最初は2003年の宮城県北部地震(2003年7月26日、最大震度6強)。次に2008年の岩手・宮城内陸地震(2008年6月14日、最大震度6強)。仙台市内は震度5弱程度でしたが、それでも今までに経験したことの無い震度5弱の揺れは「何か対策しなければ!」と思わせるに十分な体験でした。

それからとった対策は、震災対策で多くの人が最初に取り組む「家具の転倒防止策」「非常持ち出し袋の準備」「非常食の備蓄」だけです。当時の私はこれで十分に備えたつもりになってしまうくらい、震災後の生活に対する想像力も危機感も足りていなかったのです。

最低限の備えをしていたところで、3.11の東日本大震災で被災。津波被害のない地区で、住んでいたマンションも倒壊の危険はなかったため自宅で生活を続けることに決めました。
当時、小学校2年生の長男と幼稚園年長の次男と夫婦2人の4人家族でライフラインも物流も止まった中でいつ落ち着くともわからないまま生活をすることになりました。

いつも開いているスーパーも、コンビニエンスストアもない…震災後、店は開いても欲しいものが売ってない、少なすぎて買えない状態を経験したことで自分が十分と思っていた備えはまるで足りていなかったことに気づかされます。

整理収納コンサルタントという仕事柄、自宅も無駄なものは置かず、必要なものだけを最小限に持ち、スーパーやコンビニが我が家の冷蔵庫代わりというような生活スタイルで、家の中も「男の子が2人いるとは思えない」と言われるほどスッキリしていました。

日頃から家中を整理していたことで地震直後の物の散乱や飛散、転倒も少なかったため家の中もすぐに元の状態に戻すことが出来た。これは整理収納で家の中を整えていたことと、事前の家具の転倒防止対策の効果が大きかったと言えます。
ですが一方で…今、必要なものしか置いていない生活の中では「備蓄」というものはほぼないので、食料品や飲料水に至ってはすぐに底をついてしまうことになります。

シンプルライフと呼ばれる、モノを持たないようなミニマムな生活スタイルは、ライフラインがあり、便利な日常があるから成り立つもので、災害が起きた非常時には脆いものです。自宅だけで被災生活を送るには食料も水も足りず、生活が成り立たなくなることもあると思っておいた方がいいでしょう。

3.11前に無駄で余分なもので必要ないと思っていた「備蓄」は、無駄なものではなく、災害大国のこの国に暮らしている私たちには必要不可欠なものなのです。

今や地震だけでなく大型台風や豪雨での自然災害、そして新型コロナウイルスのような感染症で自粛生活を余儀なくされる災害と複合的に備える必要があります。
 
 

事前の備えである「備蓄」は今や必須

食料・水・トイレなど防災グッズの備蓄をしている人も増えていますが、同時にこれらの収納方法や保管場所に悩む人も多いと聞きます。それによって備蓄に踏み切れない人もいるのではないでしょうか。
我が家も現在は東京都内のマンションに暮らし仙台に居た時よりも収納スペースが少なくなった状態で工夫しながら「備蓄」をしている状況です。

食料備蓄は非常食を最小限にし、普段の食材・食料を多めに購入し、10日分を目安に保管。
水は2リットル×6本を箱買いし、6日分を保管。
トイレは凝固剤や簡易トイレなど、2週間分を保管。

これらのものを家の中で適材適所を見つけて収納しています。

食料品に関してはキッチンの収納庫に入れるのはもちろんのこと、たまにしか使わない缶詰や調味料のストックは廊下の収納庫に入れるなどして、あえて分散させています。

玄関収納庫 キッチン周りの収納庫
玄関収納庫(左)/ キッチン周りの収納庫(右)(クリックで写真拡大)

廊下の備蓄品収納
廊下の備蓄品収納(クリックで写真拡大)

 
 

水は重いので、玄関収納とベッド下の収納に分散。トイレはベッド下収納に普段使いでない備蓄用のトイレットペーパーや防臭袋とともにまとめて収納し、わかりやすくしています。

家の中の収納スペースが一杯で入れるところがないという人はまずは使っていないものを整理し、手放すかレンタルスペースに預けるなどして、備蓄のためのスペースを確保することが最優先事項になります。

我が家もごくごく普通のマンションで、戸建てに比べると圧倒的に収納スペースが少ないです。そのため、ベッドを買い替えるのを機にマット下を収納に使える跳ね上げ式のベッドを選び収納スペースを確保しました。これだけで押入れ半間ほどの収納と同じ容積が増えたことになります。

ベッド下の収納
ベッド下の収納(クリックで写真拡大)

 
 

他にも季節物のコートや寝具は保管サービス付きのクリーニングを利用し、スペースを空けるようにしています。
このように定期的に入れ替えして、使うような衣類や寝具は保管サービスの利用に向いていて、今は段ボールひと箱から空調設備の整った倉庫に預けられ、預けたものをスマートフォンでも管理できる手軽なサービスがあります。

(保管サービスの例:サマリーポケット(寺田倉庫)
 
 

備蓄品収納術の3つのポイント

我が家の事例をお伝えしてきましたが、
備蓄品や非常持ち出し袋などの収納のポイントは以下の3つです。

    1) 整理収納で備蓄スペースを確保
    2) どこに何を置くか明確に決める
    3) 備蓄品は分散して収納する

スペースがないという方はこの機会に命を守るために整理収納で家の中のものを見直してください。特に都心の場合、避難所に行っても今のようにウイルス感染の危険性がある中では今まで以上に入れる人数が制限され、都市部では受け入れが出来なくなることが目に見えています。収納スペースの中身の半分以上が不要品だったというのは整理収納のお片づけサービスに行くご家庭でよくあることです。

使っていないもののために、日常的に使う物が片付かない、非常時に備えた備蓄をするスペースがないというのは私からすると非常にもったいない話なのです。
他にもスペースはあっても詰め込むだけで、スペースをフルに活用できていないというケースもあります。その場合は入れるものに合わせて棚板を増やしたり、収納ケースを追加したりして出し入れしやすく整えていく必要があります。

廊下の食品庫(上段)
廊下食品庫の収納(クリックで写真拡大)

 
 

ご自分ひとりで物の整理をすることや最適な収納用品を選ぶことが難しい場合は、整理収納アドバイザーなど信頼できる片づけのプロの手を借りるのも良いでしょう。よく言われるのが「自分ひとりではこんなに早くは出来なかった」「こんなに変わるとは思わなかった」と驚かれます。

このコラムの著者(澁川真希さん)に直接アドバイスを求める

 
 

収納は適材適所で!リスクを分散することもおすすめします

整理が済んだら次に空いたスペースのどこに何を置くか明確に決める必要があります。
なぜなら空いたスペースに適当に備蓄品や防災用品をいれてしまうと、いざという時にどこに入れたか忘れてしまうことが多いからです。

普段から使いながら備蓄するような食材はキッチンの使いやすい場所に、非常食のように保管だけのものなら、キッチンから遠い場所ですぐに出し入れできる場所のように家の中の収納場所を分析して適材適所を決めていきます。

本来、収納の基本では同じ種類の物は一ヵ所に集中収納しましょうと言われています。ですが、地震の揺れで家具が壊れたり、ガラスが飛散したりしてその場所に立ち入れなくなる可能性もあるのでリスクを減らすために同じものでも分散収納をおすすめします。
我が家でも食料や水はもちろんのこと、携帯ラジオや懐中電灯なども3か所くらいに分けて収納しています。いつ、どんな状態の時に災害が起こるかわからないので、こうして最悪を想定して事前の備えをしています。

事前の備えとしての「備蓄」や「非常持ち出し袋」は火災に備える「消火器」のようなもので、いつでも、だれでも、すぐに使えるように、持ち出せるようにすることが大切なのです。
 
 

後悔しないための備蓄と収納

災害は待ってくれません。明日かもしれないし、100年後かもしれません。もしかしたら今日かもしれません。

被災した人は、戻れるならやっておけばよかったと思うこと、他人事と思わず自分事として1か所からでもはじめられることを願っています。
 
 


澁川真希(しぶかわ・まき)

 

整理収納アドバイザー・コンサルタント / 整理収納・家事代行サービスを事業とするCOMFORT STYLE 代表 / 一般社団法人 親・子の片づけ教育研究所 代表理事
福岡県生まれ。2012年、仙台から東京に転居。東日本大震災の被災経験をもとに、整理収納が防災に役立つことを伝え広める減災・防災片づけアドバイザーとして活動を行っている。2011年3月住んでいた宮城県仙台市で東日本大震災に遭う。震度6弱の激震、立て続けに起きる余震を体験。自宅は大規模半壊だったが、発災後は夫と子ども2人と共に自宅で被災生活を送る。その中で整理収納が減災に役立つことを、身をもって知る。また今まで伝えられていた防災の情報だけでは、不足を感じ、片づけのプロとして、生活者、女性目線での防災の大切さを伝えるために、すぐに実践できる防災スキルなど、命を守るための「減災整理セミナー」「食材備蓄セミナー」など開催。講演会や雑誌、テレビなど幅広く活動中。

【主な出演】雑誌:クロワッサン特別編集「防災BOOK」(マガジンハウス)、ハルメク(ハメルク)、婦人公論(中央公論新社)、くらしラク~る(PHP) / TV:ひるまえほっと(NHK総合)、スーパーJチャンネル(テレビ朝日)、みんなのニュース(フジテレビ)など多数。

【関連リンク】
・COMFORT STYLE Webページ:https://www.comfort-s.jp/
  セミナー開催情報https://www.reservestock.jp/page/event_calendar/15321

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